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第二章 発足、百合テロ同好会
百合のバッテリー
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「おおメイ。加勢は無用だ。今からオレが、コイツを倒す」
オレの魔力は、まだ十分残っている。
オレだって、メイの弟子だ。
強力な攻撃魔法も、放とうと思えば使用できる。
効果があるかどうか、試したことはない。
魔力は本人の攻撃力と、出力に比例する。
戦闘慣れしていないなどのマイナス要素があれば、いくら天才魔法使いといえど低火力の魔法しか撃てない。
ツンディーリアのような、ハマれば強い無意識強キャラもいるが。
「攻撃が苦手でも、あいつを焼き尽くすことができるはずだ。オレにだってな」
「いや。それはムリや」
意気込むオレのことを、メイは否定した。
「アンタでは倒せん。というか、これはアンタの力で倒したらアカンタイプやわ」
「なんだと? オレの魔力では、勝ち目がないというのか?」
「ちゃう、そうやないねん」
首を振って、メイは告げる。
「アンタは強い。おそらくあと一踏ん張りで倒せる。でも、アカンねん。倒しきられへん」
また、メイの攻撃でさえ魔物の完全な抹殺は不可能だ、とも。
「だったら、なんだと?」
質問をオレが投げかけると、メイはため息をつく。
視線の先には、ソフィたちが。
「まさか?」
オレの疑問を、メイが肯定する。
「せや。ソフィちゃんとツンちゃん、力を合わせて倒さへんかったら、また復活するで」
それだけ、憎しみが根深いと。ならば。
立ち上がった瞬間、オレのつま先が何かを蹴る。
コロコロと転がって、ダンボールの山に止まった。
これは、野球のボールではないか。
使い込まれていて、アチコチに繊維が飛び出ている。
百合と野球か。合わないわけではないな。
バッテリーは通称、キャッチャーを『女房役』とも言うし。
イメージが、膨らんだ。
あいつを倒す、絶好のイメージが。
「ソフィ! メイディア先生の授業を思い出すんだ! キミはあのとき、なんと言われていた?」
質問されて、ソフィが構えを解く。
「たしか、考えすぎだって」
ふてくされながら、ソフィは応えた。
「そうだ。見なくてもいい物まで観察しすぎなんだ。そのせいでムダが多い」
オレはソフィから、光る剣を取り上げる。
「ちょっと、なによ!」
「少しの間だけ、こいつを借りる! ソフィ、オレの持つ剣を一緒に掴んでくれ」
一瞬、ソフィはイヤな顔をした。
「大丈夫だ。力を注いでくれるだけでいい。お前の攻撃は強いが、当たらない可能性がある。オレが確実に、ヒットさせてやる!」
オレとソフィで、柄を持つ。
「自分のパワーを、ソフィの剣に注ぐイメージだ」
「こうね?」
手を通して、柄に魔力が流れ込むのが分かる。
しかし、まだ弱い。抵抗感があるようだ。
「うまく浸透していかない! あんたの手が邪魔なの!」
「我慢しろ。オレもコントロール中だ!」
ソフィと柄を握り合っている間、ツンディーリアは立ち往生している。
「わたくしは、どうすれば?」
「これを!」
ツンディーリアに、野球ボールを渡す。
「そいつに、ありったけの魔力を注ぎ込め! ただし、ちゃんと硬球に収まるように、圧縮するんだ!」
やってみせるが、ツンディーリアはすぐに力んでしまう。
「球を爆発させるな!」
「試していますが、保証はできません!」
「だろうな。じゃあ、こっちに来い! オレの手を取るんだ!」
「イヤです!」
即答かよ。
「オレとじゃなく、ソフィとの共同作業だと想像するんだ。キミとソフィで、ヤツを倒すことを考えろっ!」
ツンディーリアの顔つきが、朱に染まった。
ボン! と、柄がはじけ飛ぶような音を鳴らす。
ソフィ、キミもかよ!
「おいおい、加減しろ。はやる気持ちはわかるが。慎重に」
「ごめんなさいっ! でも、止まらないわぁ!」
一気に魔力が注ぎ込まれているのが、伝わってくる。
さっきまでの躊躇が、ウソのようだ。
「……ソフィと一緒に、あの怪物さんを。かしこまりましたわ。わたくし、やってみます!」
ツンディーリアも、ようやく緊張が解けたようである。
よし。準備は整った。後はイメージするのみ。
考えろ。
ボールにオレの保護魔法を取り入れる。
ツンディーリアの魔力を、オレの術で包む。
ソフィの剣は、形を変えて……。
ドクン、とオレの心臓が跳ねた。
オレまで、魂ごと持って行かれそうに。
これが、二人たちの本気か。
オレまで、その気にさせるとは。
少しアドバイスしただけで、ツンディーリアは有能になる。
さっきまでのおっかなびっくり状態からは考えられないほどのパワーが、白球に注入されていった。
これだ、この勢いこそまさしくツンディーリアの魔力である。
尊い! 尊き力が、ビンビンに伝わってくるぞ!
「ごお! こしゃくなぁ!」
ようやく、魔物が煙を取り払う。
「随分と手こずっていたではないか。その間に、こっちは反撃の準備が整ったぞ」
オレの手には、膨張した剣が握られていた。
特大の棍棒とも、先が太すぎるバットとも形容できた。
大木をそのまま削ったような形状である。
「待たせたな。名もなき魔物よ! 今こそ引導を渡してやるから、覚悟しろよ」
極太の棒へと姿を変えた剣を、オレは魔物に突きつける。
オレの魔力は、まだ十分残っている。
オレだって、メイの弟子だ。
強力な攻撃魔法も、放とうと思えば使用できる。
効果があるかどうか、試したことはない。
魔力は本人の攻撃力と、出力に比例する。
戦闘慣れしていないなどのマイナス要素があれば、いくら天才魔法使いといえど低火力の魔法しか撃てない。
ツンディーリアのような、ハマれば強い無意識強キャラもいるが。
「攻撃が苦手でも、あいつを焼き尽くすことができるはずだ。オレにだってな」
「いや。それはムリや」
意気込むオレのことを、メイは否定した。
「アンタでは倒せん。というか、これはアンタの力で倒したらアカンタイプやわ」
「なんだと? オレの魔力では、勝ち目がないというのか?」
「ちゃう、そうやないねん」
首を振って、メイは告げる。
「アンタは強い。おそらくあと一踏ん張りで倒せる。でも、アカンねん。倒しきられへん」
また、メイの攻撃でさえ魔物の完全な抹殺は不可能だ、とも。
「だったら、なんだと?」
質問をオレが投げかけると、メイはため息をつく。
視線の先には、ソフィたちが。
「まさか?」
オレの疑問を、メイが肯定する。
「せや。ソフィちゃんとツンちゃん、力を合わせて倒さへんかったら、また復活するで」
それだけ、憎しみが根深いと。ならば。
立ち上がった瞬間、オレのつま先が何かを蹴る。
コロコロと転がって、ダンボールの山に止まった。
これは、野球のボールではないか。
使い込まれていて、アチコチに繊維が飛び出ている。
百合と野球か。合わないわけではないな。
バッテリーは通称、キャッチャーを『女房役』とも言うし。
イメージが、膨らんだ。
あいつを倒す、絶好のイメージが。
「ソフィ! メイディア先生の授業を思い出すんだ! キミはあのとき、なんと言われていた?」
質問されて、ソフィが構えを解く。
「たしか、考えすぎだって」
ふてくされながら、ソフィは応えた。
「そうだ。見なくてもいい物まで観察しすぎなんだ。そのせいでムダが多い」
オレはソフィから、光る剣を取り上げる。
「ちょっと、なによ!」
「少しの間だけ、こいつを借りる! ソフィ、オレの持つ剣を一緒に掴んでくれ」
一瞬、ソフィはイヤな顔をした。
「大丈夫だ。力を注いでくれるだけでいい。お前の攻撃は強いが、当たらない可能性がある。オレが確実に、ヒットさせてやる!」
オレとソフィで、柄を持つ。
「自分のパワーを、ソフィの剣に注ぐイメージだ」
「こうね?」
手を通して、柄に魔力が流れ込むのが分かる。
しかし、まだ弱い。抵抗感があるようだ。
「うまく浸透していかない! あんたの手が邪魔なの!」
「我慢しろ。オレもコントロール中だ!」
ソフィと柄を握り合っている間、ツンディーリアは立ち往生している。
「わたくしは、どうすれば?」
「これを!」
ツンディーリアに、野球ボールを渡す。
「そいつに、ありったけの魔力を注ぎ込め! ただし、ちゃんと硬球に収まるように、圧縮するんだ!」
やってみせるが、ツンディーリアはすぐに力んでしまう。
「球を爆発させるな!」
「試していますが、保証はできません!」
「だろうな。じゃあ、こっちに来い! オレの手を取るんだ!」
「イヤです!」
即答かよ。
「オレとじゃなく、ソフィとの共同作業だと想像するんだ。キミとソフィで、ヤツを倒すことを考えろっ!」
ツンディーリアの顔つきが、朱に染まった。
ボン! と、柄がはじけ飛ぶような音を鳴らす。
ソフィ、キミもかよ!
「おいおい、加減しろ。はやる気持ちはわかるが。慎重に」
「ごめんなさいっ! でも、止まらないわぁ!」
一気に魔力が注ぎ込まれているのが、伝わってくる。
さっきまでの躊躇が、ウソのようだ。
「……ソフィと一緒に、あの怪物さんを。かしこまりましたわ。わたくし、やってみます!」
ツンディーリアも、ようやく緊張が解けたようである。
よし。準備は整った。後はイメージするのみ。
考えろ。
ボールにオレの保護魔法を取り入れる。
ツンディーリアの魔力を、オレの術で包む。
ソフィの剣は、形を変えて……。
ドクン、とオレの心臓が跳ねた。
オレまで、魂ごと持って行かれそうに。
これが、二人たちの本気か。
オレまで、その気にさせるとは。
少しアドバイスしただけで、ツンディーリアは有能になる。
さっきまでのおっかなびっくり状態からは考えられないほどのパワーが、白球に注入されていった。
これだ、この勢いこそまさしくツンディーリアの魔力である。
尊い! 尊き力が、ビンビンに伝わってくるぞ!
「ごお! こしゃくなぁ!」
ようやく、魔物が煙を取り払う。
「随分と手こずっていたではないか。その間に、こっちは反撃の準備が整ったぞ」
オレの手には、膨張した剣が握られていた。
特大の棍棒とも、先が太すぎるバットとも形容できた。
大木をそのまま削ったような形状である。
「待たせたな。名もなき魔物よ! 今こそ引導を渡してやるから、覚悟しろよ」
極太の棒へと姿を変えた剣を、オレは魔物に突きつける。
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