18 / 49
第二章 発足、百合テロ同好会
百合テロ部 活動開始!
しおりを挟む
残った物資はもう少しだったので、ソフィたちには掃除を頼んだ。
「最後の備品、運び終わったぞ」
作業を終えたオレは、部屋に戻った。
「お疲れさま」
雑巾で窓を拭いていたソフィが、手を止める。アイスカフェオレを淹れてくれた。
「ありがとう。おお、ようやく部室ぽくなったな」
カフェオレで身体の熱を冷ましながら、部室を一望する。
感無量だ。自分の城を持つというのは、こんな感じなのだろうか。
「片付けたのに、随分と狭いな。だが、これでもゼイタクか」
コーヒーセットを置くだけでも、十分に場所を取ってしまう。
「狭いくらいが丁度いいわ。空き教室だと、だだっ広くて気を使うし」
「この近い距離感が、なんともいえませんわ」
ソフィとツンディーリアが、窓枠に添えた手を取り合った。
他の部員から見えないように。
夕焼けに照らされて、実に尊い。
いかん。ついんずに感づかれてしまう。
咳払いをして、双子の注意をオレに向けさせる。
「どうした? カゼか?」
「いや。やけにホコリっぽいからな」
「そうか。掃除が行き届いてなかったのかもな。悪い悪い」
「オレも手伝おう」
雑巾を借りて、一緒に拭き作業を始めた。
「よし。今度こそ準備完了だな」
全員で拍手をする。
「改めて、余が部長のユリアンだ。よろしく頼む」
パチパチ、とささやかな拍手が送られた。
続いてソフィ、ツンディーリア、トーモスと妹のイモーティフの順に、自己紹介を終える。
「えっと、ウチがメイディアや。よろしゅう。部活動やけど、火を扱うときだけ立ち会うさかい。それ以外は好きにしてや。火はアカンからな! それだけ守ってな」
最後に、メイディアが念を押す。
「で、何をするんや?」
「表向きは、飯テロ同好会だからな」
とにかく、メイ改めメイディア先生が入ってくれたおかげで、百合テロ部が活動を始められる。
同好会でいいと思っていたが、部にまで昇格できるとは。「モグモグついんず」には感謝しかない。
また、思いのほか濃いメンツが揃った。
これなら、新規で入ってこようとする生徒もいないだろう。
事実、ツンディーリアの取り巻きは一人も入部していない。
「お菓子をお持ちしました。みなさんでどうぞ」
アイテムボックスから、ツンディーリアが焼き菓子を出す。
「ウワオ! いただきます!」
ツンディーリアが包みを開けると、早速ついんずが食いついた。
「これはウマイ!」
「サクサク!」
食べるのかしゃべるのか、どちらかにして欲しい。
「でも、失敗しまして。焼きすぎたのです」
「いや、これはこのくらいがいいわね。焦げてる方が香ばしくなって、おいしいわ」
うむ。ソフィの言うとおりだ。ツンディーリアは、望みが高すぎるのだ。
「せやな。ウチのクッキーとは味わいが違うけど、初々しくて好きやわ」
「先生も、お料理をなさるので!」
しまった。
彼女たちには、こいつがメイディルクスだと教えてないんだ。
うかつ!
「あ、いや。ウチかて乙女やしな? 浮いた話も多少はあってんよ」
正体がばれそうになったメイは、架空の恋バナでごまかす。
「当時の殿方のために、腕を振るっていたと。なるほど」
ソフィは、信じ切っているようだ。よかったな。
「是非、お教えください! どうすれば、素敵なカップケーキを作れるんでしょう?」
「えらい乙女チックなモンを、王子に食べさそうとしてるんやな?」
「おおお王子のハートを射止められる、お菓子ってどんなのでしょうか!?」
危うく、ツンディーリアの百合趣味がダダ漏れするところだった。
今日の部活は、お菓子の飯テロになりそうである。
女子たちは、メイディアを囲んでお料理の手ほどきを受けていた。料理なんて使用人がやるだろうに、まるで花嫁修業の光景である。だが、それがいい。
オレとトーモスは離れた位置で、その様子を眺める。実に至福のひとときだ。
「尊いな」
「ああ。女子がこんなにも集まっているだけで素晴らしい」
この部を立ち上げて、本当によかった。
ソフィらの関係もカモフラージュできているし、言うことナシだな!
しかし、何か忘れているような気がする。
辺りを見回して、抜かりがないか確認をした。
「お、そうだ。看板!」
倉庫の看板が、そのままではないか。
「急いで、百合テロ部の看板を作らねば!」
備品をまた漁ることになろうとは。
部室を出ようとするオレの肩を、トーモスが掴んだ。
「待てよ。ここは飯テロ部だぜ。百合テロなんて書いたら、それこそまた生徒会ににらまれるぞ」
「うむ。百合テロの看板は、オレの心の中に!」
オレは胸をドンと叩く。廊下へと出て、看板を取り外す。
「よし。これでここは飯テロ部だ!」
トーモスと二人で、拍手をした。
「さて、オレは倉庫の方へこれを取り付けてくる」
「一人で大丈夫か?」
「任せろ。さっきも一人で行ってきた」
「気をつけてな」
空き教室に向かい、急いで看板を外した。
「あとは、ここに倉庫の看板を……む?」
なぜだ。魔族の反応が! さっきまでなかったのに!
魔族の反応を示しているのは、なんと教室の看板を外した跡からではないか!
「最後の備品、運び終わったぞ」
作業を終えたオレは、部屋に戻った。
「お疲れさま」
雑巾で窓を拭いていたソフィが、手を止める。アイスカフェオレを淹れてくれた。
「ありがとう。おお、ようやく部室ぽくなったな」
カフェオレで身体の熱を冷ましながら、部室を一望する。
感無量だ。自分の城を持つというのは、こんな感じなのだろうか。
「片付けたのに、随分と狭いな。だが、これでもゼイタクか」
コーヒーセットを置くだけでも、十分に場所を取ってしまう。
「狭いくらいが丁度いいわ。空き教室だと、だだっ広くて気を使うし」
「この近い距離感が、なんともいえませんわ」
ソフィとツンディーリアが、窓枠に添えた手を取り合った。
他の部員から見えないように。
夕焼けに照らされて、実に尊い。
いかん。ついんずに感づかれてしまう。
咳払いをして、双子の注意をオレに向けさせる。
「どうした? カゼか?」
「いや。やけにホコリっぽいからな」
「そうか。掃除が行き届いてなかったのかもな。悪い悪い」
「オレも手伝おう」
雑巾を借りて、一緒に拭き作業を始めた。
「よし。今度こそ準備完了だな」
全員で拍手をする。
「改めて、余が部長のユリアンだ。よろしく頼む」
パチパチ、とささやかな拍手が送られた。
続いてソフィ、ツンディーリア、トーモスと妹のイモーティフの順に、自己紹介を終える。
「えっと、ウチがメイディアや。よろしゅう。部活動やけど、火を扱うときだけ立ち会うさかい。それ以外は好きにしてや。火はアカンからな! それだけ守ってな」
最後に、メイディアが念を押す。
「で、何をするんや?」
「表向きは、飯テロ同好会だからな」
とにかく、メイ改めメイディア先生が入ってくれたおかげで、百合テロ部が活動を始められる。
同好会でいいと思っていたが、部にまで昇格できるとは。「モグモグついんず」には感謝しかない。
また、思いのほか濃いメンツが揃った。
これなら、新規で入ってこようとする生徒もいないだろう。
事実、ツンディーリアの取り巻きは一人も入部していない。
「お菓子をお持ちしました。みなさんでどうぞ」
アイテムボックスから、ツンディーリアが焼き菓子を出す。
「ウワオ! いただきます!」
ツンディーリアが包みを開けると、早速ついんずが食いついた。
「これはウマイ!」
「サクサク!」
食べるのかしゃべるのか、どちらかにして欲しい。
「でも、失敗しまして。焼きすぎたのです」
「いや、これはこのくらいがいいわね。焦げてる方が香ばしくなって、おいしいわ」
うむ。ソフィの言うとおりだ。ツンディーリアは、望みが高すぎるのだ。
「せやな。ウチのクッキーとは味わいが違うけど、初々しくて好きやわ」
「先生も、お料理をなさるので!」
しまった。
彼女たちには、こいつがメイディルクスだと教えてないんだ。
うかつ!
「あ、いや。ウチかて乙女やしな? 浮いた話も多少はあってんよ」
正体がばれそうになったメイは、架空の恋バナでごまかす。
「当時の殿方のために、腕を振るっていたと。なるほど」
ソフィは、信じ切っているようだ。よかったな。
「是非、お教えください! どうすれば、素敵なカップケーキを作れるんでしょう?」
「えらい乙女チックなモンを、王子に食べさそうとしてるんやな?」
「おおお王子のハートを射止められる、お菓子ってどんなのでしょうか!?」
危うく、ツンディーリアの百合趣味がダダ漏れするところだった。
今日の部活は、お菓子の飯テロになりそうである。
女子たちは、メイディアを囲んでお料理の手ほどきを受けていた。料理なんて使用人がやるだろうに、まるで花嫁修業の光景である。だが、それがいい。
オレとトーモスは離れた位置で、その様子を眺める。実に至福のひとときだ。
「尊いな」
「ああ。女子がこんなにも集まっているだけで素晴らしい」
この部を立ち上げて、本当によかった。
ソフィらの関係もカモフラージュできているし、言うことナシだな!
しかし、何か忘れているような気がする。
辺りを見回して、抜かりがないか確認をした。
「お、そうだ。看板!」
倉庫の看板が、そのままではないか。
「急いで、百合テロ部の看板を作らねば!」
備品をまた漁ることになろうとは。
部室を出ようとするオレの肩を、トーモスが掴んだ。
「待てよ。ここは飯テロ部だぜ。百合テロなんて書いたら、それこそまた生徒会ににらまれるぞ」
「うむ。百合テロの看板は、オレの心の中に!」
オレは胸をドンと叩く。廊下へと出て、看板を取り外す。
「よし。これでここは飯テロ部だ!」
トーモスと二人で、拍手をした。
「さて、オレは倉庫の方へこれを取り付けてくる」
「一人で大丈夫か?」
「任せろ。さっきも一人で行ってきた」
「気をつけてな」
空き教室に向かい、急いで看板を外した。
「あとは、ここに倉庫の看板を……む?」
なぜだ。魔族の反応が! さっきまでなかったのに!
魔族の反応を示しているのは、なんと教室の看板を外した跡からではないか!
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる