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第二章 発足、百合テロ同好会
百合王子、メイドを説得
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「アカンアカン! なんでウチが、講師なんてせなあかんねん」
腰に手を当てながら、メイディルクスは文句を垂れる。
王城に帰った後、オレは事情を話した。
百合テロ同好会の顧問になってくれと。
こいつは、オレの家庭教師だった。
つまり、教員になる資格を有するのだ。
「教諭でもない部外者は顧問になれない」と、生徒会長からも反対された。
ならば、正式な先生として潜り込ませればいい。
我ながらナイスアイデアだな!
「だからメイよ、今から教師として学校で授業をしてもらいたい」
「イヤやめんどい」
秒で拒絶してくる。
「やってられるかいや。ただでさえ、国王やら王子やらの面倒で手を焼いてるいうのに。なんで、子守の人数増やさなあかんねんな?」
ここぞとばかりに、露骨なアピールしてきた。
城の仕事は激務らしい。
「そう言うなよ、メイ。お前が憤る気持ちも分かる。しかし、事情も察してもらいたい」
「どんなんよ、事情って?」
「校内に、魔物が出た」
話を聞いて、メイの表情が険しくなる。
「魔物に操られている生徒だけやのうて、魔物そのものが出た、と?」
「そうだ」
単なるマントとはいえ、ツンディーリアですら退けた。
並の強さではない。
「被害は?」
「人的被害はない」
だが、生徒の複数名が操られるという事態が発生した。
のんびり構えていられる状況ではない。
また、日増しに魔族は強くなっているとも告げておく。
「あんた一人で、見張りできる状態ではないんか?」
「生徒全員に目を行き渡らせるなど、オレにはムリだな。ソフィの警備システムほど、優秀ではないのでね」
「あれは、ようでけたシステムやったで」
ソフィ作の警備システムに、メイは感心している。
イラスト状の偵察ユニットは、歴戦の戦士すら舌を巻く出来だ。
一見すると、監視機能が付いているなんて思わない。ただの子洒落た天井画である。天使の天井画は不気味ながら神々しく、信仰心の厚い者には刺さるだろう。
誰しもが警戒心を解くはずだ。
その編み目すらかいくぐる魔族、か。
「ちょっと厄介やな」
「なるべく、穏便に追い払いたい。人が死んだりはしていないから、目的もあやふやなんだ」
学業に支障が出るから、騒ぎにはしたくない。
魔族にも感づかれて、逃げられる恐れもある。
「まあ、そんな事態なんやったら、ウチも監視には協力したるで。せやけど、問題は、もう一つの目的や。百合テロってなんなん?」
「重要ではないか」
オレからすれば、最優先の事項だ。
「いやいや、なんべん説明されてもわからんわ! 百合テロってなんやねん! 聞いたことないで!」
同好会の顧問など、魔族退治よりよほど楽なハズ。
なのに、メイは難色を示す。
「飯テロや食レポに紛れ、百合を世間に普及させるのだ。これまでにない極めて尊い部活だぞ!」
「モロにテロリストの発想やんけ!」
すぐさま、メイの鋭いツッコミが入った。
「そんなヤバい部活を立ち上げるためなんかに、ウチを巻き込むなや! この思想犯!」
どうしても、メイは首を縦に振らない。
「失礼致します」
ドアがノックされる。
「入れ。おお、大臣ではないか」
長い耳を持つエルフの大臣が、一礼をした。
「お話は、聞かせていただきました。お妃様の説得には、ワタクシも立ち会いましょう」
彼がいれば、心強い。とはいえ。
「よろしく頼む。しかし、城はいいのか?」
メイという最強の警備兵が外に出るのだ。手薄になるのでは?
「心配ご無用。城の警備は、こちらでなんとかいたします」
大臣のモノクルが、雄々しく光った。
「とはいえ大臣殿。あなたお一人で城の守りを固めるのは、酷なのでは? 魔族もいると言うし」
身を正し、メイはオレの従者に早変わりする。
「お気遣い感謝致します。王妃の妹君、メイディルクス殿」
メイが祖父の隠し子であるという秘密は、大臣も知っているらしい。
大臣の言うとおり、メイは母からすれば、年の離れた腹違いの妹だ。
ちなみに、この国は母親が先代国王の血を引き継いでいる。
国王は、婿養子なのだ。
「あなた憂慮するほどには及びませんよ。ワタクシだって、元は王を守る任についておったのです。思い出しますなぁ、過去に二度ほど大きな大戦があったのを」
戦闘経験に関しては、大臣も自信があるらしい。
見た目は、メイよりやや老け気味という風体なのに。
「それとメイディルクス殿、ワタクシの前で地元の話し方をなさっても結構です。王位継承権を放棄した身とはいえ、あなたがこの城になくてはならぬ存在。少しは、リラックスなされてもバチは当たらぬかと」
「……さいですか。そうさせてもらいまっさ。いつもの調子やと、肩こってたんですわ」
メイが、いつもの話し方に戻る。
「よろしいではありませんか、百合テロ同好会。ワタクシが手ほどきして差し上げたいほどでございます」
「ほな、アンタが学校に勤めるか? 代わったるで」
「いえいえ結構。若さにあてられてしまいます」
照れ気味に、大臣が遠慮した。
時々虚空を見上げる様子を見せるので、興味はあるようだが。
腰に手を当てながら、メイディルクスは文句を垂れる。
王城に帰った後、オレは事情を話した。
百合テロ同好会の顧問になってくれと。
こいつは、オレの家庭教師だった。
つまり、教員になる資格を有するのだ。
「教諭でもない部外者は顧問になれない」と、生徒会長からも反対された。
ならば、正式な先生として潜り込ませればいい。
我ながらナイスアイデアだな!
「だからメイよ、今から教師として学校で授業をしてもらいたい」
「イヤやめんどい」
秒で拒絶してくる。
「やってられるかいや。ただでさえ、国王やら王子やらの面倒で手を焼いてるいうのに。なんで、子守の人数増やさなあかんねんな?」
ここぞとばかりに、露骨なアピールしてきた。
城の仕事は激務らしい。
「そう言うなよ、メイ。お前が憤る気持ちも分かる。しかし、事情も察してもらいたい」
「どんなんよ、事情って?」
「校内に、魔物が出た」
話を聞いて、メイの表情が険しくなる。
「魔物に操られている生徒だけやのうて、魔物そのものが出た、と?」
「そうだ」
単なるマントとはいえ、ツンディーリアですら退けた。
並の強さではない。
「被害は?」
「人的被害はない」
だが、生徒の複数名が操られるという事態が発生した。
のんびり構えていられる状況ではない。
また、日増しに魔族は強くなっているとも告げておく。
「あんた一人で、見張りできる状態ではないんか?」
「生徒全員に目を行き渡らせるなど、オレにはムリだな。ソフィの警備システムほど、優秀ではないのでね」
「あれは、ようでけたシステムやったで」
ソフィ作の警備システムに、メイは感心している。
イラスト状の偵察ユニットは、歴戦の戦士すら舌を巻く出来だ。
一見すると、監視機能が付いているなんて思わない。ただの子洒落た天井画である。天使の天井画は不気味ながら神々しく、信仰心の厚い者には刺さるだろう。
誰しもが警戒心を解くはずだ。
その編み目すらかいくぐる魔族、か。
「ちょっと厄介やな」
「なるべく、穏便に追い払いたい。人が死んだりはしていないから、目的もあやふやなんだ」
学業に支障が出るから、騒ぎにはしたくない。
魔族にも感づかれて、逃げられる恐れもある。
「まあ、そんな事態なんやったら、ウチも監視には協力したるで。せやけど、問題は、もう一つの目的や。百合テロってなんなん?」
「重要ではないか」
オレからすれば、最優先の事項だ。
「いやいや、なんべん説明されてもわからんわ! 百合テロってなんやねん! 聞いたことないで!」
同好会の顧問など、魔族退治よりよほど楽なハズ。
なのに、メイは難色を示す。
「飯テロや食レポに紛れ、百合を世間に普及させるのだ。これまでにない極めて尊い部活だぞ!」
「モロにテロリストの発想やんけ!」
すぐさま、メイの鋭いツッコミが入った。
「そんなヤバい部活を立ち上げるためなんかに、ウチを巻き込むなや! この思想犯!」
どうしても、メイは首を縦に振らない。
「失礼致します」
ドアがノックされる。
「入れ。おお、大臣ではないか」
長い耳を持つエルフの大臣が、一礼をした。
「お話は、聞かせていただきました。お妃様の説得には、ワタクシも立ち会いましょう」
彼がいれば、心強い。とはいえ。
「よろしく頼む。しかし、城はいいのか?」
メイという最強の警備兵が外に出るのだ。手薄になるのでは?
「心配ご無用。城の警備は、こちらでなんとかいたします」
大臣のモノクルが、雄々しく光った。
「とはいえ大臣殿。あなたお一人で城の守りを固めるのは、酷なのでは? 魔族もいると言うし」
身を正し、メイはオレの従者に早変わりする。
「お気遣い感謝致します。王妃の妹君、メイディルクス殿」
メイが祖父の隠し子であるという秘密は、大臣も知っているらしい。
大臣の言うとおり、メイは母からすれば、年の離れた腹違いの妹だ。
ちなみに、この国は母親が先代国王の血を引き継いでいる。
国王は、婿養子なのだ。
「あなた憂慮するほどには及びませんよ。ワタクシだって、元は王を守る任についておったのです。思い出しますなぁ、過去に二度ほど大きな大戦があったのを」
戦闘経験に関しては、大臣も自信があるらしい。
見た目は、メイよりやや老け気味という風体なのに。
「それとメイディルクス殿、ワタクシの前で地元の話し方をなさっても結構です。王位継承権を放棄した身とはいえ、あなたがこの城になくてはならぬ存在。少しは、リラックスなされてもバチは当たらぬかと」
「……さいですか。そうさせてもらいまっさ。いつもの調子やと、肩こってたんですわ」
メイが、いつもの話し方に戻る。
「よろしいではありませんか、百合テロ同好会。ワタクシが手ほどきして差し上げたいほどでございます」
「ほな、アンタが学校に勤めるか? 代わったるで」
「いえいえ結構。若さにあてられてしまいます」
照れ気味に、大臣が遠慮した。
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