百合王子! ~嫁候補の美少女二人が裏で付き合っていたが、オレは一向に構わん!~

椎名 富比路

文字の大きさ
上 下
14 / 49
第二章 発足、百合テロ同好会

百合王子、メイドを説得

しおりを挟む
「アカンアカン! なんでウチが、講師なんてせなあかんねん」
 腰に手を当てながら、メイディルクスは文句を垂れる。

 王城に帰った後、オレは事情を話した。
 百合テロ同好会の顧問になってくれと。

 こいつは、オレの家庭教師だった。
 つまり、教員になる資格を有するのだ。

「教諭でもない部外者は顧問になれない」と、生徒会長からも反対された。

 ならば、正式な先生として潜り込ませればいい。
 我ながらナイスアイデアだな!

「だからメイよ、今から教師として学校で授業をしてもらいたい」

「イヤやめんどい」
 秒で拒絶してくる。

「やってられるかいや。ただでさえ、国王やら王子やらの面倒で手を焼いてるいうのに。なんで、子守の人数増やさなあかんねんな?」
 ここぞとばかりに、露骨なアピールしてきた。
 城の仕事は激務らしい。

「そう言うなよ、メイ。お前が憤る気持ちも分かる。しかし、事情も察してもらいたい」
「どんなんよ、事情って?」

「校内に、魔物が出た」

 話を聞いて、メイの表情が険しくなる。

「魔物に操られている生徒だけやのうて、魔物そのものが出た、と?」
「そうだ」

 単なるマントとはいえ、ツンディーリアですら退けた。
 並の強さではない。

「被害は?」
「人的被害はない」

 だが、生徒の複数名が操られるという事態が発生した。
 のんびり構えていられる状況ではない。
 また、日増しに魔族は強くなっているとも告げておく。

「あんた一人で、見張りできる状態ではないんか?」
「生徒全員に目を行き渡らせるなど、オレにはムリだな。ソフィの警備システムほど、優秀ではないのでね」
「あれは、ようでけたシステムやったで」

 ソフィ作の警備システムに、メイは感心している。

 イラスト状の偵察ユニットは、歴戦の戦士すら舌を巻く出来だ。
 一見すると、監視機能が付いているなんて思わない。ただの子洒落た天井画である。天使の天井画は不気味ながら神々しく、信仰心の厚い者には刺さるだろう。
 誰しもが警戒心を解くはずだ。

 その編み目すらかいくぐる魔族、か。

「ちょっと厄介やな」

「なるべく、穏便に追い払いたい。人が死んだりはしていないから、目的もあやふやなんだ」

 学業に支障が出るから、騒ぎにはしたくない。
 魔族にも感づかれて、逃げられる恐れもある。

「まあ、そんな事態なんやったら、ウチも監視には協力したるで。せやけど、問題は、もう一つの目的や。百合テロってなんなん?」

「重要ではないか」

 オレからすれば、最優先の事項だ。

「いやいや、なんべん説明されてもわからんわ! 百合テロってなんやねん! 聞いたことないで!」

 同好会の顧問など、魔族退治よりよほど楽なハズ。
 なのに、メイは難色を示す。

「飯テロや食レポに紛れ、百合を世間に普及させるのだ。これまでにない極めて尊い部活だぞ!」

「モロにテロリストの発想やんけ!」
 すぐさま、メイの鋭いツッコミが入った。

「そんなヤバい部活を立ち上げるためなんかに、ウチを巻き込むなや! この思想犯!」
 どうしても、メイは首を縦に振らない。

「失礼致します」

 ドアがノックされる。

「入れ。おお、大臣ではないか」

 長い耳を持つエルフの大臣が、一礼をした。
「お話は、聞かせていただきました。お妃様の説得には、ワタクシも立ち会いましょう」

 彼がいれば、心強い。とはいえ。

「よろしく頼む。しかし、城はいいのか?」

 メイという最強の警備兵が外に出るのだ。手薄になるのでは?

「心配ご無用。城の警備は、こちらでなんとかいたします」

 大臣のモノクルが、雄々しく光った。 

「とはいえ大臣殿。あなたお一人で城の守りを固めるのは、酷なのでは? 魔族もいると言うし」
 身を正し、メイはオレの従者に早変わりする。

「お気遣い感謝致します。王妃の妹君、メイディルクス殿」

 メイが祖父の隠し子であるという秘密は、大臣も知っているらしい。
 大臣の言うとおり、メイは母からすれば、年の離れた腹違いの妹だ。

 ちなみに、この国は母親が先代国王の血を引き継いでいる。
 国王は、婿養子なのだ。

「あなた憂慮するほどには及びませんよ。ワタクシだって、元は王を守る任についておったのです。思い出しますなぁ、過去に二度ほど大きな大戦があったのを」

 戦闘経験に関しては、大臣も自信があるらしい。
 見た目は、メイよりやや老け気味という風体なのに。

「それとメイディルクス殿、ワタクシの前で地元の話し方をなさっても結構です。王位継承権を放棄した身とはいえ、あなたがこの城になくてはならぬ存在。少しは、リラックスなされてもバチは当たらぬかと」

「……さいですか。そうさせてもらいまっさ。いつもの調子やと、肩こってたんですわ」
 メイが、いつもの話し方に戻る。

「よろしいではありませんか、百合テロ同好会。ワタクシが手ほどきして差し上げたいほどでございます」

「ほな、アンタが学校に勤めるか? 代わったるで」

「いえいえ結構。若さにあてられてしまいます」

 照れ気味に、大臣が遠慮した。
 時々虚空を見上げる様子を見せるので、興味はあるようだが。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...