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第二章 発足、百合テロ同好会
魔族を百合で洗浄する!
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「ば、バカな。放せ! お前たちのターゲットはオレサマじゃねえ! あっちだ!」
女生徒たちは、一切聞く耳を持たない。
校舎の外にある手洗い場まで、マントを引きずっていく。
「聞こえないさ。オレの指示しか聞かん」
「まさか! こいつ、オレサマの術式を上書きしやがった!」
今ごろ、気づいたのか。
「オレが術式で女生徒から逃れられた時点で、気づくべきだったな」
仕上げに、マントの持ち主だった取り巻きのリーダー格が、洗面器を持ってきた。洗い場の蛇口をひねって、水を溜める。
「こいつらまさか!」
「お前を洗って、浄化する」
オレは、百合の香りがする石けんを生成した。生徒たちに与える。
「百合に挟まれて死ぬとは、こういうことだ。【奥義 百合洗濯!】
マントは女生徒の白い手によって、揉み洗いをしてもらう。
これはこれで、うらやましい。
「なぜだ。どうしてオレサマがこんな目に!」
「何を言う? 気持ちよかろう? それはオレが作った特殊な石けんだ。魔獣の肉や皮を浄化する作用がある」
さらに、乙女の細い手によって洗ってもらうのだ。
これが心地よいはずがない!
「くっそお、痛え! 痛えっての!」
「痛いのは最初だけだ。いつだって、異文化を受け入れいるのは痛みを伴う」
揉み手洗いが、より激しさを増す。
泡立つ度に、癒やしを呼ぶ百合の香りが広がっていった。
「悔しい。痛えっ! 痛えのに、てえてえ! てえてえ!」
最初こそ痛がっていたマントも、ようやく素直になってきたようである。
「いてえてええええええええええっ!」
空から光の柱が降り注ぎ、マントは浄化されていった。マントに描かれていた、竜を象った紋章が消えていく。
「は、わたしは何を?」
マントを洗う手を止めて、女生徒たちが目を覚ます。
「みなさん、おケガはありませんか?」
ツンディーリアが尋ねると、取り巻きたちは彼女を囲んだ。
「ごめんなさい。わたし、ツンディーリア様の心が離れていくのが怖くて」
不安から、魔族の甘言に乗ってしまったという。
「魔族の正体は見ましたか。とくに、ブルルンヒルデというらしき者は?」
うつむきながら、女生徒は首を振る。
「気がついたら、路地に誘われていました。あのマントが、落ちてあったのです」
「そうですか」
「何も有益な情報を出せず、申し訳ございません」
「あなた方が無事なら、なによりです」
女生徒はツンディーリアに一礼をして、オレにも頭を下げた。
「ユリアン王子、わたしたちはあなたを見くびっていました。お嬢様をわたしたちから取り上げる、色欲魔だと勝手に決めつけておりました」
「そう思われても仕方ないな」
今回の一件は、半分くらいオレの責任だろう。
オレの間違った行動が、彼女たちを惑わせた。
「貴君らが心を痛める必要はない。以後、余も気をつけよう」
「もったいなきお言葉!」
「今日はもう遅い。気をつけて帰るがよい」
オレがみんなを解放すると、ツンディーリアがこちらに視線を投げかけてくる。
「わかったよ。ツンディーリア、ついていってやりな」
「はい。では失礼致しますわ。王子」
ツンディーリアたちは、談笑をしながら校門を出ていった。
「そういうところよ、王子」
腕を組みながら、ソフィがそっぽを向く。
「これで、他の生徒からのあんたの好感度が上がるのよ。この優等生」
「なにが優等生か? 聖ソフィから言われても、イヤミにしか聞こえんぞ」
「はいはい、そうですか」
ソフィから「ところで」と、真剣な顔を向けられた。
「これで、部室探しは振り出しに戻ったわよ。どうするの?」
「そうだぜ。生徒会も、友好的ではないし」
難題は、まだまだ多い。
「地道にやるさ、こうなったらな。とにかく、このマントの出所を探さねば。メイディルクス!」
「はっここに」
いったい、いつもどこにいるのか?
呼べばメイは必ずオレの元に現れる。
「このマントの所在を調べよ」
「ただちに」
メイが、オレの前から消えた。
入れ替わりで、生徒会長がやってくる。
「生徒や教員の避難は、もういいですね?」
「ああ。すべて片付いた」
もう、被害は出ないはずだ。
「あなたを見くびっていました。まさか、魔族を倒してしまうとは」
状況を見て、生徒会長が胸をなで下ろす。
「魔族と言っても切れ端だな。本体は別にいるようだ」
「でも、やはり王子には敵いません。ありがとうございました」
生徒会長に頭を下げさせてしまった。調子狂うなぁ。
しかし、これはチャンスだ!
「礼には及ばん。それより、この騒動を収めたのだから」
「部室をよこせ、ですか? それは話が別です」
ムリかー。やはり顧問がいなくては、話は進まないらしい。
待てよ? そうだ、思い出した。
「顧問が必要なんだよな?」
「ええ。何度も申しているとおり」
「一人、心当たりがある」
「本当ですか?」
生徒会長が、手をパンと叩く。
「ああ。掛け合ってみるよ」
「では、後日その方を連れてきてください」
「いや、もう連れてきているんだ」
驚いた顔を、生徒会長が見せた。
「メイディルクス、ちょっといいか?」
「はい。なんなりと」
オレは再び、メイを呼ぶ。
「お前、教員免許持っていたよな?」
女生徒たちは、一切聞く耳を持たない。
校舎の外にある手洗い場まで、マントを引きずっていく。
「聞こえないさ。オレの指示しか聞かん」
「まさか! こいつ、オレサマの術式を上書きしやがった!」
今ごろ、気づいたのか。
「オレが術式で女生徒から逃れられた時点で、気づくべきだったな」
仕上げに、マントの持ち主だった取り巻きのリーダー格が、洗面器を持ってきた。洗い場の蛇口をひねって、水を溜める。
「こいつらまさか!」
「お前を洗って、浄化する」
オレは、百合の香りがする石けんを生成した。生徒たちに与える。
「百合に挟まれて死ぬとは、こういうことだ。【奥義 百合洗濯!】
マントは女生徒の白い手によって、揉み洗いをしてもらう。
これはこれで、うらやましい。
「なぜだ。どうしてオレサマがこんな目に!」
「何を言う? 気持ちよかろう? それはオレが作った特殊な石けんだ。魔獣の肉や皮を浄化する作用がある」
さらに、乙女の細い手によって洗ってもらうのだ。
これが心地よいはずがない!
「くっそお、痛え! 痛えっての!」
「痛いのは最初だけだ。いつだって、異文化を受け入れいるのは痛みを伴う」
揉み手洗いが、より激しさを増す。
泡立つ度に、癒やしを呼ぶ百合の香りが広がっていった。
「悔しい。痛えっ! 痛えのに、てえてえ! てえてえ!」
最初こそ痛がっていたマントも、ようやく素直になってきたようである。
「いてえてええええええええええっ!」
空から光の柱が降り注ぎ、マントは浄化されていった。マントに描かれていた、竜を象った紋章が消えていく。
「は、わたしは何を?」
マントを洗う手を止めて、女生徒たちが目を覚ます。
「みなさん、おケガはありませんか?」
ツンディーリアが尋ねると、取り巻きたちは彼女を囲んだ。
「ごめんなさい。わたし、ツンディーリア様の心が離れていくのが怖くて」
不安から、魔族の甘言に乗ってしまったという。
「魔族の正体は見ましたか。とくに、ブルルンヒルデというらしき者は?」
うつむきながら、女生徒は首を振る。
「気がついたら、路地に誘われていました。あのマントが、落ちてあったのです」
「そうですか」
「何も有益な情報を出せず、申し訳ございません」
「あなた方が無事なら、なによりです」
女生徒はツンディーリアに一礼をして、オレにも頭を下げた。
「ユリアン王子、わたしたちはあなたを見くびっていました。お嬢様をわたしたちから取り上げる、色欲魔だと勝手に決めつけておりました」
「そう思われても仕方ないな」
今回の一件は、半分くらいオレの責任だろう。
オレの間違った行動が、彼女たちを惑わせた。
「貴君らが心を痛める必要はない。以後、余も気をつけよう」
「もったいなきお言葉!」
「今日はもう遅い。気をつけて帰るがよい」
オレがみんなを解放すると、ツンディーリアがこちらに視線を投げかけてくる。
「わかったよ。ツンディーリア、ついていってやりな」
「はい。では失礼致しますわ。王子」
ツンディーリアたちは、談笑をしながら校門を出ていった。
「そういうところよ、王子」
腕を組みながら、ソフィがそっぽを向く。
「これで、他の生徒からのあんたの好感度が上がるのよ。この優等生」
「なにが優等生か? 聖ソフィから言われても、イヤミにしか聞こえんぞ」
「はいはい、そうですか」
ソフィから「ところで」と、真剣な顔を向けられた。
「これで、部室探しは振り出しに戻ったわよ。どうするの?」
「そうだぜ。生徒会も、友好的ではないし」
難題は、まだまだ多い。
「地道にやるさ、こうなったらな。とにかく、このマントの出所を探さねば。メイディルクス!」
「はっここに」
いったい、いつもどこにいるのか?
呼べばメイは必ずオレの元に現れる。
「このマントの所在を調べよ」
「ただちに」
メイが、オレの前から消えた。
入れ替わりで、生徒会長がやってくる。
「生徒や教員の避難は、もういいですね?」
「ああ。すべて片付いた」
もう、被害は出ないはずだ。
「あなたを見くびっていました。まさか、魔族を倒してしまうとは」
状況を見て、生徒会長が胸をなで下ろす。
「魔族と言っても切れ端だな。本体は別にいるようだ」
「でも、やはり王子には敵いません。ありがとうございました」
生徒会長に頭を下げさせてしまった。調子狂うなぁ。
しかし、これはチャンスだ!
「礼には及ばん。それより、この騒動を収めたのだから」
「部室をよこせ、ですか? それは話が別です」
ムリかー。やはり顧問がいなくては、話は進まないらしい。
待てよ? そうだ、思い出した。
「顧問が必要なんだよな?」
「ええ。何度も申しているとおり」
「一人、心当たりがある」
「本当ですか?」
生徒会長が、手をパンと叩く。
「ああ。掛け合ってみるよ」
「では、後日その方を連れてきてください」
「いや、もう連れてきているんだ」
驚いた顔を、生徒会長が見せた。
「メイディルクス、ちょっといいか?」
「はい。なんなりと」
オレは再び、メイを呼ぶ。
「お前、教員免許持っていたよな?」
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