最強のVRMMOプレイヤーは、ウチの飼い猫でした ~ボクだけペットの言葉がわかる~

椎名 富比路

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第五章 最大のピンチ! 飼い主を救うニャー

第45話 ヴァンパイアの本体

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 あのオオカミが、ヴァンパイアの本体だったとは。

 いや、ヴァンパイアもボスなんだろうけど、リーダーはペットのほうみたい。

 動物が主導権を握るなんて、まるでペットと飼い主の関係に見える。

 魔物の世界でも、同じなのかな。

「ビビ、全力で行くよ!」

 ボクの呼びかけに、ビビも『ニャー』と応えた。

 ビビのスピードに、相手がついてきている。というか、ボスのほうが早いかも?
【韋駄天の証】という、素早さが上がる称号を、ビビは持っている。
 それでも、相手のほうが早いなんて。

 これは、法則性を覚えて対処する系のボスなのだろうか。なにか、パターンを崩して戦う必要があるのかもしれない?
 
「【ソニックカバー】!」

 ボクは瞬間的に移動して、オオカミの攻撃を受け止める。

 相手の攻撃が重い! かすっただけなのに、突き飛ばされそうになった。

「ボスの攻撃が、雷属性だ!」

 ダイヤアーマーを着ていなかったら、対処できなかっただろう。ボクが着ているダイヤアーマーには、雷ダメージによるマヒ状態を防ぐ効果がある。よって、至近距離からでも防御・攻撃ができるのだ。

 とはいえ、ボクみたいにノロノロな攻撃は、相手に当たらない。

「ケント!」

 ベルさんとナインくんが、加勢に入った。

「あたしたちは、なにをすればいいかしら?」

「とにかく、相手の動きを制限できますか? 相手も雷魔法の使い手で、ビビのスピードでも追いつくのがやっとなんです」

「やってみるわ!」

「ベルさん、これを!」

 ボクはファンナおばさんからもらった【アタックポーション】を、ベルさんに渡す。

「わかったわ。ナイン、来て!」
 
 ベルさんはポーションを、ナインくんに飲ませる。

 同じ犬型なら、あのスピードにも適応できるか。

「ナイン、サポートするわ【八艘飛びはっそうとび】!」

 ナインくんが高速移動から、跳躍した。落下による蹴りを、何度もボスに浴びせる。

 すごい。これがナインくんの本気か。アタックポーションの効果によって、ボスもみるみる体力バーが減っていく。

 だが、半分を切ったところで全体攻撃が加わった。

 すかさず、ナインくんが飛び退く。

「ストップよ、ナイン! 相手の攻撃パターンが変わったわ!」

 とはいえ、相手は全体攻撃の後に、硬直するようだ。

 そのスキを逃す、ビビではない。ビビが側面から、【ピリオド・スラッシュ】を浴びせる。アンデッドに大ダメージを与える、ビビの必殺技だ。

「ビビちゃん、相手の弱点は、目よ!」

 ベルさんが【狙撃手の極意書】というモノクルをかけて、ボスの弱点を探った。

「でも、あのオオカミは、アンデッドじゃありません!」

「大丈夫よ、ナインが」
 
 ナインくんが、ビビに【霊感スコープ】を投げ渡す。アンデッドじゃない相手でも、アンデッド特攻のダメージを与えるアイテムだ。【ホーンテッドパレス】攻略の報酬である。
 
 ビビが、雷の槍のような姿に変わった。目にも止まらない速度で、オオカミの赤い目を貫く。

 目を潰されて、オオカミがのたうち回る。そのまま、ドサッと倒れた。

『ぐおおおお!』

 ペットを失い、ヴァンパイアが苦しがる。身体から煙を出して、段々と干からびていった。やがて、灰になって消滅する。

 どうやら、クリアしたみたいだ。
 
「わああ。やったね、ビビ!」

 ボクは、ビビを抱きしめる。

 よく見ると、ビビが手に日記を持っていた。ボスの背景がわかる、アイテムである。

 どれどれ。

 どうもこの手記を書いたのは、ヴァンパイアのようだ。
 オオカミは、貴族の家で飼われていた。
 が、飼い主が死んでしまう。
 その死因を、オオカミは餓死だと思ったらしい。エサとして、貴族の死体に人間の血を飲ませていたという。
 貴族は、ヴァンパイアとなって復活した。ペットのオオカミに、自分と命を共有する魔法を施し、共に永遠の時を過ごそうとしていたようである。

「飼い主の方が、先に死んでしまったのね」

「吾輩も、人ごとではないのである」

 高齢者であるイチさんにとっては、他人事ではないよね。

 ボクだって、カゼで寝込んでいたときは、生きた心地がしなかった。一瞬、ビビより先に死んでしまうのでは、と思ったくらいである。

「さあ、帰りましょう」


 ボクは、ギルドへと戻ってきた。

「すごいな。こんな短時間で攻略したのは、キミたちくらいだよ」

 ギルドマスターのヴォルフさんが、応接室でボクたちを歓迎してくれる。

「いえ。楽しいゲームです」

「ああ。ボスを倒さなくても楽しめるようには作ってあるが、せっかく実装したエリアをたくさん回ってくれるのは、ありがたいよ」

 ヴォルフさんは、笑顔を見せた。

 報酬は、【ミスリル鉱石】である。貴族がかき集めていた、魔法の金属らしい。装備の強化にも使うもよし、そのまま装備品に加工してもよし。
 
「ありがとうございます、ヴォルフさん」

「いやなに」

 みんなが帰った後、ボクとビビだけが応接室に残された。

「それよりケント、ビビと話をさせてくれないか?」

「ボクではなく、ビビとですか?」

「お前さんとビビとだ。ビビが会話可能なのは、我々も把握している」
 
(第五章 おしまい)
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