最強のVRMMOプレイヤーは、ウチの飼い猫でした ~ボクだけペットの言葉がわかる~

椎名 富比路

文字の大きさ
上 下
45 / 49
第五章 最大のピンチ! 飼い主を救うニャー

第45話 ヴァンパイアの本体

しおりを挟む
 あのオオカミが、ヴァンパイアの本体だったとは。

 いや、ヴァンパイアもボスなんだろうけど、リーダーはペットのほうみたい。

 動物が主導権を握るなんて、まるでペットと飼い主の関係に見える。

 魔物の世界でも、同じなのかな。

「ビビ、全力で行くよ!」

 ボクの呼びかけに、ビビも『ニャー』と応えた。

 ビビのスピードに、相手がついてきている。というか、ボスのほうが早いかも?
【韋駄天の証】という、素早さが上がる称号を、ビビは持っている。
 それでも、相手のほうが早いなんて。

 これは、法則性を覚えて対処する系のボスなのだろうか。なにか、パターンを崩して戦う必要があるのかもしれない?
 
「【ソニックカバー】!」

 ボクは瞬間的に移動して、オオカミの攻撃を受け止める。

 相手の攻撃が重い! かすっただけなのに、突き飛ばされそうになった。

「ボスの攻撃が、雷属性だ!」

 ダイヤアーマーを着ていなかったら、対処できなかっただろう。ボクが着ているダイヤアーマーには、雷ダメージによるマヒ状態を防ぐ効果がある。よって、至近距離からでも防御・攻撃ができるのだ。

 とはいえ、ボクみたいにノロノロな攻撃は、相手に当たらない。

「ケント!」

 ベルさんとナインくんが、加勢に入った。

「あたしたちは、なにをすればいいかしら?」

「とにかく、相手の動きを制限できますか? 相手も雷魔法の使い手で、ビビのスピードでも追いつくのがやっとなんです」

「やってみるわ!」

「ベルさん、これを!」

 ボクはファンナおばさんからもらった【アタックポーション】を、ベルさんに渡す。

「わかったわ。ナイン、来て!」
 
 ベルさんはポーションを、ナインくんに飲ませる。

 同じ犬型なら、あのスピードにも適応できるか。

「ナイン、サポートするわ【八艘飛びはっそうとび】!」

 ナインくんが高速移動から、跳躍した。落下による蹴りを、何度もボスに浴びせる。

 すごい。これがナインくんの本気か。アタックポーションの効果によって、ボスもみるみる体力バーが減っていく。

 だが、半分を切ったところで全体攻撃が加わった。

 すかさず、ナインくんが飛び退く。

「ストップよ、ナイン! 相手の攻撃パターンが変わったわ!」

 とはいえ、相手は全体攻撃の後に、硬直するようだ。

 そのスキを逃す、ビビではない。ビビが側面から、【ピリオド・スラッシュ】を浴びせる。アンデッドに大ダメージを与える、ビビの必殺技だ。

「ビビちゃん、相手の弱点は、目よ!」

 ベルさんが【狙撃手の極意書】というモノクルをかけて、ボスの弱点を探った。

「でも、あのオオカミは、アンデッドじゃありません!」

「大丈夫よ、ナインが」
 
 ナインくんが、ビビに【霊感スコープ】を投げ渡す。アンデッドじゃない相手でも、アンデッド特攻のダメージを与えるアイテムだ。【ホーンテッドパレス】攻略の報酬である。
 
 ビビが、雷の槍のような姿に変わった。目にも止まらない速度で、オオカミの赤い目を貫く。

 目を潰されて、オオカミがのたうち回る。そのまま、ドサッと倒れた。

『ぐおおおお!』

 ペットを失い、ヴァンパイアが苦しがる。身体から煙を出して、段々と干からびていった。やがて、灰になって消滅する。

 どうやら、クリアしたみたいだ。
 
「わああ。やったね、ビビ!」

 ボクは、ビビを抱きしめる。

 よく見ると、ビビが手に日記を持っていた。ボスの背景がわかる、アイテムである。

 どれどれ。

 どうもこの手記を書いたのは、ヴァンパイアのようだ。
 オオカミは、貴族の家で飼われていた。
 が、飼い主が死んでしまう。
 その死因を、オオカミは餓死だと思ったらしい。エサとして、貴族の死体に人間の血を飲ませていたという。
 貴族は、ヴァンパイアとなって復活した。ペットのオオカミに、自分と命を共有する魔法を施し、共に永遠の時を過ごそうとしていたようである。

「飼い主の方が、先に死んでしまったのね」

「吾輩も、人ごとではないのである」

 高齢者であるイチさんにとっては、他人事ではないよね。

 ボクだって、カゼで寝込んでいたときは、生きた心地がしなかった。一瞬、ビビより先に死んでしまうのでは、と思ったくらいである。

「さあ、帰りましょう」


 ボクは、ギルドへと戻ってきた。

「すごいな。こんな短時間で攻略したのは、キミたちくらいだよ」

 ギルドマスターのヴォルフさんが、応接室でボクたちを歓迎してくれる。

「いえ。楽しいゲームです」

「ああ。ボスを倒さなくても楽しめるようには作ってあるが、せっかく実装したエリアをたくさん回ってくれるのは、ありがたいよ」

 ヴォルフさんは、笑顔を見せた。

 報酬は、【ミスリル鉱石】である。貴族がかき集めていた、魔法の金属らしい。装備の強化にも使うもよし、そのまま装備品に加工してもよし。
 
「ありがとうございます、ヴォルフさん」

「いやなに」

 みんなが帰った後、ボクとビビだけが応接室に残された。

「それよりケント、ビビと話をさせてくれないか?」

「ボクではなく、ビビとですか?」

「お前さんとビビとだ。ビビが会話可能なのは、我々も把握している」
 
(第五章 おしまい)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

処理中です...