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第四章 オフ会のお誘い
第30話 古のネット民
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なんとか誤解を解き、ボクたちは改めて自己紹介を。
「よく来てくださった。田益 健人氏に、竹中 |トワ氏。吾輩の名は沢木という」
沢木さんが、ボクたちにあいさつをした。
きのこヘアで若々しいが、実年齢は六〇手前だという。
「では主催の鈴音氏、乾杯を」
「みなさん、今日はお集まりくださってありがとうございます」
会場に用意されたジュース類で、乾杯した。
お料理に加え、トワさんが持ってきたおせんべいもいただく。温かい飲み物に合うよう、和菓子にしたという。
どの料理も、ビビたちペット組も食べられるように、一切の味付けをしていない。なのに、旨味がギュッと詰まっている。
ビビもナインくんも、茹でた鶏肉に食欲が止まらない。ガツガツといっていた。
ボクたちはソースをもらって、食べている。
このソースも手作りみたいで、こちらもこちらで最高だ。
ビビも、メロンの進みが止まらない。メロンってネコも食べていいらしいけど、ここまでがっつくのは珍しいかも。お腹を壊さないようにしないと。
ちなみにメロンには、生ハムなどのネコにとって危険な食材を乗せていない。
お金持ちの家といえば生ハムメロンって感じだけど、沢木さんはちゃんとペットのことを理解しているようだ。
「塩コショウをつけながらでも、十分美味しいです。けどソースがまた、たまりませんね。鶏肉の味が引き立ちます」
「このソース、作り方は未履修なので、レシピサイトで自作」
お店のような本格的な料理はできない、って意味らしい。
「沢木さんって、独特の話し方ですね?」
「会社員時代は、普通にしゃべれたのだがな。自分の城を持つに当たって、体裁を取り繕うのをやめたのだよ」
この村の再開発も、沢木さんの主導だとか。
「最初は、山だけを買ったんだよ」
「この山だけ?」
「うむ。キャンプをしたくてな」
なんでも沢木さんは、隠居して「世捨て人最強説」を説きたかったのだとか。
眼の前にある鶏の丸焼きも、沢木さんが焚き火で作ったそうな。
「たしかに、おいしいです。止まらない」
「おいしいよねー」
特にナインくんは、蒸したサツマイモがお気に入りのようである。
「利益しか追求しない会社や、終わりなき競争社会に、辟易してしまってな。しかしここは、あまりに限界集落過ぎた。村民には、『半年ROMれ』的な言い方をされた件」
村民との軋轢などをコミュニケーションで解決して、沢木さんはようやく再開発に乗り出す。
「自分が住みやすい都市にしたくて村に金やアイデアを出資していたら、こうなった」
インフラなどを独自で整備していたら、大量に賛同者が集まってきたという。
田舎暮らしに憧れる若者や、「都内に路線がつながっている、郊外の安い土地」を探している若い夫婦などが、この付近に住んでいる。
今では『村の景観を損なわない、再開発都市の成功例』と、新聞で紹介されるほどになったらしい。
どこまでお金を持ってるんだ、この人は。
「ベルさん……梵 鈴音さんとは、どういう?」
「あたしが勤めている会社の社長の、旦那さんよ」
沢木さん本人も、複数の会社を持つビジネスオーナーなんだとか。
リッチの次元が、違いすぎる。
トワさんが、お土産選びに慎重になるわけだ。
ペットのすしおくんはお気楽に、トワさんがほぐした鶏肉を頬張っているけど。
「あたしも、この付近に住んでいるの。社長に紹介されて」
この一帯は、生活資金の負担もかなり軽いそうだ。
いいなあ。貯金やセミリタイアには絶好の場所じゃないか。しかもゲームの環境も整っているなんて。
「しかし、梵氏にそんないい殿方がいるとは。久々に『ガタッ!』てなった」
「とんでもありませんよ。あたしにケントさんはもったいないです」
「お似合いだと、思うけど?」
沢木さんの問いかけに、トワさんも「うんうん」うなずく。
どう、リアクションしていいのやら。
「人との出会いなんて、どうなるかわからんし。吾輩も乗り気しない『ねるとん』に強引に参加させられて、同じような境遇にいた妻と意気投合したし」
当時でも珍しい、オタク同士の結婚だったそうだ。
だが周りは、二人をただのお金持ちオタクとしか見ていなかったらしい。
そんな社会からの視線も避けたくて、この村に引っ越してきたという。
「そうなんですね」
「うむ。しかもそのとき成立したカプールが、吾輩たちしかいなかった件について。その後のメシがウマかったことウマかったこと。メシウマ」
当時から婚活って大変だったんだなぁと、思い知らされる。
「沢木さん、ところで社長は?」
「息子と大学を、見に行ってるのでつ。もう推薦で、受かっちゃって。夕方には帰るって」
もう、そんな時期かぁ。
「だから、車がなかったんですね? わかりました」
「夕方まで、ゆっくりしてってちょ」
「はい。お願いします」
ゲームの支度をしようと、鈴音さんが席を立つ。
「ゲームの前に、二人の馴れ初めを詳しく」
「馴れ初めだなんて。第一、ケントさんはそんな……」
自信なさげに、鈴音さんは黙り込む。
「こういうのは、周りがせっつくとかえって萎縮しますよー。流れに任せましょー」
トワさんが、フォローを入れた。
「同意。我輩たちもまったく意識してないところから、交際が始まったし。こういうのはきっかけこそ大事なり」
ようやく、話も落ち着いたみたい。
「よく来てくださった。田益 健人氏に、竹中 |トワ氏。吾輩の名は沢木という」
沢木さんが、ボクたちにあいさつをした。
きのこヘアで若々しいが、実年齢は六〇手前だという。
「では主催の鈴音氏、乾杯を」
「みなさん、今日はお集まりくださってありがとうございます」
会場に用意されたジュース類で、乾杯した。
お料理に加え、トワさんが持ってきたおせんべいもいただく。温かい飲み物に合うよう、和菓子にしたという。
どの料理も、ビビたちペット組も食べられるように、一切の味付けをしていない。なのに、旨味がギュッと詰まっている。
ビビもナインくんも、茹でた鶏肉に食欲が止まらない。ガツガツといっていた。
ボクたちはソースをもらって、食べている。
このソースも手作りみたいで、こちらもこちらで最高だ。
ビビも、メロンの進みが止まらない。メロンってネコも食べていいらしいけど、ここまでがっつくのは珍しいかも。お腹を壊さないようにしないと。
ちなみにメロンには、生ハムなどのネコにとって危険な食材を乗せていない。
お金持ちの家といえば生ハムメロンって感じだけど、沢木さんはちゃんとペットのことを理解しているようだ。
「塩コショウをつけながらでも、十分美味しいです。けどソースがまた、たまりませんね。鶏肉の味が引き立ちます」
「このソース、作り方は未履修なので、レシピサイトで自作」
お店のような本格的な料理はできない、って意味らしい。
「沢木さんって、独特の話し方ですね?」
「会社員時代は、普通にしゃべれたのだがな。自分の城を持つに当たって、体裁を取り繕うのをやめたのだよ」
この村の再開発も、沢木さんの主導だとか。
「最初は、山だけを買ったんだよ」
「この山だけ?」
「うむ。キャンプをしたくてな」
なんでも沢木さんは、隠居して「世捨て人最強説」を説きたかったのだとか。
眼の前にある鶏の丸焼きも、沢木さんが焚き火で作ったそうな。
「たしかに、おいしいです。止まらない」
「おいしいよねー」
特にナインくんは、蒸したサツマイモがお気に入りのようである。
「利益しか追求しない会社や、終わりなき競争社会に、辟易してしまってな。しかしここは、あまりに限界集落過ぎた。村民には、『半年ROMれ』的な言い方をされた件」
村民との軋轢などをコミュニケーションで解決して、沢木さんはようやく再開発に乗り出す。
「自分が住みやすい都市にしたくて村に金やアイデアを出資していたら、こうなった」
インフラなどを独自で整備していたら、大量に賛同者が集まってきたという。
田舎暮らしに憧れる若者や、「都内に路線がつながっている、郊外の安い土地」を探している若い夫婦などが、この付近に住んでいる。
今では『村の景観を損なわない、再開発都市の成功例』と、新聞で紹介されるほどになったらしい。
どこまでお金を持ってるんだ、この人は。
「ベルさん……梵 鈴音さんとは、どういう?」
「あたしが勤めている会社の社長の、旦那さんよ」
沢木さん本人も、複数の会社を持つビジネスオーナーなんだとか。
リッチの次元が、違いすぎる。
トワさんが、お土産選びに慎重になるわけだ。
ペットのすしおくんはお気楽に、トワさんがほぐした鶏肉を頬張っているけど。
「あたしも、この付近に住んでいるの。社長に紹介されて」
この一帯は、生活資金の負担もかなり軽いそうだ。
いいなあ。貯金やセミリタイアには絶好の場所じゃないか。しかもゲームの環境も整っているなんて。
「しかし、梵氏にそんないい殿方がいるとは。久々に『ガタッ!』てなった」
「とんでもありませんよ。あたしにケントさんはもったいないです」
「お似合いだと、思うけど?」
沢木さんの問いかけに、トワさんも「うんうん」うなずく。
どう、リアクションしていいのやら。
「人との出会いなんて、どうなるかわからんし。吾輩も乗り気しない『ねるとん』に強引に参加させられて、同じような境遇にいた妻と意気投合したし」
当時でも珍しい、オタク同士の結婚だったそうだ。
だが周りは、二人をただのお金持ちオタクとしか見ていなかったらしい。
そんな社会からの視線も避けたくて、この村に引っ越してきたという。
「そうなんですね」
「うむ。しかもそのとき成立したカプールが、吾輩たちしかいなかった件について。その後のメシがウマかったことウマかったこと。メシウマ」
当時から婚活って大変だったんだなぁと、思い知らされる。
「沢木さん、ところで社長は?」
「息子と大学を、見に行ってるのでつ。もう推薦で、受かっちゃって。夕方には帰るって」
もう、そんな時期かぁ。
「だから、車がなかったんですね? わかりました」
「夕方まで、ゆっくりしてってちょ」
「はい。お願いします」
ゲームの支度をしようと、鈴音さんが席を立つ。
「ゲームの前に、二人の馴れ初めを詳しく」
「馴れ初めだなんて。第一、ケントさんはそんな……」
自信なさげに、鈴音さんは黙り込む。
「こういうのは、周りがせっつくとかえって萎縮しますよー。流れに任せましょー」
トワさんが、フォローを入れた。
「同意。我輩たちもまったく意識してないところから、交際が始まったし。こういうのはきっかけこそ大事なり」
ようやく、話も落ち着いたみたい。
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