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第三章 大家さんと三毛猫が、参戦
第23話 バグ修正報酬 再び
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ヴォルフさんのいる、冒険者ギルドへ。
もらったメールによると、『バグ取りの報酬があるため、三人ともログインしてくれ』とのこと。
「じゃ、ギルドに向かいましょう」
ギルドの受付に向かうと、さっそくいつものお姉さんに先導される。応接室に、案内してもらった。
ギルド本部に入ると、ヴォルフさんがソファから立ち上がった。
「ケントさんとビビちゃん、ベルさんとナインちゃん。アントワーヌさんとすしおちゃん。本日は、ありがとうございました」
「運営スタッフからも、礼を言う」
お姉さんともども、ヴォルフさんがボクたちに頭を下げる。
「実はあのワイバーンなのですが、降りる動作をするはずだったんです」
やっぱりか。どおりで飛びっぱなしだと思っていた。
ワイバーンは普段は飛んでいるが、飛びつかれて一旦休むことがあるという。矢や銃、魔法などで攻撃すると、降りる時間が短縮できる。
しかしあのワイバーンは、終始飛びっぱなしだった。バグのせいで。
「それで、攻撃しても落ちてこなかったのね?」
バグによって、ずっと飛んでいる状態を余儀なくされていたのだ。
さすがにワイバーンも、飛び疲れたらしい。そのせいであのとき、もう飛べなくなってしまったのだ。
「あのままでは、クリアできないところでした」
「危なかったんですね」
「今は修正が完了して、ちゃんと降りるエフェクトも機能しています」
受付のお姉さんが、タブレットを出す。
ボクたちは、ワイバーンの映像を見せてもらった。
たしかにワイバーンは、ちゃんと降りる動作を行っている。
「降りたら、半円状にブレスを吐くのね?」
「そうなんです。これが本来のワイバーンの動作だったんですけど……」
バグのせいで、ワイバーンはまともに戦えていなかったと。
「だいたいバグって、何が原因なのー?」
今度は、トワさんが問いかけた。
「現在も調査中です。さすがにお恥ずかしい限りでして」
スタッフからしても、予想外のバグだったらしい。
「我々も、少々のバグは発見次第、未然に除去している。だが、追いついていないのが実情だ」
大きなバグは、プレイヤーが気づくことが多いという。主に、ベルさんが。
「ベルさんには、公式にデバッグを依頼しております」
「プレイヤー視点のバグ報告は、本来なら頼んではいけないのだがな」
遊ぶ人に直接不具合を報告させることは、あまり褒められたものではない。
「いいのよ。もともと、ゲーム開発に携わっているから」
ベルさんの中身は、どうもアプリゲームの開発担当者だという。詳しくは言っていないが、相当に売れているゲームを任されているみたいだが。
「取材にもなるし、我が社にも貢献できるわ」
「ありがとう。そう言ってもらえると助かる」
「開発が辛いのは、お互い様よ。好きなことですもの。全力で協力するわ」
「感謝する」
ボクたちは、報酬を受け取った。
全員、手に入れたのは、エンブレムだ。
実装予定のアイテムを、先行でくれるという。
~~~~~ ~~~~~ ~~~~~
ユニークアイテム:【騎士団の証】
シールドの魔法防御力が、多少上がる。
~~~~~ ~~~~~ ~~~~~
また、シールドが強化されたみたい。
ビビは【韋駄天の証】という、素早さの上がるクツ飾りを手に入れた。
トワさんがもらったのは、【大将の証】だ。弟子が二名追加されて、武器の開発時間が短縮できる。
すしおくんは【商売神の加護】という、現在レベルより上位の品物を売買できるアイテムを手に入れていた。
ベルさんとナインくんは、【狙撃手の極意書】をもらう。敵の弱点を見つける、モノクルだ。
「では、今後もよろしく頼む。できれば、手を借りないようにこちらも努力するが」
「いつでも、おっしゃってください。手を貸しますよ」
「ありがとう。ケント。ところで……」
「はい?」
「多少、キミは話題になっているのだが?」
ん? どういったことだろう?
「ペットのネコと、親しく話しているところを、度々目撃されている。まるで、人と話しているようだと」
「あーっ」
気づかれてはいないようだけど、周りから見ると変なのかもしれない。
「アビリティのせいですね。それと、これの効果を聞きたかったところでして」
ボクは、【以心伝心】というアビリティと、その効果について話す。
ビビとお話できるところまでは、話していない。
「なるほど。ペットの気持ちが多少わかるアビリティか。これはいわゆる、ペット翻訳機のようなアビリティだ」
やってほしいことをペットが動作で伝えてくれる、アビリティだそうだ。
翌日、ボクは勤務明けに、ビビのご飯を補充しに向かう。
通路で、暗い表情の女性にぶつかってしまう。
「ごめんなさい!」
「……すいません」
女性は、ペコリと頭を下げて……ずっと下を向いていた。
老犬とともに、地面にスマホを凝視している。
ボクが落としてしまったか。
女性は、ボクのスマホを拾ってくれた。
「ありがとうございます」
「ビビちゃん」
女性がつぶやく。
「どうしました?」
「あ、いえ。失礼します」
女性はささっとレジへ。
あの女性、さっき「ビビ」って言っていたなぁ。
(第三章 おしまい)
もらったメールによると、『バグ取りの報酬があるため、三人ともログインしてくれ』とのこと。
「じゃ、ギルドに向かいましょう」
ギルドの受付に向かうと、さっそくいつものお姉さんに先導される。応接室に、案内してもらった。
ギルド本部に入ると、ヴォルフさんがソファから立ち上がった。
「ケントさんとビビちゃん、ベルさんとナインちゃん。アントワーヌさんとすしおちゃん。本日は、ありがとうございました」
「運営スタッフからも、礼を言う」
お姉さんともども、ヴォルフさんがボクたちに頭を下げる。
「実はあのワイバーンなのですが、降りる動作をするはずだったんです」
やっぱりか。どおりで飛びっぱなしだと思っていた。
ワイバーンは普段は飛んでいるが、飛びつかれて一旦休むことがあるという。矢や銃、魔法などで攻撃すると、降りる時間が短縮できる。
しかしあのワイバーンは、終始飛びっぱなしだった。バグのせいで。
「それで、攻撃しても落ちてこなかったのね?」
バグによって、ずっと飛んでいる状態を余儀なくされていたのだ。
さすがにワイバーンも、飛び疲れたらしい。そのせいであのとき、もう飛べなくなってしまったのだ。
「あのままでは、クリアできないところでした」
「危なかったんですね」
「今は修正が完了して、ちゃんと降りるエフェクトも機能しています」
受付のお姉さんが、タブレットを出す。
ボクたちは、ワイバーンの映像を見せてもらった。
たしかにワイバーンは、ちゃんと降りる動作を行っている。
「降りたら、半円状にブレスを吐くのね?」
「そうなんです。これが本来のワイバーンの動作だったんですけど……」
バグのせいで、ワイバーンはまともに戦えていなかったと。
「だいたいバグって、何が原因なのー?」
今度は、トワさんが問いかけた。
「現在も調査中です。さすがにお恥ずかしい限りでして」
スタッフからしても、予想外のバグだったらしい。
「我々も、少々のバグは発見次第、未然に除去している。だが、追いついていないのが実情だ」
大きなバグは、プレイヤーが気づくことが多いという。主に、ベルさんが。
「ベルさんには、公式にデバッグを依頼しております」
「プレイヤー視点のバグ報告は、本来なら頼んではいけないのだがな」
遊ぶ人に直接不具合を報告させることは、あまり褒められたものではない。
「いいのよ。もともと、ゲーム開発に携わっているから」
ベルさんの中身は、どうもアプリゲームの開発担当者だという。詳しくは言っていないが、相当に売れているゲームを任されているみたいだが。
「取材にもなるし、我が社にも貢献できるわ」
「ありがとう。そう言ってもらえると助かる」
「開発が辛いのは、お互い様よ。好きなことですもの。全力で協力するわ」
「感謝する」
ボクたちは、報酬を受け取った。
全員、手に入れたのは、エンブレムだ。
実装予定のアイテムを、先行でくれるという。
~~~~~ ~~~~~ ~~~~~
ユニークアイテム:【騎士団の証】
シールドの魔法防御力が、多少上がる。
~~~~~ ~~~~~ ~~~~~
また、シールドが強化されたみたい。
ビビは【韋駄天の証】という、素早さの上がるクツ飾りを手に入れた。
トワさんがもらったのは、【大将の証】だ。弟子が二名追加されて、武器の開発時間が短縮できる。
すしおくんは【商売神の加護】という、現在レベルより上位の品物を売買できるアイテムを手に入れていた。
ベルさんとナインくんは、【狙撃手の極意書】をもらう。敵の弱点を見つける、モノクルだ。
「では、今後もよろしく頼む。できれば、手を借りないようにこちらも努力するが」
「いつでも、おっしゃってください。手を貸しますよ」
「ありがとう。ケント。ところで……」
「はい?」
「多少、キミは話題になっているのだが?」
ん? どういったことだろう?
「ペットのネコと、親しく話しているところを、度々目撃されている。まるで、人と話しているようだと」
「あーっ」
気づかれてはいないようだけど、周りから見ると変なのかもしれない。
「アビリティのせいですね。それと、これの効果を聞きたかったところでして」
ボクは、【以心伝心】というアビリティと、その効果について話す。
ビビとお話できるところまでは、話していない。
「なるほど。ペットの気持ちが多少わかるアビリティか。これはいわゆる、ペット翻訳機のようなアビリティだ」
やってほしいことをペットが動作で伝えてくれる、アビリティだそうだ。
翌日、ボクは勤務明けに、ビビのご飯を補充しに向かう。
通路で、暗い表情の女性にぶつかってしまう。
「ごめんなさい!」
「……すいません」
女性は、ペコリと頭を下げて……ずっと下を向いていた。
老犬とともに、地面にスマホを凝視している。
ボクが落としてしまったか。
女性は、ボクのスマホを拾ってくれた。
「ありがとうございます」
「ビビちゃん」
女性がつぶやく。
「どうしました?」
「あ、いえ。失礼します」
女性はささっとレジへ。
あの女性、さっき「ビビ」って言っていたなぁ。
(第三章 おしまい)
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