上 下
19 / 41
第三章 大家さんと三毛猫が、参戦

第19話 鉱山ダンジョンへ

しおりを挟む
 翌日、ボクたちはまたログインする。
 
「久々のバグ報告だね、ビビ」

『ケントご主人、大忙しだニャー』

「アハハ。メール来ちゃったからね」

 実は運営から、バグ取りと調査を直接依頼された。

 ボクなんかで役に立つんだろうか。

 とりあえず、ボクとビビは、トワさんと待ち合わせた。

 今日は、いっしょにダンジョンを回る予定である。

「ケント。こんばんは」

 しばらくして、ベルさんが待ち合わせ場所に現れた。ボクたちと、共に行動してくれる。

「おまたせー、ケントくーん」

 お店を終えて、トワさんがやってきた。

 武装が、若干変わっている。

 タンクトップ、ショートパンツだ。武器は、ハンマーである。
 鍛冶屋って、そのまま戦闘職もできるんだな。ドワーフの腕力補正もあるみたいだし。
 
「いえ、全然待っていません」

「よかったー。そちらの方は?」

「ボクのフレンドの、ベルさんです」

 今日は、ベルさんもいっしょだ。トワさんの話をしていたら、「是非お知り合いになりたい」と、同行してくれた。

「どうも、はじめまして。ベルです。こちらは愛犬のナイン」

「はじめましてー。トワでーす。ドワーフの鍛冶屋ですよー」

 トップランカーが来ようが、トワさんは動じない。いつもどおりのマイペースである。

 トワさんはドワーフというが、ショートカットで細マッチョのちびっ子である。実物は、もっと背が高い。似ているのは、ショートなところぐらいか。

 二、三こと会話しただけで、二人はもうすっかり打ち解けていた。
 世代とかぜんぜん違うのに、もう敬語が抜けている。

 主に、ボクとビビの話題で盛り上がっているみたい。
 話すことなんて、そんなにあるのかな?
 
「この子は、すしおー。三毛猫のオスだよー」

 すしおくんは、トワさんに持ち上げられて、されるがままになっていた。なんの抵抗もしない。

「ところで、すしおくんの職業は僧侶なの?」

「【モンク】ってのがあったから、それにしたー」

 土魔法が得意な格闘家で、大地の力を使った回復も得意な職業である。
 
 すしおくんはマントを羽織って、僧侶っぽい貫頭衣を着ていた。トワさんは、もっとかわいい服とかを着せたかったみたいだけど、太りすぎてて身体が入らないという。

「かわいいわね。おとなしい」

「おとなしいというか、無気力なんだよねー」

 すしおくんは、「なあ」と鳴くだけ。「これからダンジョンへ向かうんだ」という、緊張感も感じられず。
 まあ、リラックスしていると思えばいいかな。

「いいじゃない。ネコって、そんなもんよ」
 
「一応、ダンジョン巡りはできそうだから、安心してねー」

「期待しているわ。じゃあ、行きましょ」

 ベルさん先導で、ダンジョンに向かうことにした。

「それにしても、いきなりでしたね。バグ報告って」
 
「そうなの。進行不可のバグって、今まで出てこなかったんだけど」

 たいていは、魔物が大量に湧くとか、特定のエリアに入れないなどである。

 今回のバグは、かなり深刻そうだ。早く、取り除かないと。

「まだ開発途中でー、バグと銘打ってー、進行を妨げているとかはー?」

「運営だって、そんなポンコツじゃないわ。あと四エリアくらい追加しようか、って話しているくらいだから」

 開発チームは、進行状況を随時アップしている。

 その記事を、ベルさんは引用した。

「そっかー。じゃあ、急がないとねー」

 「バグ取りの依頼は受けているけど、楽しんでちょうだいね。バグに気を取られて、遊ぶことをおろそかにしたら、元も子もないから」

「おっけー」

 リオーネ鉱山は、見た目こそそんなに変化がない。普通に、岩山のダンジョンだ。
 冒険者たちが、がっかりしたような表情で帰っていくこと以外は。

「魔物が強くなっているなどの報告は、出ていないわ。安心してちょうだい」

「はい。行きましょう」

 ボクたちは、歩みを進めていく。

 一応、ビビの様子を伺った。特に、変化はない。なにかしゃべりたそうにも、していなかった。

「危なくなったら、知られてね、ビビ」

 ボクが声をかけると、ビビが『ニャー』と鳴く。

「やっぱり、あなたたちは通じ合っているみたいね」

「そうだよねー。話しかけられて、ビビちゃんうれしそー」

 ベルさんとトワさんが、ボクたちに視線を向けてきた。

「アビリティのおかげですよ」

 ボクは、適当にごまかす。
 
「モンスターですよ」

 二体の大トカゲが、ボクたちの前に立ちふさがる。狭い通路に、このデカさはキツイ。逃げられないだろう。迎え撃つしかない。
 
「えっと、スキルってどう使うんだっけ?」

 トワさんが、操作方法で悩んでいる。

「こうよ」

 ベルさんとナインくんが、スキルの扱いを実践してみせた。
 それぞれ一体ずつ、倒す。

「おーっ。やるもんだ」

「次が来るわ」

「おっけー。今度は任せてー。【ロック・スイング】!」
 
 トカゲの眉間に、トワさんがハンマーを打ち下ろした。土魔法をアクションに上乗せして、攻撃力を上げている。
 
 一撃で、大トカゲを倒した。

 一方、すしおくんもネコパンチ一発。それだけで、大トカゲをやっつける。ビンタじゃなくて、相手のおでこを押し付ける感じで。

 おお、さすが格闘家って感じ?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~

夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。 多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』 一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。 主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!! 小説家になろうからの転載です。

Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組

瑞多美音
SF
 福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……  「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。  「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。  「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。  リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。  そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。  出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。      ○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○  ※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。  ※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

転生者、万能宇宙戦艦もらって無双する

手跡那舞
SF
転生者は、転生特典に万能宇宙戦艦を要求した。そんな宇宙戦艦をもらい、管理しながら、各地で暴れる物語である。

ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜

八ッ坂千鶴
SF
 普通の高校生の少年は高熱と酷い風邪に悩まされていた。くしゃみが止まらず学校にも行けないまま1週間。そんな彼を心配して、母親はとあるゲームを差し出す。  そして、そのゲームはやがて彼を大事件に巻き込んでいく……!

【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

チート級スキルを得たゲーマーのやりたいことだけするVRMMO!

しりうす。
ファンタジー
VRゲーム【Another world・Online】βテストをソロでクリアした主人公──────雲母八雲。 βテスト最後のボスを倒すと、謎のアイテム【スキルの素】を入手する。不思議に思いつつも、もうこのゲームの中に居る必要はないためアイテムの事を深く考えずにログアウトする。 そして、本サービス開始時刻と同時に【Another world・Online】にダイブし、そこで謎アイテム【スキルの素】が出てきてチート級スキルを10個作ることに。 そこで作ったチート級スキルを手に、【Another world・Online】の世界をやりたいことだけ謳歌する! ※ゆるーくやっていくので、戦闘シーンなどの描写には期待しないでください。 ※処女作ですので、誤字脱字、設定の矛盾などがあると思います。あったら是非教えてください! ※感想は出来るだけ返信します。わからない点、意味不明な点があったら教えてください。(アンチコメはスルーします)

言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空
SF
社畜?社会人4年目に突入する紗蘭は、合計10連勤達成中のある日、VRMMOの世界にダイブする。 ゲームの世界でくらいは、ほのぼのライフをエンジョイしたいと願った彼女。 女神様の前でステータス決定している最中に 「言霊の力が活かせるジョブがいい」 とお願いした。すると彼女には「言霊エンチャンター」という謎のジョブが!? 彼女の行く末は、夢見たほのぼのライフか、それとも……。 これは、現代とVRMMOの世界を行き来するとある社畜?の物語。 (当分、毎日21時10分更新予定。基本ほのぼの日常しかありません。ダラダラ日常が過ぎていく、そんな感じの小説がお好きな方にぜひ。戦闘その他血沸き肉躍るファンタジーお求めの方にはおそらく合わないかも)

処理中です...