16 / 49
第三章 大家さんと三毛猫が、参戦
第16話 アビリティ 【以心伝心】
しおりを挟む
『おかえりニャー』
さっそくビビが、ボクに声をかけてくる。
『他の女の、カレーの匂いがするニャー』
「まあまあ。大家さんだからね」
ビビも『冗談ニャー』と笑う。
『大家さん、ログイン、うまくいったのかニャー?』
「大丈夫だった」
大型アップデートがあったため、ログインが困難になっていただけだと告げる。
「アビリティのことかニャー?」
よく知ってるなあ、ビビは。さっき説明があったばかりなのに。
「ボクたち初期プレイヤーは、はじめから備わっているそうだよ」
選択する自由はなくないけど、戦闘経験からかなり有益なアビリティが手に入るらしい。
「ビビは、アビリティは気になる?」
『ご主人のお役に立てるか、楽しみニャー』
「ビビはいてくれるだけで、癒やされているよ」
『ありがたいニャー』
さっそく、二人で確認をし合う。
『ケントご主人は、【最強のふたり】って書いてあるニャー』
ペットにバフ効果をもたらす、アビリティだ。ボクが強くなると、ビビも相乗効果で強くなるみたい。
これは、ボクも気になっていた。もらえてよかったよ。
「ビビは……【以心伝心】?」
飼い主と心を通わせることができる、だって。
このアビリティがあるから、ビビとも会話できるのかな?
「でも、アビリティの選択項目にはなかったなあ」
トワさんと遊んだときは、そんな名前のアビリティは存在していない。
こんな最高のアビリティなら、飼い主はみんなこぞって選ぶはずだけど。
『運営でも管理しきれていない、アビリティなのかもニャー』
そのようなアビリティなんて、あるのかな?
でも大量のバグがあるゲームだし、アクシデントととは隣り合わせなのかもね。
「ビビがバグ取りをしたことで、ボクと意思疎通ができるようになった可能性は高いけど」
『まだわからないニャー』
これは、調査が必要かもね。
時間だから、大家さんに会いに行こう。
『大家さんは、なんという名前でプレイしているのかニャー?』
「たしか、【アントワーヌ】だって」
自分の名前の「トワ」から取って、「アントワーヌ」にしたらしい。「トワだけだと他の人も使ってそうだから、長い名前にした」とのこと。
ボクはありふれた名前だから、目立たないように自分の名前にしたんだけど。
「こんにちはー」
「あら、いらっしゃーい」
トワさんことアントワーヌさんは、見事に露店を開いていた。露天レベルは「一」だ。
鍛冶屋などの生産職は、レベルが上がると店の規模も上がる。ある程度の大きさになると、NPCや他のプレイヤーに店番を任せることだってできる。
「どうして、アントワーヌにしたんです?」
「アントニオの女読み」
「えっと……ああ、アントニオ・バンデラスですか?」
3Dアニメ『長ぐつをはいたネコ』の役者が、アントニオ・バンデラスだったよなー。
「違うよ。『じゃりン子チエ』」
あーっ。あのネコかー。
「それはそうと、トワさん。商業ギルドに行けたんですね?」
「うん。いろんな人から話を聞いて、露天の出し方も教わったー」
さすがトワさん、コミュ力が高い。
「アントワーヌは長いから、ケントくんは普通にトワでいいよー」
「ではトワさん、必要なものはありますか?」
「これだけ、ほしいんだよー」
トワさんが、リストを見せてくれた。
魔物の牙や爪、鉄鉱石か。【朱砂】などの宝石や、【植物の角】といった変わったものまで必要みたい。
「結構な量が、求められるんですね」
「生産職って戦わなくてもいいけど、要求されるものが多いんだよねー」
生産職は戦わなくても戦闘経験値が貯まる代わりに、レベルアップには大量の生産が必要になる。
「魔獣の【爪】と【牙】なら、これだけありますよ」
ボクは大量に、爪と牙を持っていた。アイテムボックスを埋め尽くすほど。ギルドに提供してもこれ以上必要ないと言われて、インベントリ内を圧迫していたのである。
「ありがとー助かるよー」
さっそくトワさんは、鍛冶を始めた。魔獣の爪では、ナイフを。魔獣の牙では、矢を作った。できあがった品を、店に並べる。
どうにかボクの所持品で、トワさんのレベルが上ったみたい。
ボクも素材が売れて、ホクホクだ。
トワさんはアビリティで、三割引きで取引できる。「商業ギルドが、仕入れ値の一部を負担してくれる」という設定のようだ。
「うんとレベルを上げて、キミたちに見合う武器も作れるようになるからねー」
「ありがとうございます。防具は一応、一式揃えました」
トワさんに、胸当てを見せる。ビビの装備している、革鎧なども。
ボクの装備している胸当ては、ダンジョンで手に入れたものだ。
「胸当ては素材がないと強化できないけど、ビビちゃんのはすぐに作れるよ。魔獣の【革】ってある?」
「あります。今出しますね」
ボクはトワさんに、魔獣の革を渡す。
ものの数秒で、鍛冶が完成した。
ビビが、ボクの腰辺りをチョンチョンとする。
「あっ。強化素材ならあります!」
ボクは、クモの糸をトワさんに渡す。
これを教えたかったんだよね、ビビ?
「ビビちゃん、よく気がついたねー? それにしてもケントくんは、ビビちゃんの言いたいことがわかるのかなー?」
さっそくビビが、ボクに声をかけてくる。
『他の女の、カレーの匂いがするニャー』
「まあまあ。大家さんだからね」
ビビも『冗談ニャー』と笑う。
『大家さん、ログイン、うまくいったのかニャー?』
「大丈夫だった」
大型アップデートがあったため、ログインが困難になっていただけだと告げる。
「アビリティのことかニャー?」
よく知ってるなあ、ビビは。さっき説明があったばかりなのに。
「ボクたち初期プレイヤーは、はじめから備わっているそうだよ」
選択する自由はなくないけど、戦闘経験からかなり有益なアビリティが手に入るらしい。
「ビビは、アビリティは気になる?」
『ご主人のお役に立てるか、楽しみニャー』
「ビビはいてくれるだけで、癒やされているよ」
『ありがたいニャー』
さっそく、二人で確認をし合う。
『ケントご主人は、【最強のふたり】って書いてあるニャー』
ペットにバフ効果をもたらす、アビリティだ。ボクが強くなると、ビビも相乗効果で強くなるみたい。
これは、ボクも気になっていた。もらえてよかったよ。
「ビビは……【以心伝心】?」
飼い主と心を通わせることができる、だって。
このアビリティがあるから、ビビとも会話できるのかな?
「でも、アビリティの選択項目にはなかったなあ」
トワさんと遊んだときは、そんな名前のアビリティは存在していない。
こんな最高のアビリティなら、飼い主はみんなこぞって選ぶはずだけど。
『運営でも管理しきれていない、アビリティなのかもニャー』
そのようなアビリティなんて、あるのかな?
でも大量のバグがあるゲームだし、アクシデントととは隣り合わせなのかもね。
「ビビがバグ取りをしたことで、ボクと意思疎通ができるようになった可能性は高いけど」
『まだわからないニャー』
これは、調査が必要かもね。
時間だから、大家さんに会いに行こう。
『大家さんは、なんという名前でプレイしているのかニャー?』
「たしか、【アントワーヌ】だって」
自分の名前の「トワ」から取って、「アントワーヌ」にしたらしい。「トワだけだと他の人も使ってそうだから、長い名前にした」とのこと。
ボクはありふれた名前だから、目立たないように自分の名前にしたんだけど。
「こんにちはー」
「あら、いらっしゃーい」
トワさんことアントワーヌさんは、見事に露店を開いていた。露天レベルは「一」だ。
鍛冶屋などの生産職は、レベルが上がると店の規模も上がる。ある程度の大きさになると、NPCや他のプレイヤーに店番を任せることだってできる。
「どうして、アントワーヌにしたんです?」
「アントニオの女読み」
「えっと……ああ、アントニオ・バンデラスですか?」
3Dアニメ『長ぐつをはいたネコ』の役者が、アントニオ・バンデラスだったよなー。
「違うよ。『じゃりン子チエ』」
あーっ。あのネコかー。
「それはそうと、トワさん。商業ギルドに行けたんですね?」
「うん。いろんな人から話を聞いて、露天の出し方も教わったー」
さすがトワさん、コミュ力が高い。
「アントワーヌは長いから、ケントくんは普通にトワでいいよー」
「ではトワさん、必要なものはありますか?」
「これだけ、ほしいんだよー」
トワさんが、リストを見せてくれた。
魔物の牙や爪、鉄鉱石か。【朱砂】などの宝石や、【植物の角】といった変わったものまで必要みたい。
「結構な量が、求められるんですね」
「生産職って戦わなくてもいいけど、要求されるものが多いんだよねー」
生産職は戦わなくても戦闘経験値が貯まる代わりに、レベルアップには大量の生産が必要になる。
「魔獣の【爪】と【牙】なら、これだけありますよ」
ボクは大量に、爪と牙を持っていた。アイテムボックスを埋め尽くすほど。ギルドに提供してもこれ以上必要ないと言われて、インベントリ内を圧迫していたのである。
「ありがとー助かるよー」
さっそくトワさんは、鍛冶を始めた。魔獣の爪では、ナイフを。魔獣の牙では、矢を作った。できあがった品を、店に並べる。
どうにかボクの所持品で、トワさんのレベルが上ったみたい。
ボクも素材が売れて、ホクホクだ。
トワさんはアビリティで、三割引きで取引できる。「商業ギルドが、仕入れ値の一部を負担してくれる」という設定のようだ。
「うんとレベルを上げて、キミたちに見合う武器も作れるようになるからねー」
「ありがとうございます。防具は一応、一式揃えました」
トワさんに、胸当てを見せる。ビビの装備している、革鎧なども。
ボクの装備している胸当ては、ダンジョンで手に入れたものだ。
「胸当ては素材がないと強化できないけど、ビビちゃんのはすぐに作れるよ。魔獣の【革】ってある?」
「あります。今出しますね」
ボクはトワさんに、魔獣の革を渡す。
ものの数秒で、鍛冶が完成した。
ビビが、ボクの腰辺りをチョンチョンとする。
「あっ。強化素材ならあります!」
ボクは、クモの糸をトワさんに渡す。
これを教えたかったんだよね、ビビ?
「ビビちゃん、よく気がついたねー? それにしてもケントくんは、ビビちゃんの言いたいことがわかるのかなー?」
11
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷
くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。
怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。
最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。
その要因は手に持つ箱。
ゲーム、Anotherfantasia
体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。
「このゲームがなんぼのもんよ!!!」
怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。
「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」
ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。
それは、翠の想像を上回った。
「これが………ゲーム………?」
現実離れした世界観。
でも、確かに感じるのは現実だった。
初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。
楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。
【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】
翠は、柔らかく笑うのだった。
底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった
椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。
底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。
ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。
だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。
翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜
夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。
不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。
その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。
彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。
異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!?
*小説家になろうでも公開しております。
インフィニティ・オンライン~ネタ職「商人」を選んだもふもふワンコは金の力(銭投げ)で無双する~
黄舞
SF
無数にあるゲームの中でもβ版の完成度、自由度の高さから瞬く間に話題を総ナメにした「インフィニティ・オンライン」。
貧乏学生だった商山人志はゲームの中だけでも大金持ちになることを夢みてネタ職「商人」を選んでしまう。
攻撃スキルはゲーム内通貨を投げつける「銭投げ」だけ。
他の戦闘職のように強力なスキルや生産職のように戦闘に役立つアイテムや武具を作るスキルも無い。
見た目はせっかくゲームだからと選んだもふもふワンコの獣人姿。
これもモンスターと間違えられやすいため、PK回避で選ぶやつは少ない!
そんな中、人志は半ばやけくそ気味にこう言い放った。
「くそっ! 完全に騙された!! もういっその事お前らがバカにした『商人』で天下取ってやんよ!! 金の力を思い知れ!!」
一度完結させて頂きましたが、勝手ながら2章を始めさせていただきました
毎日更新は難しく、最長一週間に一回の更新頻度になると思います
また、1章でも試みた、読者参加型の物語としたいと思っています
具体的にはあとがき等で都度告知を行いますので奮ってご参加いただけたらと思います
イベントの有無によらず、ゲーム内(物語内)のシステムなどにご指摘を頂けましたら、運営チームの判断により緊急メンテナンスを実施させていただくことも考えています
皆様が楽しんで頂けるゲーム作りに邁進していきますので、変わらぬご愛顧をよろしくお願いしますm(*_ _)m
吉日
運営チーム
大変申し訳ありませんが、諸事情により、キリが一応いいということでここで再度完結にさせていただきます。
サモナーって不遇職らしいね
7576
SF
世はフルダイブ時代。
人類は労働から解放され日々仮想世界で遊び暮らす理想郷、そんな時代を生きる男は今日も今日とて遊んで暮らす。
男が選んだゲームは『グラディウスマギカ』
ワールドシミュレータとも呼ばれるほど高性能なAIと広大な剣と魔法のファンタジー世界で、より強くなれる装備を求めて冒険するMMORPGゲームだ。
そんな世界で厨二感マシマシの堕天使ネクアムとなって男はのんびりサモナー生活だ。
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる