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第三章 大家さんと三毛猫が、参戦

第15話 大家さんのキャラ完成

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健人けんとくん、【アビリティ】ってなに?」

 大家のトワさんが、ボクに問いかけてきた。

「待ってくださいね。チェックするので」

 ボクは、解説項目をチェックする。

[【アビリティ】とは、キャラクターに永続的な効果をもたらす技能です。スキルとは違い、アビリティは育ちません。が、そのキャラクターの個性を決定づけるので、スキル自体が成長します]

 と、書かれていた。

「だそうです」

「うわー悩むねえ」

 こういうときは、自分の個性に合わせてやるのが一番なんだけど……。

「他の人の邪魔を、したくないんだよねえ」
 
 いい意味でも悪い意味でも、トワさんは人に合わせてしまう。
 高校のゲーム部時代から、そうだ。空気を読める人だから、周りはついてきてくれる。だが、自分が楽しめているかというと、どうなのか。最後まで、わからない人だったなあ。

「どっちかというと、すしおのために買ってきた感じだし」

 三毛猫のすしおくんは、「招き猫の置物かな」と思わせるくらいにでっぷりしている。

 おそらくトワさんは、運動不足を懸念してるのだろう。

「とはいっても、すしおくんが動くかどうか」

「だよねえ」
 
「トワさん、こういうときは、逆算しましょう。すしおくんに、どんな役割をさせたいか」

 ボクは、一つ提案をする。

 やることが決まっていないなら、飼い猫の性格に合わせればいい。
 
「このコは、こんなでしょー? ズボラなんだよー。だから、全部こっちがしてあげないとねー」

「でしたら、これなんてどうでしょう?」

「……アビリティ、【山のごとし】?」

『突っ立っているだけで、周囲の防御力がアップする』というアビリティだ。
 タンク職のアビリティなんだけど、積極的に攻撃してこないならこれかなと。

PペットRランFファクトリーで遊んでいるペットの中には、割と言うことを聞かない子も多いんですよ」

「生き物だもんねー。ソワソワしちゃうのかも」

「動かない子もいるので、すしおくんにはちょうどいいと思いますよ」

「わかったー。考えてみるねー」

 だが、なかなか決まらない。
 やっぱり、悩むよね。すしおくんは、消極的な性格の子だからなあ。

 アビリティより、職業から決めることに。

「トワさんって、具体的に、何がしたいです?」

「生産職!」
 
 これは、すぐに決まった。

「ウチって、家にずっといるでしょ? チビがまだ小さいから、目を離せないんだー。でも、人とは関わりを持ちたいし」

 それで、生産職と。

「では、【錬金術師】か【鍛冶屋】はいかがです?」

「ふむふむ。いいね。鍛冶屋がいい」

 錬金術はボクが持っていると説明すると、鍛冶屋を選んだ。

 トワさんは、種族をドワーフにした。戦闘時は、前衛のパワータイプで戦う。

「すしおは、どうしようかな?」

「商人なんてのは?」

「いいね! 見るからに招き猫じゃーん!」

 お店のマスコットとして、置物になってもらえばいい。これなら、動かなくてもOKだ。

「じゃあ、すしおのアビリティはこれだなー。【明王のご利益】!」

「へえ! 仕入れ値が三割引って、大きいですね」

 不動明王には、商売繁盛のご利益がある。
 コンセプトが決定したことで、アビリティもあっさり決まった。

「【山のごとし】は、ウチが取るよー」

 ボクが教えたアビリティは、トワさんが取ることに。
 
「わかりました。これで、OKです」

 一時間ほどして、ゲームをプレイできるようになった。

 気がつくと、トワさんの旦那さんとお子さんが食い入るように画面を見ている。

 PCと繋いでいるため、モニタと連動しているのだ。 
 
 お子さんも見守る中、トワ先輩はどうにかログインまでこぎ着けた。

「おっと、お腹が空いてるよねー。待っててー。支度するからー」

 トワさんが、データを保存して一旦中断する。

「いいよ。遊んでて。カレーは、オレが温めておいたから」

「そういうわけにもいかないよー。ご飯は、みんなで食べましょー」

 なんの惜しげもなく、ゲームから離脱した。

「それにしても、オンゲで生産職か。かーちゃんらしいな。オレ、負けちまいそうだぜ」

 絶賛商売人の竹中さんも、要領のいいトワさんのプレイが気になっているようだ。

「なにを言ってんのさー。大黒柱が、人妻に敗北宣言してんじゃねーよ」

 トワさんが、竹中さんに軽くチョップをする。

 いいな、こんな家庭。
 
「じゃあ健人くん、ありがとー。一旦休んでさ、ご飯食べていってよ」

「お気持ちはうれしいのですが、ビビと食べますので。では、お邪魔しました」

 そろそろビビも、お腹をすかせている頃だ。帰ってご飯だね。

「わかったー。ビビちゃんに謝っておいてー。じゃあまた、ゲームの中でねー」

 耐熱容器にカレーを入れてもらい、ボクは退室した。

 ひとまず、ビビのごはんだ。

 ボクは、カレーをいただく。

 トワさん一家のカレーは、ポークである。

 なので、ビビにも豚肉の缶を開けてあげた。
 
 食事をビビといっしょに終わって、ゲームにログインを。

 これから一時間後に、トワさんと待ち合わせをしている。

 アビリティか。ボクもビビと確認をしに行こう。
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