最強のVRMMOプレイヤーは、ウチの飼い猫でした ~ボクだけペットの言葉がわかる~

椎名 富比路

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第一章 飼い猫とVRMMOをしていたら、うちのコがしゃべりだした

第5話 バグ発見ボーナス

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「我々スタッフでも見つけられなかったバグを発見してもらって、感謝する」

「いえ。ボクは何も。バグから助けたのも、ビビですし」

 ヴォルフさんからのお礼に、ボクは首をふる。

「そうですよ。あたしだって、バグにひっかかっただけだし。ナインは、それを助けてくれたの」

「とはいえ、あのバグを見過ごしていたら、キャラロストの危険もあった。感謝しきれないくらいである」

 ボクたちの席の前に、ヴォルフさんがなにかのアイテムを提示した。腕輪かな? 

「キミたちにはギルドから、特別にボーナスを進呈する。市場に出回っていない、レア装備だ。受け取ってもらいたい」

「ありがとうございます」

 ボクは、特殊素材の腕輪を手に入れた。
 筋力と防御力が、多少アップしている。

「あたしまで。いえいえ、結構よ。たまたま見つけただけだし」

「そういうわけにはいかない。序盤の街付近でバグが見つかったのは、こちらの責任だ」

 ベルさんが受け取ったのは、見た目が変わるネックレスだ。

「アイテムボックスに入れているだけで、素早さが上がったわ」

「わふん」
 
 ナインくんにも、お揃いのものが贈呈される。
 どちらも、敏捷性がアップするらしい。

「アクセサリって、装備しなくてもいいんですよね」 
 
 剣やヨロイだと、装備枠を使う。より強い武器が手に入れば、新調する必要がある。
 腕輪などのアクセサリは、持っているだけでいい。装備を交換しなくていいのだ。

「ビビといったな。ん? どうした?」

 ヴォルフさんが、ビビに声をかける。

 ビビの方は、前足でナインくんの腕を押し続けていた。話しかけているかのように。

「ナインがどうしたの?」

「にゃー」

 ベルさんが問いかけると、ビビはナインくんに構うのをやめた。

「ああ、すいません。遊びたいのかな?」

「ありがとう。この子は人当たりがいいから、いつでも遊び相手になってあげてね」

 ナインくんを撫でながら、ベルさんがビビに話しかける。 

「じゃあビビ、お前さんにはこれを」

 ビビは、ネコミミパーカーをゲット。見た目を変えるだけのアクセサリなんだけど、魔力ステータスが軒並みアップしている。

 なんだか、気に入ってくれたみたい。パーカーを被って、ボクに見せびらかしてくる。
 
「あと、二人には土地をプレゼントする。街の一角に居住地点と、畑を作れるスペースを用意した。活用してもらいたい」

 冒険初日で、拠点をゲットした。これで体力回復の際に、宿屋を利用しなくて済む。宿代って、結構バカにならないからなぁ。

「ありがとうございます」

 至れり尽くせりだ。これは、なにかあるかも。

「それで、ものは相談なのだが、今後もバグ取りを手伝ってもらいたい」

「構いませんよ」

「もちろん、遊びに支障が出ない程度でいい。キミたちは遊びに来ているんだからな。遊んでいるのに、仕事をさせてしまうわけだから。ついでで構わん。もしバグを見つけたら、報告していただけると助かる」

「わかりました。畑ももらって、タダなんてわけにはいきませんから」

 ボクがいうと、ベルさんも同意見だと話す。
 
「それと、家も自分で建ててくれ。うまく作れない場合は、ギルドからドワーフを派遣する。要望に応えるとなると普通は高くつくが、融通しよう」

「ありがとうございます」

 せっかくだし、ヘタクソでも自分で作ってみようかな。

 くあああ、とビビがアクビをはじめた。お腹もいっぱいみたいだし、もうログアウトしようかな。

「じゃあ、ボクたちはこれで」

「明日までには、土地を用意する」

「はい。では」

 ボクたちは、冒険者ギルドを出た。

「じゃあ、あたしもログアウトするわ。ナインとお散歩する時間だから。今日はありがとう」

「いえいえ。ではまた」

「うん。じゃあね」
 
 ベルさんが、その場から消える。

「さて、と」

 明日からは木材集めと、畑の開拓を同時に進めようかな。

「ビビ」

『んにゃー。どうしたの、ご主人?』

 ビビが、眠たげに目を擦る。

「ナインくんに、話しかけようとしていたね?」
 
『そうだニャー。でも、反応はなかったニャー』

 同じ現象に遭遇したのに、ナインくんには言葉を話す兆候は見られなかった、と。

 ビビだけに、その反応が起きた?

「不思議だねぇ」

『これはニャアだけの特権ってことに、しておくニャ』

「そうだね。他の人には内緒にしよう」

 ヴォルフさんに、ビビがしゃべったことを話そうかとも思ったけど、やめておく。運営側も、ペットと会話ができるなんて把握していなかったみたいだし。
 もし異変が判明した場合、ビビを色々調べられるかもしれない。

「とにかくビビ、なにかあったら話してね。ボクの方も、ビビのことをちゃんと見ているつもりだけど、言葉が通じないとわからないことが多いし」

『ニャアももっとお話したいニャー。でも今は、おねむニャー』

「そうだね。お昼寝しよう」

 ボクたちはログアウトして、お昼寝をすることに。

 あっという間に、本気で寝てしまった。トップランカーの女性とフレンドになったり、ビビが言葉を話したり、すごいことが立て続けに起きたせいだろう。脳が追いついてない。

 でも、ビビと意思疎通できるなんて、これってすごいことだ。

 明日はどんなことが起きるんだろうね、ビビ。

(第一章 おしまい)
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