4 / 49
第一章 飼い猫とVRMMOをしていたら、うちのコがしゃべりだした
第4話 ビビが、しゃべった!?
しおりを挟む
「あの、ベルさん。すいません」
ボクは、先を行くベルさんに声をかける。
「どうしたの、ケント?」
ベルさんが、振り返った。
「街へ戻るのは、ファストトラベルにしませんか? ビビ、お昼をねだってきたので」
P・R・Fには、ファストトラベルが存在する。異世界を散歩するのが目的のゲームだが、忙しい人もいるためだ。
目的地に足跡を残せば、街とダンジョンを行き来できる。
「よく考えたら、もうこんな時間なのね」
ベルさんが、時計を確認した。一二時を過ぎている。
「わかったわ。じゃあ一時間後に、ギルドの入口で落ち合いましょ」
「はい。すいません」
ボクは一旦、ベルさんと別れた。
ベルさんが一瞬で、姿を消す。
すぐさま草むらに隠れて、ビビに語りかける。
「ちょっといいか、ビビ?」
『どうしたんニャー?』
「本当に、言葉を話せるんだな?」
『そうみたいニャー。ゲームの中だけみたいだけどニャ』
どうやら、本当にビビがしゃべっているようだ。
「どうして話せるようになったか、わかる?」
『可能性があるとしたら、バグ取りニャ』
やっぱり、あのバグが原因か。
「それでも、飼い主とペットは定型句でしか会話ができないはずだ」
ここまで流暢に話せるようになるとは、到底思えないけど。
『ニャアもわからないニャ。でも、ケントご主人と話せるのはうれしいニャ』
「そうか。じゃあ、ビビ。お腹が空いてないか?」
昼食を口実にアウトしたから、お腹になにか入れておいたほうがいいよね。
『たくさん働いたから、お昼ごはんがほしいニャ』
「わかった。お昼にしようか」
ボクは一度、ゲームから落ちた。
「レトルトカレーでいいか」
ちょっと色々ありすぎて、頭が追いつかない。料理を作る意欲が、わかなかった。
パウチを茹でつつ、ビビの分の缶を開ける。
「サバだよー」
「にゃあ」
ビビは、もしゃもしゃと食べ始めた。ときどき水とカリカリを口に入れて、またもしゃもしゃ。
「ビビ、ビビ~」
話しかけても、食べるのに夢中である。
ああ、やっぱりリアルだとしゃべれないみたい。
ペットと、言葉の意思疎通ができるゲームか。
でも、ボクとビビのケースだけかもしれない。
ちゃんとビビと話し合ってみよう。
食後、ゲームにインする。
『ケントご主人、ごちそうさまニャー』
「いえいえ。欲しいものがあったら、リクエストしてね」
『うれしいニャー』
ビビは、これまで食べた中でおいしかったメーカーを、教えてくれた。
「ところでさ、ビビ。キャラメイクのときも、自分で調節したよね?」
本来は飼い主が、ペットのビジュアルや能力値振り分けを行うはず。
『ニャアは、自分ができそうなステータスで遊ぼうと思ったニャ』
「他のペットたちも、同じ考えなのかな?」
『ニャアはケントご主人が遊んでいるのを見て、自分もやってみたいって思っただけニャ』
「ああ、ビビが選んだキャラって、本来はボクのプレイスタイルだもんね」
ボクはMMOをプレイする際に、魔法火力職を好んで選ぶ。
魔法使いだけど前衛に立って、立ち回りながら魔法を撃ち出す戦闘スタイルなのだ。
よく考えると、ビビも同じような戦い方をしていたな。
『他のペットたちは、よくわからないニャ。ゲーム好きのご主人の元にいたら、ゲームできるかもしれないニャ。でも、ゲームについていけないペットもいそうだニャー』
なるほど。ボクがゲーム好きだから、ビビも感覚的に操作がわかったのかもしれない。他のペットだと、事情がわからないや。
「そういえばビビは、ボクがゲームで遊んでいるときも、いつもボクの手の甲の上に乗ってきたもんね」
『あれは手が動いていると、マッサージしてもらってるみたいで気持ちがいいからニャー』
悪びれることもなく、ビビは語りだす。
「でもペットにも意思があるってわかっただけでも、財産だよ」
『わかってもらえて、ニャアもうれしいニャー』
「これからも、仲良くしよう、ビビ」
『もらってくれて、ありがとうニャー』
ボクは、ビビを軽く抱きしめた。
「ボクもだよ。いっしょにいてくれて、ありがとう」
『ただお風呂の頻度は、ちょっと減らしてほしいんだニャー』
「わかったわかったアハハ」
ボクたちが談笑していると、ギルド前にベルさんが現れる。
「あら、仲良しさんたち」
「どうも。ベルさん。こんにちは」
ベルさんの方も、ナインくんと手を繋いでいた。あちらも、仲がよさそう。
「ギルドに報告しに行きましょ」
冒険者ギルドに戻ると、ギルドの受付さんが、あいさつに来た。
「まずはお礼から。ご協力、ありがとうございます」
すぐ「こちらへ」と、奥に通される。
おっ? 物々しい雰囲気だぞ。
「ギルドマスターが、お二方にお会いしたいと」
「ギルマスが? そこまでなんだ」
「はい。非常事態でしたので」
ギルドの応接室に通されて、ソファに座るよう言われた。
黒い革製のソファに、着席する。
四人座っているのに、ソファには余裕があった。
正面に、ゴツい体型の狼男が座る。レザー系の軍服に、身を包んでいた。
「私は、ギルドマスターのヴォルフだ。今回のバグの件、世話になったな」
口調はアレだけど、感謝はしてくれているみたい。
おそらくロールプレイなんだろうけど、堂に入ってるな。
「あれ? 獣人キャラって、プレイヤーは選べないはずでは?」
ボクはヴォルフさんに、疑問を投げかけた。
このゲームはペットキャラと混同してややこしいため、人間は獣人キャラを選択できない。
だが、ヴォルフさんはれっきとした人間プレイヤーで、ペットが選ぶはずの獣人だ。
「私は運営だからな」
運営スタッフ本人が、ギルドのキャラを担当しているらしい。
ボクは、先を行くベルさんに声をかける。
「どうしたの、ケント?」
ベルさんが、振り返った。
「街へ戻るのは、ファストトラベルにしませんか? ビビ、お昼をねだってきたので」
P・R・Fには、ファストトラベルが存在する。異世界を散歩するのが目的のゲームだが、忙しい人もいるためだ。
目的地に足跡を残せば、街とダンジョンを行き来できる。
「よく考えたら、もうこんな時間なのね」
ベルさんが、時計を確認した。一二時を過ぎている。
「わかったわ。じゃあ一時間後に、ギルドの入口で落ち合いましょ」
「はい。すいません」
ボクは一旦、ベルさんと別れた。
ベルさんが一瞬で、姿を消す。
すぐさま草むらに隠れて、ビビに語りかける。
「ちょっといいか、ビビ?」
『どうしたんニャー?』
「本当に、言葉を話せるんだな?」
『そうみたいニャー。ゲームの中だけみたいだけどニャ』
どうやら、本当にビビがしゃべっているようだ。
「どうして話せるようになったか、わかる?」
『可能性があるとしたら、バグ取りニャ』
やっぱり、あのバグが原因か。
「それでも、飼い主とペットは定型句でしか会話ができないはずだ」
ここまで流暢に話せるようになるとは、到底思えないけど。
『ニャアもわからないニャ。でも、ケントご主人と話せるのはうれしいニャ』
「そうか。じゃあ、ビビ。お腹が空いてないか?」
昼食を口実にアウトしたから、お腹になにか入れておいたほうがいいよね。
『たくさん働いたから、お昼ごはんがほしいニャ』
「わかった。お昼にしようか」
ボクは一度、ゲームから落ちた。
「レトルトカレーでいいか」
ちょっと色々ありすぎて、頭が追いつかない。料理を作る意欲が、わかなかった。
パウチを茹でつつ、ビビの分の缶を開ける。
「サバだよー」
「にゃあ」
ビビは、もしゃもしゃと食べ始めた。ときどき水とカリカリを口に入れて、またもしゃもしゃ。
「ビビ、ビビ~」
話しかけても、食べるのに夢中である。
ああ、やっぱりリアルだとしゃべれないみたい。
ペットと、言葉の意思疎通ができるゲームか。
でも、ボクとビビのケースだけかもしれない。
ちゃんとビビと話し合ってみよう。
食後、ゲームにインする。
『ケントご主人、ごちそうさまニャー』
「いえいえ。欲しいものがあったら、リクエストしてね」
『うれしいニャー』
ビビは、これまで食べた中でおいしかったメーカーを、教えてくれた。
「ところでさ、ビビ。キャラメイクのときも、自分で調節したよね?」
本来は飼い主が、ペットのビジュアルや能力値振り分けを行うはず。
『ニャアは、自分ができそうなステータスで遊ぼうと思ったニャ』
「他のペットたちも、同じ考えなのかな?」
『ニャアはケントご主人が遊んでいるのを見て、自分もやってみたいって思っただけニャ』
「ああ、ビビが選んだキャラって、本来はボクのプレイスタイルだもんね」
ボクはMMOをプレイする際に、魔法火力職を好んで選ぶ。
魔法使いだけど前衛に立って、立ち回りながら魔法を撃ち出す戦闘スタイルなのだ。
よく考えると、ビビも同じような戦い方をしていたな。
『他のペットたちは、よくわからないニャ。ゲーム好きのご主人の元にいたら、ゲームできるかもしれないニャ。でも、ゲームについていけないペットもいそうだニャー』
なるほど。ボクがゲーム好きだから、ビビも感覚的に操作がわかったのかもしれない。他のペットだと、事情がわからないや。
「そういえばビビは、ボクがゲームで遊んでいるときも、いつもボクの手の甲の上に乗ってきたもんね」
『あれは手が動いていると、マッサージしてもらってるみたいで気持ちがいいからニャー』
悪びれることもなく、ビビは語りだす。
「でもペットにも意思があるってわかっただけでも、財産だよ」
『わかってもらえて、ニャアもうれしいニャー』
「これからも、仲良くしよう、ビビ」
『もらってくれて、ありがとうニャー』
ボクは、ビビを軽く抱きしめた。
「ボクもだよ。いっしょにいてくれて、ありがとう」
『ただお風呂の頻度は、ちょっと減らしてほしいんだニャー』
「わかったわかったアハハ」
ボクたちが談笑していると、ギルド前にベルさんが現れる。
「あら、仲良しさんたち」
「どうも。ベルさん。こんにちは」
ベルさんの方も、ナインくんと手を繋いでいた。あちらも、仲がよさそう。
「ギルドに報告しに行きましょ」
冒険者ギルドに戻ると、ギルドの受付さんが、あいさつに来た。
「まずはお礼から。ご協力、ありがとうございます」
すぐ「こちらへ」と、奥に通される。
おっ? 物々しい雰囲気だぞ。
「ギルドマスターが、お二方にお会いしたいと」
「ギルマスが? そこまでなんだ」
「はい。非常事態でしたので」
ギルドの応接室に通されて、ソファに座るよう言われた。
黒い革製のソファに、着席する。
四人座っているのに、ソファには余裕があった。
正面に、ゴツい体型の狼男が座る。レザー系の軍服に、身を包んでいた。
「私は、ギルドマスターのヴォルフだ。今回のバグの件、世話になったな」
口調はアレだけど、感謝はしてくれているみたい。
おそらくロールプレイなんだろうけど、堂に入ってるな。
「あれ? 獣人キャラって、プレイヤーは選べないはずでは?」
ボクはヴォルフさんに、疑問を投げかけた。
このゲームはペットキャラと混同してややこしいため、人間は獣人キャラを選択できない。
だが、ヴォルフさんはれっきとした人間プレイヤーで、ペットが選ぶはずの獣人だ。
「私は運営だからな」
運営スタッフ本人が、ギルドのキャラを担当しているらしい。
10
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた!
どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。
そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?!
いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?!
会社員男性と、異世界獣人のお話。
※6話で完結します。さくっと読めます。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。


日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる