最強のVRMMOプレイヤーは、ウチの飼い猫でした ~ボクだけペットの言葉がわかる~

椎名 富比路

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第一章 飼い猫とVRMMOをしていたら、うちのコがしゃべりだした

第4話 ビビが、しゃべった!?

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「あの、ベルさん。すいません」

 ボクは、先を行くベルさんに声をかける。
 
「どうしたの、ケント?」

 ベルさんが、振り返った。

「街へ戻るのは、ファストトラベルにしませんか? ビビ、お昼をねだってきたので」

 PペットRランFファクトリーには、ファストトラベルが存在する。異世界を散歩するのが目的のゲームだが、忙しい人もいるためだ。
 目的地に足跡を残せば、街とダンジョンを行き来できる。

「よく考えたら、もうこんな時間なのね」

 ベルさんが、時計を確認した。一二時を過ぎている。
 
「わかったわ。じゃあ一時間後に、ギルドの入口で落ち合いましょ」

「はい。すいません」

 ボクは一旦、ベルさんと別れた。

 ベルさんが一瞬で、姿を消す。

 すぐさま草むらに隠れて、ビビに語りかける。
 
「ちょっといいか、ビビ?」

『どうしたんニャー?』

「本当に、言葉を話せるんだな?」
 
『そうみたいニャー。ゲームの中だけみたいだけどニャ』

 どうやら、本当にビビがしゃべっているようだ。

「どうして話せるようになったか、わかる?」

『可能性があるとしたら、バグ取りニャ』

 やっぱり、あのバグが原因か。

「それでも、飼い主とペットは定型句でしか会話ができないはずだ」

 ここまで流暢に話せるようになるとは、到底思えないけど。

『ニャアもわからないニャ。でも、ケントご主人と話せるのはうれしいニャ』

「そうか。じゃあ、ビビ。お腹が空いてないか?」

 昼食を口実にアウトしたから、お腹になにか入れておいたほうがいいよね。
 
『たくさん働いたから、お昼ごはんがほしいニャ』

「わかった。お昼にしようか」

 ボクは一度、ゲームから落ちた。

「レトルトカレーでいいか」

 ちょっと色々ありすぎて、頭が追いつかない。料理を作る意欲が、わかなかった。

 パウチを茹でつつ、ビビの分の缶を開ける。

「サバだよー」

「にゃあ」

 ビビは、もしゃもしゃと食べ始めた。ときどき水とカリカリを口に入れて、またもしゃもしゃ。

「ビビ、ビビ~」

 話しかけても、食べるのに夢中である。

 ああ、やっぱりリアルだとしゃべれないみたい。

 ペットと、言葉の意思疎通ができるゲームか。
 
 でも、ボクとビビのケースだけかもしれない。
 ちゃんとビビと話し合ってみよう。

 食後、ゲームにインする。

『ケントご主人、ごちそうさまニャー』

「いえいえ。欲しいものがあったら、リクエストしてね」

『うれしいニャー』

 ビビは、これまで食べた中でおいしかったメーカーを、教えてくれた。

「ところでさ、ビビ。キャラメイクのときも、自分で調節したよね?」

 本来は飼い主が、ペットのビジュアルや能力値振り分けを行うはず。 
 
『ニャアは、自分ができそうなステータスで遊ぼうと思ったニャ』

「他のペットたちも、同じ考えなのかな?」

『ニャアはケントご主人が遊んでいるのを見て、自分もやってみたいって思っただけニャ』

「ああ、ビビが選んだキャラって、本来はボクのプレイスタイルだもんね」

 ボクはMMOをプレイする際に、魔法火力職を好んで選ぶ。
 魔法使いだけど前衛に立って、立ち回りながら魔法を撃ち出す戦闘スタイルなのだ。

 よく考えると、ビビも同じような戦い方をしていたな。

『他のペットたちは、よくわからないニャ。ゲーム好きのご主人の元にいたら、ゲームできるかもしれないニャ。でも、ゲームについていけないペットもいそうだニャー』

 なるほど。ボクがゲーム好きだから、ビビも感覚的に操作がわかったのかもしれない。他のペットだと、事情がわからないや。

「そういえばビビは、ボクがゲームで遊んでいるときも、いつもボクの手の甲の上に乗ってきたもんね」
 
『あれは手が動いていると、マッサージしてもらってるみたいで気持ちがいいからニャー』

 悪びれることもなく、ビビは語りだす。

「でもペットにも意思があるってわかっただけでも、財産だよ」

『わかってもらえて、ニャアもうれしいニャー』

「これからも、仲良くしよう、ビビ」

『もらってくれて、ありがとうニャー』

 ボクは、ビビを軽く抱きしめた。

「ボクもだよ。いっしょにいてくれて、ありがとう」

『ただお風呂の頻度は、ちょっと減らしてほしいんだニャー』

「わかったわかったアハハ」

 ボクたちが談笑していると、ギルド前にベルさんが現れる。

「あら、仲良しさんたち」

「どうも。ベルさん。こんにちは」

 ベルさんの方も、ナインくんと手を繋いでいた。あちらも、仲がよさそう。

「ギルドに報告しに行きましょ」
 

 冒険者ギルドに戻ると、ギルドの受付さんが、あいさつに来た。

「まずはお礼から。ご協力、ありがとうございます」

 すぐ「こちらへ」と、奥に通される。

 おっ? 物々しい雰囲気だぞ。

「ギルドマスターが、お二方にお会いしたいと」

「ギルマスが? そこまでなんだ」

「はい。非常事態でしたので」

 ギルドの応接室に通されて、ソファに座るよう言われた。

 黒い革製のソファに、着席する。

 四人座っているのに、ソファには余裕があった。
 
 正面に、ゴツい体型の狼男が座る。レザー系の軍服に、身を包んでいた。

「私は、ギルドマスターのヴォルフだ。今回のバグの件、世話になったな」

 口調はアレだけど、感謝はしてくれているみたい。
 
 おそらくロールプレイなんだろうけど、堂に入ってるな。

「あれ? 獣人キャラって、プレイヤーは選べないはずでは?」

 ボクはヴォルフさんに、疑問を投げかけた。

 このゲームはペットキャラと混同してややこしいため、人間は獣人キャラを選択できない。

 だが、ヴォルフさんはれっきとした人間プレイヤーで、ペットが選ぶはずの獣人だ。

「私は運営だからな」
 
 運営スタッフ本人が、ギルドのキャラを担当しているらしい。
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