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第五章 ラストバトル! さよならJK!?

DTとJK、チキュウへ

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 ロバートは、草むらで目を覚ました。

 草原だというのに、のどかすぎる。魔物どころか、生き物の息吹さえ感じない。

 いや、ハッハッハという息がやたら聞こえてきた。

「うわあ!」

 慌てて、飛び起きる。

 現れたのは、犬だ。
 かなり大きい。
 野生だろうかと思ったが、違う。
 リード付きの首輪をつけている。

「あっ、ごめんなさい。ほら行くよ!」

 大型犬を、小さい子が連れて行く。

 彼女が、飼い主だろう。

 それにしても、大きな犬があんな小さい子どもの言うことを聞くとは。
 召喚獣でもなければ、あそこまで懐かないのでは?

 ここが、チキュウという世界か。
 寝ていても、誰からも襲われないとは。どこまで平和な世界なのだろう?

 半身を起こしたロバートが、辺りを見渡す。

「ここが、チキュウか」

 着ているのは、旅人の衣装だ。ミスリル製のヨロイも消えていた。
 炭化した金属の破片が、ロバートの周りに散らばっている。服の周りに、ススがこびりついていた。

「ご、ごおおお!」

 ロバートのすぐそばで、手のひらサイズにまで縮んだセルベールがムクリと起き上がる。

「な!?」

 まだ、生きていたのか。たしか魔族は、身体を小さくすればチキュウにも潜伏できるのだった。

「しまった!」

 ヨロイの跡を確認する。
 おそらく、セルベールの破片が、まだヨロイに付着していたのだろう。
 それを確かめずに、セルベールの侵入を許したというのか。

「お、おのれロバート・デューイ、そしてこのチキュウ! はがああああ!」

 セルベールの身体が、炎に包まれた。

「そうか、太陽! この太陽が、我々の魔力を破壊してしまうのですかぁ! ぬかりました!」

 焼けただれていく顔の皮膚を持ち上げるが、間に合わない。セルベールの身体は、段々と焼け落ちていく。

「無念。チキュウを支配できず、元の世界にも!」

 哀れだ。しかし、これまで行った彼の所業を考えると、同情する気になれない。

「そのまま朽ち果てていけ。セルベール」
「ふっはは! それはお前もですよ、ロバート・デューイ! あなたは、この世界で生きていけますかな? フハハハ!」
「生きるさ。ボクは、お前とは違う」
「ま、負け惜しみを。先に地獄で待っていますよ! ぬおおおおおおおお!」

 とうとう、炭さえ残らずセルベールは消え去った。 

 本当に、魔法はなくなってしまったのだ。
 これからは、ただのロバート・デューイとして生きていかなければならない。
 しかし、本当に大丈夫だろうか。
 魔力もなくて、ヒナマルをどうやって守ってあげれば。


「そうだ、ヒナマル!」


 ヒナマルがいない! 

「ん?」

 ヒナマルは、手に荷物を持って茂みから現れた。

「はい。どうぞ」

 缶に入ったなにかを、ヒナマルがロバートに渡す。
 どうやら、ドリンク類のようだが。開け方を教わり、自分も飲んでみる。

 甘い。

 これは、ポーションか? そのたぐいのような味がする。しかし、洗練されていた。

「飲料水ね。ノドが渇いたから買ってきた。でさあ、誰かと話してた?」
「いや。何も」

 セルベールのことなんぞ、ヒナマルに話したって仕方がない。もう済んだことだ。
 なにより、魔族はこのチキュウでは生きられない。
 その事実がわかっただけでOKだ。

 しゃがみこんだヒナマルの前に、ロバートは姿勢を正す。

「ヒナマル、この世界のこと、もっと教えてくれ。お金を手に入れる手段だって必要だ。だから、キミが学校を出るまで、キミを守るすべを考えようと思う。自分なりに。だから」

「うん」

「待っていてくれるか?」

「わかった。卒業まで待っていてね」

 ロバートは、ヒナマルと抱き合った。

「ヒナマル、ずっと言えなかったけど」

「はい」

 たった数文字伝えるだけ。なのに、こんなにも緊張するものなのか。


「……好きです」


 やっと、言えた。本心を。

「あたしも好きだよ。ありがと、ロバちゃん」
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