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第五章 ラストバトル! さよならJK!?

わがままJK

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 ドラゴンゾンビは、セルベールを食った後に消滅していった。
 どす黒い魔法陣も、もうすぐ消えそうになっている。

 それにしても、本当にヒナマルはすごい。
 パーシヴァルたちを改心させてしまうとは。
 最悪、血みどろの決戦も覚悟していたのに。

 レッドドラゴンが、山の方へ帰っていった。

「バイバイ、カニカマ!」

 ヒナマルが、去りゆくレッドドラゴンにいつまでも手をふる。

「ロバート、ありがとう。ヒナマルも、世話になった」
「いいって。後藤先生は帰らないんだね?」

 パーシヴァルは、チキュウでは後藤先生と呼ばれていた。

「ああ。ここのほうが落ち着くよ。強さも戻るからな」
「あーあ。後藤先生って、授業は厳しいけど生徒に対して理不尽にキレないからよかったんだけどな」

 ヒナマルは、残念そうだ。 

「パーシヴァル、これからどうするの?」
「私たちは、もうこの世界にはいられない。魔界でひっそりと暮らすさ」
「王位は継がないんだな?」

 彼は、この国の第一王子だ。パーシヴァルが帰ってきたとあれば、彼が王位を継ぐのが普通である。

「魔王になるって手もあるんだぞ?」

 彼が魔王になりさえすれば、人間族に対する魔族の味方も変わる可能性があるが。

「興味などない。魔族と繋がった上に、ニホンの平和な水に慣れきってしまった私に、世界の統治などムリだよ。そういうのは、ジークに任せるさ」
「兄上」
「達者で暮らせよ。ジーク。国のことを、何もかも押し付けてすまない」

 パーシヴァルが頭を下げると、ジーク王子は首を振った。

「押し付けだなんて。兄上も、お元気で。兄上と同じ考えの魔族たちには、便宜を図ります」
「すまない。助かる」

 ジーク王子の働きかけがあるなら、きっと魔族と王族との確執は沈静化するだろう。

 一方、ヒナマルも、ミュリエルと抱き合っていた。

「ヒナマル、ありがとうね」

 ハンカチで、ヒナマルがミュリエルの涙を拭う。

「いいって。ユミもこっちで元気でね」
「手紙もメールも届かないから、どうやってるかは、信用できる使い魔を送るね」
「ありがと。あたしもお返事するから!」

 パーシヴァルが、「そろそろ」とミュリエルをヒナマルから離す。
 魔法陣の中央へ立ち、転送魔法を起動させた。

「またね、ヒナマル!」
「今までありがとう、ユミ! 元気でね!」
「あんたも、ロバちゃんだっけ? 仲良くしてね!」
「うん。また!」
「またね!」

 ミュリエルとパーシヴァルが、魔法陣の光となって消える。 

「さあ、次はヒナマルの番だ」

 上空の街を指差して、ロバートは告げた。

 ゲートは、もう閉じようとしている。

 時間がない。

「今なら、まだ間に合う。チキュウへ帰すから、キミはもう行くんだ」
「やだ」

 ヒナマルが、首を振った。

「帰らない」
「ダメだ」
「やだ」
「帰るんだ」
「やだぁ!」
「困らせないでよヒナマルッ!」
「やだったら、やだあ!」

 わあ、と泣き出して、ヒナマルがロバートを抱きしめる。

 ロバートも、ヒナマルの背にそっと手を添えた。

「ボクだって、辛い。でも、キミには帰る場所があるんだ。ご両親のためにも、キミは帰るべきだ」

 元はと言えば、ヒナマルがここに来たのは自分が魔法で呼び出してしまったせいだ。責任を取らねばならない。

「だったら、ロバちゃんも来てよおお!」
「そんな。ボクは……」

 ロバートは、振り返る。

 そこには、ロバートやヒナマルの行く末を見守る、仲間たちの視線が集まっていた。

「伝令だ。ロバート」

 ジーク王子が、ロバートの前に立つ。

「なんでしょう、王子?」
「ロバート・デューイ、勇者ヒナマルよ。この度の働き、大義だった。国王に代わって例を言います」
「いえ、そんな」

 ロバートは首を振る。

「そこで、キミたちにふさわしい褒美を取らせようと思う」
「褒美、とは?」



「キミは、国外追放だ」
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