上 下
17 / 47
第二章 DT、JKと宿屋で二人きりに!?

DT・JKと、パリピ魔族

しおりを挟む
 振り返ると、槍斧の先端がロバートめがけて襲いかかってきている。赤黒く輝く刃が、今にもロバートを貫こうと迫ってきた。

「しゃらくさい!」
 避けているヒマはない。裏拳で叩き落とす。ジイン、と手の甲が痛む。

「いったぁ」
 ロバートは、手をブンブンと振った。ミスリル製ヨロイ越しとはいえ、痛いモノは痛い。 

「さすが伝説の勇者、ロバート・デューイ殿。見事な回避能力ですなぁ。ケケケ」

 槍斧で武装した魔族が、天井へ張り付く。逆さ吊りのような体勢で、カエルのようにしゃがみ込んだ。ジャラジャラした金細工で武装し、洗っていないドレッドヘアをたなびかせている。顔を鋼鉄のマスクで覆い、肩の通気口から白い息を常時吐き出していた。この魔物は、酸素を嫌うタイプだから。

「お前は、【セルベール】!」
 どうして上位の魔族が、こんなところに!

「確かに、ボクが倒したはず」

「ワタシは不死身なのです。ケケケ」
 セルベールが荒く呼吸をしながら、槍斧を肩に担ぐ。

「このオッサン、強いの?」
「コイツはセルベール。またの名を【血染めの道化師】という」

 かつて、魔王の側近の一人だったモンスターだ。
 彼に倒された歴戦の戦士は、数え切れない。

「鬼強じゃん。なんかチャラいパリピみたいなのに!」

 拍子抜けの単語が出てきて、ロバートは肩を落とす。

「ねえヒナマル、パリピって何?」
「だってグラサンしてマスクしてさぁ、自撮り棒まで持って。ダンスパーティとかにいそうじゃない? クラブとかフェスとか!」
「まさか!」

 仮面舞踏会ならまだしも、こんなふざけた格好をしたモンスターが、社交界ダンスパーティにいてたまるか。

「なんとも、不本意なあだ名付けられたようですが!」
 セルベールは、また白いガスを噴射した。

「まあ、強いでしょうな。この辺りの邪魔者は、排除させていただきましたし。ケケケ」

 確かに。セルベールの周りには、冒険者たちの亡きがらが。

「彼らの血を使って、魔王サマ復活の儀式を行おうとしましたのに」

「貴様!」
 天井にいるセルベールに向けて、ロバートは火炎弾を放つ。

 しかし、セルベールは回避に全力を注いでいた。
 戦う意思はないらしい。

「ですが、作戦が失敗した以上、長居は無用。まさか、あれだけの軍勢が全滅してしまうとは」
 シュコーと、セルベールはまたガスを放つ。

「おっさん、さっきから息苦しいの?」
「私は、地上世界の空気が不快なのです。なのでガスマスクが欠かせませんケケケ」

 わずかな空気でも身体に影響が及ぶ。
 よって、地下でしか生きられない。

「じゃあ今の状況は、ヤバいよね」

「お嬢さん、どういう意味ですかな……なななあ!?」

 天井が崩れ、穴が開いた。
 酸素が、一気に洞窟へ流れ込む。

「これはたまりません。退散としますか」
 ガスを大量に吐き出し、セルベールが白い煙に消えていく。 

「これは、始まりに過ぎません。いずれまたまみえることになるでしょう、ケケケ……」

「待て!」
 火炎弾を放とうとした。

『いかん、ロバート!』
 しかし、ミニムに止められる。

「くっ」
 ロバートは、火炎攻撃をあきらめた。代わりに氷の矢を放つ。しかし、一発も当たらない。

 煙が晴れる。セルベールがいた場所には、氷の矢が突き刺さっているだけ。逃げ足だけは速いヤツだ。

「なんでファイアーボールを撃たなかったの? 得意技なんでしょ?」
「撃てなかった。さっきのガスは、火気に引火するタイプだ。吸い込んでわかった」

 火炎弾を放てば、ヒナマルもろとも火ダルマになっていた。

「とにかく引き返そう。レックスに報告しないと」

 ロバートはヒナマルを連れて、空いた穴からダンジョンを出る。
 パクパカを口笛で呼び戻して、乗り込んだ。

「あたしもやろっと! ピーッ」

 ヒナマルがロバートより鮮やかな音が鳴る。

 パクパカが猛スピードで、ヒナマルのもとへ走ってきた。

「ハハハ! ロバート・デューイ! 勝負はおあずけです」

 ダンジョンから近い大木の枝に、セルベールが乗っている。いつの間に移動したのか。


「パクパカ、ジャンプ、でもってキック!」

 ヒナマルが号令をかけると、パクパカが飛び上がる。

「だがいずれ決ちゃ――」
 
 グシャア!

 ヒナマルの指示で、パクパカがセルベールのいる木の枝まで飛び、踏み潰したではないか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

異世界をスキルブックと共に生きていく

大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。

処理中です...