DTをこじらせたおっさん魔道士、地球からJKを召喚してしまう

椎名 富比路

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第二章 DT、JKと宿屋で二人きりに!?

DT魔道士とJK、ダンジョン探索へ

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 ダンジョンは、廃砦の地下だ。ステートルの街からパクパカで出発して、およそ一時間走ったことになる。歩きだったら、半日はかかる距離だろう。

 廃砦は、見た目からして特別難しいダンジョンという気配はしない。しかし、凄まじい殺気が漲っている。こんな所に、新たな地下洞窟を作るとは。

「本当なら【初心者の館】で、ちょっとキミの強さを確認したかったんだけどね」

 もっと敵の弱いダンジョンで、ヒナマルの実力を試すことだってできた。
 初心者向けの洞窟なら、喜んで連れて行けたのに。

「いいって。緊急事態だもん。ついて行くよ」
「ありがとう。じゃあ、入り口の前でパクパカから降りてくれるかな?」

 ダンジョンの側にある森へ、パクパカを避難させた。魔物たちは街への襲撃に夢中で、ここまで見ていない。パクパカに注意を払う余裕がないのだ。

「パクパカちゃんたち、大丈夫かな?」
「心配ない。襲われても、オークくらいなら返り討ちにするから」

 実際、ちょっかいをかけてきたオークが、パクパカキックで星になった。

「そんなに強いんだ。頼もしいね」
「でも、ダンジョンまでは入れない。身体が大きいからね。狭いところに対するストレスもすごいんだ」

 よって、森へ放す必要がある。口笛を吹けば戻ってくるから、安心だ。

「急ごう。第二波が来そうだ」
「そうだね。この先にボスがいるみたい」

 アプリを起動させて、ダンジョンに入った。

 マップには、デフォルメされたミノタウロスが斧を振り回している。

「ギイ、ギイィ!」
 洞窟内では、ゴブリンがまだ群れを成していた。

 この集団を、外へ放すわけにはいかない。

「迎え撃つよ!」

「うん」
 ヒナマルも、刀を抜く。

 この程度の数なら、魔法を使うまでもない。殴って撃退する。 

 剣を振り回して、ヒナマルもゴブリンを追い払っていた。

 その背後に、クロスボウを構えるゴブリンが。引き金を引き、ゴブリンが矢を放つ。

「それ」
 矢がヒナマルを貫く直前、ロバートは風の魔法を発動させた。ヒナマルの背中に、石ころ程度の小さな竜巻を起こす。

 竜巻に巻き込まれて、矢が方向を変えた。クロスボウを撃ったゴブリンを襲う。

 次の矢を装填している間に、ゴブリンは眉間を貫かれた。

「ありがと、ロバちゃん!」
「いえいえ」

 正直なところ、ヒナマルも襲撃に気づいていた風に見える。
 一瞬、刀で矢を叩き落とそうする仕草をしていた。

 ミニムも、矢のことを教えていない。
 ヒナマルの勘を試したのだろう。曲者め。

「案外、地味だね。さっきみたいに、派手な魔法でドーン! ってやらないんだね?」
「あれは、ちゃんと理由があるんだ」

 実は、あそこまでしなくてもよかった。 
 大きな煙と物音が必要だったのだ。

「なんだろ?」
「外に出てみたら、わかるよ」


 地下二階まで辿り着き、いよいよ最奥部へ。比較的、初心者向けのダンジョンだった。それをアジト代わりにしていたらしい。

 天井が高い空洞に出た。怪物用の玉座がある。

 正面に、ミノタウロスが座っている。巨大な斧を携え、重い腰を上げた。身体が大きい。スネだけでも、ロバートの背丈ほどある。

「こいつがボス?」

「そうかも!」
 ヒナマルが、スマホを確認した。

 三メートルはあろう巨体が、声を上げながら玉座から立ち上がる。壮大さが、オークの比ではない。

 怪物が、大きく胸を反らした。斧が持ち上がる。

「来るよ!」
 ロバートが、ヒナマルを抱き上げて跳躍した。
 
 ミノタウロスが、斧を横方向へなぎ払う。

 戦斧が、岩や柱を叩き壊す。

 あの場にいたら、二人とも両断されていただろう。

「おおう、すっごい」
「感心している場合じゃないよ!」
「いや、ヨロイ越しでもロバちゃんの体温って感じるんだって」
「油断しないでーっ!」

 返す刀で、ミノタウロスは上空にいるロバートに斬りかかった。

「大型魔獣が、ボクを止められるモノか!」

 足の裏に、ロバートは氷の魔法をかける。

 襲いかかる斧の表面に着地した。

 スケートのように斧を滑りながら、ミノタウロスの懐へ。

「ヒナマル、トドメを!」
 ロバートは、ヒナマルから手を放す。

「オッケーッ! うりゃああ!」
 ヒナマルが、ミノタウロスの胴へ斬りかかった。

 対するミノタウロスも、エルボーで対抗する。

 ヒナマルはスピードこそあるが、あのパワーがぶつかったらひとたまりもない。

「おとなしく経験値になれ!」

 風の魔法を起こし、ロバートがミノタウロスとヒナマルへぶつけた。

 ヒナマルへは、加速のために。
 ミノタウロスへは、クッションのためだ。

 風が障壁となって、ミノタウロスのエルボーがそれた。

 そのスキに、ヒナマルが刀を振り下ろす。

 ヒナマルの一撃が、ミノタウロスの胴を両断した。

 イビキのような悲鳴を上げて、ミノタウロスがズシンと地面に沈む。
 息はしているが、もう二度と立ち上がれない。
 
 とはいえ念のため、ロバートがモンスターの心臓を止めた。

「これで終わった?」

 大騒動だった割には、やけにあっけない。

 そもそも、ミノタウロスのような脳筋に、こんな大規模作戦が思いつくだろうか?

 嫌な予感がする。

 そう思っていると、ヒナマルのスマホが聞いたこともないアラームを流す。 

「ヤバい、もっとデカイのがいるよ!」
「どこ?」

「ロバちゃんの後ろ!」
 ヒナマルが、ロバートの後ろを指さした。
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