DTをこじらせたおっさん魔道士、地球からJKを召喚してしまう

椎名 富比路

文字の大きさ
上 下
13 / 47
第二章 DT、JKと宿屋で二人きりに!?

JKとコロッケ

しおりを挟む
「朝ごはん、どうしよっか?」
「露天が出ているから、そこで買おう」

 いつも朝食を買いに行く店へ、ロバートは向かっている。
 きっとヒナマルも気に入ってもらえるはず。

「そうだね……うわ! コロッケじゃん!」
 カリカリと音が鳴る露天に、ヒナマルが食いついた。

「コロッケパンは、ここの人気店なんだ」
「わかる! 匂いでもうおいしいって思えるもん!」

 カラッと揚がるポテトコロッケに、ヒナマルの目は釘付けになっている。

「オバチャン、コロッケパン一つ!」

「あいよ」と、女店主が長いパンを切った。

「実家がお寿司屋さんなのに、コロッケ好きなの?」
「大好き! あたし昔、生のお魚が食べられなくてさ」

 子どもなら、仕方ないかも。
 生魚は、案外珍味の部類に入るのだ。

「それでママが作ってくれたのがコロッケだったんだー。カニコロッケ!」
「カニ……ミズール・クラブのことかな?」

 指を二本「チョキ」の形にして、ロバートはヒナマルに尋ねてみる。

「そうそう! そこからパパも、コロッケなら娘も食べるってわかって回転寿司のメニューにカニコロッケと牛肉のコロッケを追加したの。そしたら大繁盛! あたしも好きになっちゃった!」

 揚がったコロッケを、店員が白パンの切れ目に差し込んだ。
 黒いソースと辛子をつけて、ギュッと挟み込む。
 このソースは、フルーツを潰してケチャップと混ぜたものである。

「はいどうぞ! 銅貨三枚!」

「ありがとう、店主」
 ロバートが代金を払い、ヒナマルにコロッケパンを渡した。

「わーい! いただきまーす」
 大きく口を開けて、豪快に口へ含む。

「味が濃いだろ?」
 パンに染みた濃厚なソースを、ロバートも堪能する。
 この絶妙な塩加減が、なんともいえないのだ。

「んふんふ、サイコー」
 目一杯頬張りながら、ヒナマルは顔を緩ませる。

「ちょっと、付いてる」
 ロバートが、ヒナマルの頬についたソースをハンカチで拭き取った。

「えへへ。ありがと」
 ヒナマルの頬が、やや赤みがかる。

「あたし当分、ここで働こうかな?」
「それがいいかもしれないね」

 たしかに、ヒナマルは副業スキルが随分と高い。
 商業と組み合わせれば、ここでも十分暮らしていけるだろう。

 ヒナマルと屋台でコロッケを売る姿を、思い浮かべた。

「ん? どうしたん?」
「いや、別に」

 ヒナマルの口元が、ニヤニヤとつり上がる。
「もしかして、想像しちゃった?」

「バ、バカ言わないでって!」
「顔に書いてる」

「からかわないで!」
 ロバートは、視線をそらす。

 大好きなコロッケを揚げながら毎日を送る、というのも悪くない。
 実に平和な夢だ。

「ごちそうさま! めちゃおいしかった」
 店主のおばちゃんに、ヒナマルが礼を言った。

「ありがとう、お嬢ちゃん。ロバート様もいつもごひいきに」
「いえいえ、そんな」

「せっかくのお相手だもの。逃がしちゃダメよ」
 女店主まで、からかってくる。

「ボクたちは、そういう関係じゃ」
「朝から二人だけで歩いていて、恋人同士じゃないって言うのかい?」

 やはり、そう見られていた!

「失礼します!」
 そそくさと、その場を離れる。

「二個目が欲しかったのに」
「お腹が空いたら、別の露店に行こう。とにかくギルドで仕事を探すよ」

 ひとまず、冒険者ギルドへ向かった。

 ヒナマルのレベルがどのようなモノか、測定しないと。今のところ、ヒナマルの戦闘力は計り知れない。多少の無理は利きそうだが。

「あれ、掲示板に行かないの?」
「うん。あそこを利用できるのは、Bクラス以下だから」
 掲示板の依頼は、料金が安い分だけ仕事も楽だ。
 トップクラスの冒険者が依頼を独占すると、後進が育たない。

 冒険者レベルが高すぎると、掲示板は必要ない。
 ロバートほどのレベルとなると、直接ギルドが依頼を回してくれるから。

 受付カウンターに座る、メイジャー夫人にあいさつをした。
 レックスの妻だ。

「すいません。何か仕事がありますか?」
 受付嬢が、一枚の紙を取り出す。

「ダンジョンにて、大型魔獣の討伐がございます」
「また、大型魔獣ですか?」

 正体不明の大型魔獣が、最近になって度々目撃されている。

「多いですよね、最近」
「そうなんですよ。討伐できる冒険者も限られていて」

 あまりハイレベルな依頼だと、ロバートが駆り出されてしまう。

「掲示板にも、でっかいモンスターの絵があったよ」
 ヒナマルが両手を広げた。

「あれは中型クラス」

「もっとデカイのがいるの?」
 手を広げたまま、ヒナマルは爪先まで伸ばす。

「見に行ったら、ドラゴンだったってコトも多いんだ。遠くまでしか近づけないから、誤情報も多い」

 ロバートが遭遇したのも、ドラゴンだった。
 大型魔獣だと聞かされていたのに。

「あのコロッケに使われているお肉も、魔獣の肉だよ」
「マジで? 食べてよかったのかなぁ?」

 無慈悲に殺された肉を食べたと思ったのか、ヒナマルは食べる手を止めた。

「かわいそうに思う必要はないよ。必要最低限の殺生だから」

 ヒナマルが、空に「ありがとう。ごちそうさま」と祈る。

「それともう一つ。ダンジョンまでの道のりは、パクパカをご利用ください」
「パクパカに乗れって?」

 人に慣れさせて欲しい、との依頼があるという。

「ボクらじゃなくて、新米冒険者でいいのでは?」
「新米なら、目の前にいらっしゃるので」

 ヒナマルを言っているらしい。

「では。お気を付けて」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

【第1章完結】王位を捨てた元王子、冒険者として新たな人生を歩む

凪木桜
ファンタジー
かつて王国の次期国王候補と期待されながらも、自ら王位を捨てた元王子レオン。彼は自由を求め、名もなき冒険者として歩み始める。しかし、貴族社会で培った知識と騎士団で鍛えた剣技は、新たな世界で否応なく彼を際立たせる。ギルドでの成長、仲間との出会い、そして迫り来る王国の影——。過去と向き合いながらも、自らの道を切り開くレオンの冒険譚が今、幕を開ける!

本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。 しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。 探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。 だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。 ――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。 Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。 Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。 それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。 失意の内に意識を失った一馬の脳裏に ――チュートリアルが完了しました。 と、いうシステムメッセージが流れる。 それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...