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第一章 どうしようもない魔道士に、JKが舞い降りた

偶然、JKを助けていたDT

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 ヒナマルが解体を終えた。
 素材を全て、アイテムボックス代わりのポシェットへ放り込む。

「キミは、召喚される前は何を? お昼を食べていたみたいだったけど」

「ああ、そうだった。うう、お腹も鳴るし」
 ヒナマルがお腹を抑えた。

「昼食にしよう。そこで、キミが連れてこられた理由も話すよ」

 岩山の下を、安全な森林地帯まで降りる。

 ロバートが焚き木に火をつけて、ドラゴン肉を炙った。

「うん。いい感じ。どーぞ」
「いただきまーす! うん、うまい!」

 ヒナマルが、十分に火が通った骨付き肉にかぶりつく。
 豪快な食べっぷりだ。

「ほら、ロバちゃんも」
 骨付き肉を、ヒナマルが差し出してきた。

「ボクはいいよ。何もしていない」
 働かざるもの食うべからずである。

「いやいや食べなって。一人で食べるの、寂しいから」

「なら、いただきます」
 ロバートは、レッドドラゴンの肉をかみしめた。

 ドラゴンの肉なんて、魔王討伐後の祝勝会以来である。

「ごめんね。昼食時を邪魔してしまったようで」
 炭化したヒナマルの弁当箱を思い出し、ロバートは詫びた。



「そうでもないよ。ロバちゃんが助けてくれたんだよね。ありがと」


「えっ。ボクがキミを助けた?」

 どういうことだろう?


「遠足の授業だったのね。あたしさ、バックレたんよ。高校で知り合ったユミって娘と、そのカレシと一緒にいたんだけどね」

 同行していたユミという友人が「山登りの授業なんてつまらない」と、言い出したとか。
 友人とそのカレシと、数名で勝手に行動を始めたそうである。

「そしたら、ユミがカレシとどっか行っちゃってさ。あたし一人でウロウロしてたんよ」

 クラスともはぐれてしまい、お腹が空いてきた。「一人飯をするしかない」という状況に。


「でさあ、ごはん食べよーってときにさ、岩が降ってきたの! さっきの子の頭くらいあるデカい岩が!」

 ドラゴンが去っていった先を、ヒナマルが指差した。

「走馬灯ってさ、ホンットにあるんだよね! ビックリした! パパとママになんにもしてあげられなかったなーとかさ、もっとお料理勉強してお店やりたかったなーとか思っちゃって!」

 さすがのヒナマルも、死を覚悟したという。

「あと少しで岩の下敷きになると思った直後に、変な土地に来てあんたとバッタリ」

 駆けつけ早々にドラゴン退治とは、恐れ入る。

「ところでさ、ロバちゃんは海外の人?」
「まあ、そうなるかな?」

 この娘からすると、明らかに自分は海外出身者だろう。

「言葉が通じてるけど!?」

「それは、どうしてかわからないけど」
 ロバートも不思議に思う。

「で、ロバちゃんが、あたしをココに連れてきたってわけかー」
「……ごめんなさい」

「それはそうと、ココってどこ? 地球でいうと、どの辺?」

 地球というのが、彼女の住む星らしい。

「ここは、地球とかいう場所じゃないね」
 リアーズというのが、この世界の名だ。 

 そう、ヒナマルに教えてあげる。

「マ!? ってことは、ここってガチの異世界!?」
「そうなんだ」
「じゃあ、この妙にリアルっぽいドラゴンも、本物?」
「うん。キミが倒した」

 なんの戦闘スキルも持っていないのに。

「それで、どうしてあたしはこの世界に?」


「話せば。長くなるんだけど」
 ロバートはヒナマルに、事情を説明した。


「ふーん。で、ロバちゃんがピンチッたから、あたしを呼び出したと」
「そうなんだ。厳密には女性のサムライを呼ぶつもりだったんだけど……」
「誘拐目的ではないよね?」

 雇われ店長とはいえ、ヒナマルは裕福な家庭に住むお嬢様だ。
 命の危険があってもおかしくはない。

「当然。蓄えはあるし、人をさらう理由なんてないよ」

 ヒナマルがお嬢様だと知ったのも、ついさっきである。

「あたしが魅力的だったから、ってことも?」

 ふざけた調子で、ヒナマルがしなを作った。

「さすがにそれはない!」
 自分はいたって健全だ。未成年に手を出すなど、ありえない。

「そんなにあたしって魅力ない?」
「じゃなくて!」

 どうにか弁解し、身体目当ての召喚ではないと強調した。 

「これから、どうすんの?」

「とりあえず、師匠のところへ行く」

 師匠の元へ趣き、ヒナマルが帰れる方法を探す。

「どうして召喚されたのがキミだったのか、どうしてドラゴンをあっさり退治できたのか、謎が解明できるかも」

 だから、師匠のところを訪問しに行く。
 とはいえ、師匠の家は随分と遠くにある。
 残党の討伐は中断せねばなるまい。

『そんな手間は無用じゃ』

 ヒナマルのポシェットが、ガサガサと動き出した。 

 現れたのは白いリスである。

『この娘は、ワシが育てた』

「え、師匠!?」

 ロバートは、リスの声に聞き覚えがあった。


 なんと、師匠の声色だったのである。
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