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第二章 それぞれの引越し
第12話 ダンジョン完成
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会社の地下をダンジョン化して、冒険者には「ダンジョンの構成を知る施設」に、顧客がモンスターなら「モデルルーム」として解放するのである。
私の意見を聞いて、ジュディ社長も「ああ!」と手をたたく。
「せやったら、あんたらを雇用できるで。つまりアンパロは、『初心者の館』を作ろうって言いたいわけやろ?」
「そのとおりです」
初心者の館とは、簡易的なダンジョンである。正確には『ダンジョンもどきの施設』だが。
つまり、かけだし冒険者の訓練場とするのだ。
そうすれば、「魔王」を設置する必要もない。また、誰かを魔王として犠牲にすることもないのだ。管理は、冒険者ギルドに任せるのだから。
魔物たちは、ジュディ社長に雇われた「従業員」として、報酬をもらう。冒険者に『居言う力するのだから、ギルドからもお金を受け取れるはずだ。
「どこでも、初心者の館は必要ですからね」
「ええなぁ。ナイスやアンパロ」
さっそく翌日から、本社の隣にダンジョンを建築し始める。厳密には、会社の地下だ。
広い庭もあるので、初心者の館を建てるなら申し分ない。
ドワーフなどの鉱夫などを呼ぶ必要があるかなと思っていたが、違う。
「この宝石をここに置いたら、しまいや」
社長が、地面に宝石を置く。たったそれだけで、みるみるダンジョンができあがった。まるでアリの巣だ。一時間もしないうちに、地下二階のダンジョンが完成した。
「わーい。新しい玄室や! これで安心して寝られる!」
「さっそく宝箱、設置しようや!」
魔物たちが、ダンジョンに入り込む。構成を考え始めた。あとは、彼らの仕事である。我々のやれることは、もうない。
「アンパロはん、おおきに!」
「いえ。ごゆっくり」
魔物たちからお礼を言われて、私は恐縮する。
その後の数日間、私たちは完成した初心者の館の様子を見学させてもらった。
「わーっ。かなんわ」
駆け出し冒険者にボコボコにされたスライムが、退散する。
キメラに善戦した冒険者たちが、息を切らしながら館を後にした。
「いやあ。充実した一日でっせ。相手は弱いんでっけど、根性はある」
冒険者たちの背中を見ながら、キメラが勝者を褒め称える。
「それにしても、冒険者の館を作るとか。考えたな、アンパロ」
社長が、私の意見を絶賛した。
「いえ、私も自分の家がなかったときに、ジュディ社長に助けてもらったので。ご迷惑では、なかったですか?」
「かまへん! むしろ大歓迎や!」
なにより、一番喜んでいたのがフローラさんである。
「ありがとうございます、アンパロちゃん。お話相手ができて、わたしもさみしくありません」
「よかったです。実はそうだろうなと思って、あのアイデアを思いついたんです」
「へえ! わたしのためだったの?」
まあ、そのとおりといえばそうか。
フローラさんだけ、いつも一人でお留守番だ。なんとかできないかと思っていたのです。
「この会社にはいつも日帰りしているじゃないですかー。別に構わなくてもー」
「そうはいきません。お世話になっていますから」
「ありがとーですアンパロちゃーん」
その日の夕食は、やけに豪勢にしてくれた。
私の意見を聞いて、ジュディ社長も「ああ!」と手をたたく。
「せやったら、あんたらを雇用できるで。つまりアンパロは、『初心者の館』を作ろうって言いたいわけやろ?」
「そのとおりです」
初心者の館とは、簡易的なダンジョンである。正確には『ダンジョンもどきの施設』だが。
つまり、かけだし冒険者の訓練場とするのだ。
そうすれば、「魔王」を設置する必要もない。また、誰かを魔王として犠牲にすることもないのだ。管理は、冒険者ギルドに任せるのだから。
魔物たちは、ジュディ社長に雇われた「従業員」として、報酬をもらう。冒険者に『居言う力するのだから、ギルドからもお金を受け取れるはずだ。
「どこでも、初心者の館は必要ですからね」
「ええなぁ。ナイスやアンパロ」
さっそく翌日から、本社の隣にダンジョンを建築し始める。厳密には、会社の地下だ。
広い庭もあるので、初心者の館を建てるなら申し分ない。
ドワーフなどの鉱夫などを呼ぶ必要があるかなと思っていたが、違う。
「この宝石をここに置いたら、しまいや」
社長が、地面に宝石を置く。たったそれだけで、みるみるダンジョンができあがった。まるでアリの巣だ。一時間もしないうちに、地下二階のダンジョンが完成した。
「わーい。新しい玄室や! これで安心して寝られる!」
「さっそく宝箱、設置しようや!」
魔物たちが、ダンジョンに入り込む。構成を考え始めた。あとは、彼らの仕事である。我々のやれることは、もうない。
「アンパロはん、おおきに!」
「いえ。ごゆっくり」
魔物たちからお礼を言われて、私は恐縮する。
その後の数日間、私たちは完成した初心者の館の様子を見学させてもらった。
「わーっ。かなんわ」
駆け出し冒険者にボコボコにされたスライムが、退散する。
キメラに善戦した冒険者たちが、息を切らしながら館を後にした。
「いやあ。充実した一日でっせ。相手は弱いんでっけど、根性はある」
冒険者たちの背中を見ながら、キメラが勝者を褒め称える。
「それにしても、冒険者の館を作るとか。考えたな、アンパロ」
社長が、私の意見を絶賛した。
「いえ、私も自分の家がなかったときに、ジュディ社長に助けてもらったので。ご迷惑では、なかったですか?」
「かまへん! むしろ大歓迎や!」
なにより、一番喜んでいたのがフローラさんである。
「ありがとうございます、アンパロちゃん。お話相手ができて、わたしもさみしくありません」
「よかったです。実はそうだろうなと思って、あのアイデアを思いついたんです」
「へえ! わたしのためだったの?」
まあ、そのとおりといえばそうか。
フローラさんだけ、いつも一人でお留守番だ。なんとかできないかと思っていたのです。
「この会社にはいつも日帰りしているじゃないですかー。別に構わなくてもー」
「そうはいきません。お世話になっていますから」
「ありがとーですアンパロちゃーん」
その日の夕食は、やけに豪勢にしてくれた。
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