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ハロウィンを、学食で

第39話 ハロウィンパーティを、学食で

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「ありがとうなのである、イクタ殿。シスター・ダグマ殿」

 リックワードで行われる文化祭のビラを持って、魔王が礼を言ってくる。魔王城のスタッフが、掲示板に貼ってくれるらしい。

「急なお願いでしたからー、どうかと思いました。でもイクタさんなら、きっと聞き入れてくださるとー」

 まあ急だったが、悪い気はしない。

「イクタ殿。わが校の文化祭にも、参られよ。リックワードほど賑やかではないが、独特の屋台などを出しておるぞ」

「ありがとう、魔王さん」

「ウチに鞍替えする際は、席を開けておくのである」

「あはは……弟子の様子くらいは、見に来てやるよ」

「楽しみである。では」



 帰りの電車内では、明日もハロウィン仮装をすると盛り上がった。

「シスター・ダグマ、ハロウィンっていつまでやるんです?」

「三日間ですー。その間にあちこち、宣伝して回るんですよー」

 ビラ配りのため、各地域を回って歩くという。

「そうか。では明日、ちゃんとパーティをしましょう」

「いいですねー」

「用意は、こちらでしておきます」

「でも、大変なんじゃあ。お手伝いしますよー」

「オレの時短魔法があれば、人手はいらない」

 ビラを配っている間に、作業は終わるはずだ。

「助かりますー」

「なら、わたくしは残って、作業のお手伝いをします。従業員ですから」

 他のメンバーにビラを配ってもらい、オレとデボラでパーティの準備を進めることになった。



 
 翌日、ハロウィンの本格的なパーティを始める。

「うわあ、立食だー」

 テーブルには、一口大の料理を並べた。スナックの上に、具材をディップしてある。

「ディップが、モンスターの顔になってる。かわいー」

 プリティカが、ディップのイラストに目を奪われていた。

 ひき肉のパイと、チーズフォンデュを用意してある。

 他には、フルーツの盛り合わせなど。

「お菓子をもらいまくっただろうからな」

 すべて小分けにして、ちょっと軽食っぽくしてある。

「うむ。いい香りだ」

「さっきお菓子をめちゃくちゃ食ってきたはずなのに、もう腹が減ってらぁ」

 キャロリネとペルが、お腹をさすった。

「このたこ焼きのようなおにぎりは、なんだ?」

「チュモクパプっていうんだ。韓国って国の料理でな。日本と違って、丸く握るんだ」

 丸いおにぎりにも、モンスターの顔をデコレーションしている。

「これは、デボラが考えついたんだ」

 魔界での経験が、刺激になったのだろう。

「マカロンタワー、うまそーだぞ」

「さすが師匠です」

 エドラとイルマが、マカロンタワーに夢中になっている。

 久しぶりに出してみたが、いい感じだ。 

「いただきまーす」

 早速プリティカが、ミニカレーに手を伸ばす。鍋は、カボチャで作った。

「うん、おいしー。ルーを、変えてるよねー?」

「ちょっと、いいやつにした。パンに付けて食べるためのルーだ」

 オレは普段、あまり手の込んだ料理を作らない。

 学食は、スピード勝負である。
 凝ったものを作ると、ずっと作らなければならない。で、すぐに飽きられる。

 学食の基本は、飽きられないことと、飽きさせないことだ。人によっては毎日食べるものだから、平凡な味ほど好まれる。

 今回のようなことは、今だけしかやらない。ずっと普遍的な料理を作っていると、たまにこういった手間ひまをかけたくなるもんだ。今日は、特別な日である。だから、腕によりをかけた。

「夏休みに釣った巨大クエの刺身を、思い出したよ」

「あれは、壮大だったなー」

 クエを釣ったエドラと、思い出を語り合う。

「これグラタンパスタと思ったら、ラーメンだ! ウマいな!」

 鍋に入ったグラタンラーメンをすくって、ミュンがムシャムシャと頬張った。

「チーズとひき肉を使った、味噌ラーメン風パンプキングラタンだ。ほのかに甘みがあって、ウマいだろ?」

「うん! いつも食べてるラーメンとは、また違った触感があるな。カボチャのスープで、ラーメンを食べてるみたいだ!」

 パンプキンのラザニアも用意してある。そちらには、パァイが手を付けていた。 

「デボラもありがとう。食べていいからな」

「では、このケーキを」

 あとはケーキを、小分けにしてある。スティックチーズケーキも、小さく切ってでエコレーションすれば、パーティ用のケーキに早変わりだ。今日は、パンプキン味にしてみた。

「おいしいですわ。イクタの愛が詰まっていますわ」

「待て待て。その理屈はおかしい」

 パーティも終わって、明日の文化祭の話に。

「みんなは、何を出すんだ?」

「アタシのクラスは、バンドだ」

 ミュンは軽音楽のバンドを組んで、演奏するという。

「ドラムは、アタシが担当するんだぞ」

「すごいな。見てみたい」

 プロボクサーのパピヨン・ミュンなら、リズム感はバッチリなはずだ。

 パァイのクラスは、歴史資料の展示をするらしい。ほとんどが、パァイの絵日記からだというが。さぞ壮大なんだろう。

 エドラとイルマは、演劇をするとか。演目は、当日までの秘密だという。

「ウチのクラスは、デボラちゃんのおかげで、メイド喫茶になったよー」

 定番だな。

「でも、どうしてデボラのおかげってなったんだ?」

「なんかねー。どっかからエプロンドレス姿のデボラちゃんが、転送されてきたんだよねー」

 あのときか。

「おじは、何を出すの?」

「秘密だ。お菓子ってことだけは、教えておいてやる」

 オレが言うと、デボラがよだれを垂らす。

「ああ、あれか。年に一度の楽しみなんだよな、あれ」

(ハロウィン編 おしまい)
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