35 / 48
ハロウィンを、学食で
第35話 おじさん、JKと街を練り歩く
しおりを挟む
デボラの担任であるシスター・ダグマが、学食に顔を出す。
いつもは修道女の服装だが、今回はミニスカバスガイドだ。頭に、悪魔の角を生やしている。
「皆さん、おそろいですねー?」
ダグマに問いかけられ、JKたちが「はーい」と返事をした。
「では、街へ参りましょー」
JKたちが、エドラを先頭に学食を出ていく。
「お気をつけて、シスター・ダグマ」
「なーにをおっしゃいます、イクタさーん? あなたも来るんですよー」
「オレも?」
聞いてないぞ、そんな話は。
「プリントが配られませんでしたかー、イクタさーん? 学食の方々にも、ビラ配りに協力していただくことになっているのですがー」
今回はちょっと、遠くの街へも行く。なので、引率役が足りないらしい。
ホントだ。壁のポスターにも、書いてあるな。仕事が忙しくて、目を通していなかった。
「ではイクタさーん、行きましょー」
「といっても、着替えがなくて」
みんな仮装しているのに一人だけコック姿では、キャラが浮いてしまう。
「大丈夫でーす。私がそれっぽい魔法をかけてー、仮装させて差し上げまーす」
シスター・ダグマが、指揮棒のように手のフラグを振る。あれは、杖を変形させたものか。
「リクエストはございますかー?」
「地味ハロウィン的なものを」
オレが目立っても、仕方がない。主役は生徒なんだから。
「それだと仮装を見られた際に、説明が必要になってきますねー。いちいち質問されて、めんどくさいですよー」
なるほど。理解されないケースがあると。「シュレッダーを待つ人」なんて、異世界人の誰がわかるねん、と。
だったら、わかりやすい仮装が無難だろうな。
「オススメはありますか?」
「フランケンなんていかがでしょー? 頭におもちゃのネジを刺す程度ですのでー」
オレの体型からして、それがベストかも知れない。頭に鉄が突き出ている以外は、普段着だし。
「ほんとに、仮装しないとダメか、エドラ?」
「イクタ。観念して、妥協なさったほうがよろしいかと。躊躇なさっていると、ドレスとかいい出しますわよ」
「だな」
デボラに催促されて、オレは承諾する。
なんかノリが良すぎて苦手なんだよな、シスター・ダグマは。プリティカより、絡みづらい。
「じゃあ、それで」
「はーい。かしこまりー」
フラグをクルクルと回して、ダグマがオレの服装を変えていく。
「できましたー」
オレはこめかみにネジがハマっているのを確認する。被り物だから、本当に突き刺さっているわけではない。
「では気を取り直して、行きましょー」
さっそく、街へ。
「こんばんは。今日は、イクタさんも街へ行くのかい?」
「そうなんだよ。文化祭の宣伝をやってる。来てくれよな」
「あいよー」
近所のおばあさんが、ミカンをくれた。異世界のミカンは、蜜のように甘いんだよ。うまい。
「イクタさん、今日はハロウィンかい?」
「実はな。今日は引率役なんだ」
「そうかい。気をつけてな」
八百屋のおじさんから、トマトをもらう。
「イクタ、大評判ですわ」
世話になっているからな。
「なんだか、わたくしたちより、慕われていませんか?」
みんな敬遠しているのか、デボラなどには視線を送るものの、話しかけようとはしない。
庶民と貴族の違いを、思い知らされた。やはりみんな、お貴族様には気軽に声をかけられないのだろう。
仮装は、この状況を緩和するためなのかも知れない。あくまでも、文化祭を楽しんでもらいたいだけで。
「気のせいだよ。みんながかわいすぎて、オレにしか声をかけられないんだろうよ」
さりげなく、フォローしておく。
「そういうところですわ。イクタ」
デボラは頬を染めた。
「おやおや、イクタさん。かわいいお嬢ちゃんたちを、連れていますね」
ラーメンの屋台を引く若い衆が、オレに声をかけてくる。
「この子たちの引率係でな。文化祭の宣伝に、回っているんだ」
「あいよ。仕事前に、お邪魔させてもらいます。その代わり、学校の近くで営業してもよろしいんで? 屋台に戻るのは、大変なんですよ。新境地も開拓してぇ」
オレは、ダグマに確認を取る。
ダグマは、指で輪っかを作った。
「OKだとよ」
「ありがとうごぜえやす!」
「ですが」と、ダグマが前置きする。
「お客さんの質が、若干変わりますよー。それでも、よろしければー」
「大丈夫です! 魔物にラーメンを食わせたことだって、あるんだ。問題ありませんよ」
「なら、平気そうですねー」
思わせぶりな言葉を、ダグマは発した。
なんだってんだ?
オレたちは、駅に到着した。
「では、みなさーん。列車に乗りますよー」
切符を買い、蒸気機関車に乗り込む。
「シスター・ダグマ。これから、どこへ行くんです?」
だんだんと、空が赤く染まっているのだが? というか雲が異様に赤黒い。いったいこの列車は、どこ行きなのか?
乗客も、ニンゲンはないし。
「今から向かうのはー、オルコートマ王国でーす」
「オルコートマですって!?」
ダグマの一言に、デボラが過剰反応した。
「パァイ、オルコートマってのは?」
「魔物の本場みたいなところじゃよ。北部を支配する魔王・オンスロートが率いる、魔物たちが住む地域じゃ」
つまり、オレたちが今から向かうのは、いわゆる『魔界』だという。
いつもは修道女の服装だが、今回はミニスカバスガイドだ。頭に、悪魔の角を生やしている。
「皆さん、おそろいですねー?」
ダグマに問いかけられ、JKたちが「はーい」と返事をした。
「では、街へ参りましょー」
JKたちが、エドラを先頭に学食を出ていく。
「お気をつけて、シスター・ダグマ」
「なーにをおっしゃいます、イクタさーん? あなたも来るんですよー」
「オレも?」
聞いてないぞ、そんな話は。
「プリントが配られませんでしたかー、イクタさーん? 学食の方々にも、ビラ配りに協力していただくことになっているのですがー」
今回はちょっと、遠くの街へも行く。なので、引率役が足りないらしい。
ホントだ。壁のポスターにも、書いてあるな。仕事が忙しくて、目を通していなかった。
「ではイクタさーん、行きましょー」
「といっても、着替えがなくて」
みんな仮装しているのに一人だけコック姿では、キャラが浮いてしまう。
「大丈夫でーす。私がそれっぽい魔法をかけてー、仮装させて差し上げまーす」
シスター・ダグマが、指揮棒のように手のフラグを振る。あれは、杖を変形させたものか。
「リクエストはございますかー?」
「地味ハロウィン的なものを」
オレが目立っても、仕方がない。主役は生徒なんだから。
「それだと仮装を見られた際に、説明が必要になってきますねー。いちいち質問されて、めんどくさいですよー」
なるほど。理解されないケースがあると。「シュレッダーを待つ人」なんて、異世界人の誰がわかるねん、と。
だったら、わかりやすい仮装が無難だろうな。
「オススメはありますか?」
「フランケンなんていかがでしょー? 頭におもちゃのネジを刺す程度ですのでー」
オレの体型からして、それがベストかも知れない。頭に鉄が突き出ている以外は、普段着だし。
「ほんとに、仮装しないとダメか、エドラ?」
「イクタ。観念して、妥協なさったほうがよろしいかと。躊躇なさっていると、ドレスとかいい出しますわよ」
「だな」
デボラに催促されて、オレは承諾する。
なんかノリが良すぎて苦手なんだよな、シスター・ダグマは。プリティカより、絡みづらい。
「じゃあ、それで」
「はーい。かしこまりー」
フラグをクルクルと回して、ダグマがオレの服装を変えていく。
「できましたー」
オレはこめかみにネジがハマっているのを確認する。被り物だから、本当に突き刺さっているわけではない。
「では気を取り直して、行きましょー」
さっそく、街へ。
「こんばんは。今日は、イクタさんも街へ行くのかい?」
「そうなんだよ。文化祭の宣伝をやってる。来てくれよな」
「あいよー」
近所のおばあさんが、ミカンをくれた。異世界のミカンは、蜜のように甘いんだよ。うまい。
「イクタさん、今日はハロウィンかい?」
「実はな。今日は引率役なんだ」
「そうかい。気をつけてな」
八百屋のおじさんから、トマトをもらう。
「イクタ、大評判ですわ」
世話になっているからな。
「なんだか、わたくしたちより、慕われていませんか?」
みんな敬遠しているのか、デボラなどには視線を送るものの、話しかけようとはしない。
庶民と貴族の違いを、思い知らされた。やはりみんな、お貴族様には気軽に声をかけられないのだろう。
仮装は、この状況を緩和するためなのかも知れない。あくまでも、文化祭を楽しんでもらいたいだけで。
「気のせいだよ。みんながかわいすぎて、オレにしか声をかけられないんだろうよ」
さりげなく、フォローしておく。
「そういうところですわ。イクタ」
デボラは頬を染めた。
「おやおや、イクタさん。かわいいお嬢ちゃんたちを、連れていますね」
ラーメンの屋台を引く若い衆が、オレに声をかけてくる。
「この子たちの引率係でな。文化祭の宣伝に、回っているんだ」
「あいよ。仕事前に、お邪魔させてもらいます。その代わり、学校の近くで営業してもよろしいんで? 屋台に戻るのは、大変なんですよ。新境地も開拓してぇ」
オレは、ダグマに確認を取る。
ダグマは、指で輪っかを作った。
「OKだとよ」
「ありがとうごぜえやす!」
「ですが」と、ダグマが前置きする。
「お客さんの質が、若干変わりますよー。それでも、よろしければー」
「大丈夫です! 魔物にラーメンを食わせたことだって、あるんだ。問題ありませんよ」
「なら、平気そうですねー」
思わせぶりな言葉を、ダグマは発した。
なんだってんだ?
オレたちは、駅に到着した。
「では、みなさーん。列車に乗りますよー」
切符を買い、蒸気機関車に乗り込む。
「シスター・ダグマ。これから、どこへ行くんです?」
だんだんと、空が赤く染まっているのだが? というか雲が異様に赤黒い。いったいこの列車は、どこ行きなのか?
乗客も、ニンゲンはないし。
「今から向かうのはー、オルコートマ王国でーす」
「オルコートマですって!?」
ダグマの一言に、デボラが過剰反応した。
「パァイ、オルコートマってのは?」
「魔物の本場みたいなところじゃよ。北部を支配する魔王・オンスロートが率いる、魔物たちが住む地域じゃ」
つまり、オレたちが今から向かうのは、いわゆる『魔界』だという。
0
お気に入りに追加
545
あなたにおすすめの小説
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい
梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。
料理を作って異世界改革
高坂ナツキ
ファンタジー
「ふむ名前は狭間真人か。喜べ、お前は神に選ばれた」
目が覚めると謎の白い空間で人型の発行体にそう語りかけられた。
「まあ、お前にやってもらいたいのは簡単だ。異世界で料理の技術をばらまいてほしいのさ」
記憶のない俺に神を名乗る謎の発行体はそう続ける。
いやいや、記憶もないのにどうやって料理の技術を広めるのか?
まあ、でもやることもないし、困ってる人がいるならやってみてもいいか。
そう決めたものの、ゼロから料理の技術を広めるのは大変で……。
善人でも悪人でもないという理由で神様に転生させられてしまった主人公。
神様からいろいろとチートをもらったものの、転生した世界は料理という概念自体が存在しない世界。
しかも、神様からもらったチートは調味料はいくらでも手に入るが食材が無限に手に入るわけではなく……。
現地で出会った少年少女と協力して様々な料理を作っていくが、果たして神様に依頼されたようにこの世界に料理の知識を広げることは可能なのか。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
どうやら異世界ではないらしいが、魔法やレベルがある世界になったようだ
ボケ猫
ファンタジー
日々、異世界などの妄想をする、アラフォーのテツ。
ある日突然、この世界のシステムが、魔法やレベルのある世界へと変化。
夢にまで見たシステムに大喜びのテツ。
そんな中、アラフォーのおっさんがレベルを上げながら家族とともに新しい世界を生きていく。
そして、世界変化の一因であろう異世界人の転移者との出会い。
新しい世界で、新たな出会い、関係を構築していこうとする物語・・・のはず・・。
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
【完結】異世界で小料理屋さんを自由気ままに営業する〜おっかなびっくり魔物ジビエ料理の数々〜
櫛田こころ
ファンタジー
料理人の人生を絶たれた。
和食料理人である女性の秋吉宏香(あきよしひろか)は、ひき逃げ事故に遭ったのだ。
命には関わらなかったが、生き甲斐となっていた料理人にとって大事な利き腕の神経が切れてしまい、不随までの重傷を負う。
さすがに勤め先を続けるわけにもいかず、辞めて公園で途方に暮れていると……女神に請われ、異世界転移をすることに。
腕の障害をリセットされたため、新たな料理人としての人生をスタートさせようとした時に、尾が二又に別れた猫が……ジビエに似た魔物を狩っていたところに遭遇。
料理人としての再スタートの機会を得た女性と、猟りの腕前はプロ級の猫又ぽい魔物との飯テロスローライフが始まる!!
おっかなびっくり料理の小料理屋さんの料理を召し上がれ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる