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学食でお造り!? ヌシ釣り、二夜連続!

第27話 ヌシ釣りへ

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「なんでヌシ釣りなんだ?」

「夏休みの宿題で、魚拓を作るのだぞー」

 エドラは自由研究の課題を、魚拓にしたという。

「そいつは強いらしくてな。勝って魚拓にするんだぞ」

 気合がこもった口調で、エドラは張り切っている。

 岩場のスポットに、到着した。

 周りには年配の釣り人が、大勢で竿を下ろしている。

「イクタのたいしょー。ここが、ヌシスポットだぞ」

 かなりゴツゴツした岩場に、エドラが陣取った。

 すぐに根掛かりしそうな、場所のようだが。

「岩を動かして、足場にしましょうか?」

 デボラが、提案する。さすがに、このポイントは立つことも困難だ。

「ヌシというくらいですから、相当大きいはずです。どれだけのサイズかわからないので、載せられるだけの足場は確保しないと」

「生態系に影響が出ないくらいには、いいぞー」

「では」

 土魔法を施して、デボラは岩場を操作して階段を作る。そこに、オレたちは着席した。これなら、釣りもやりやすい。

「魚拓用の紙は、吾輩が用意するでの。安心せい」

「ありがとー。よち。いくじぇ」

 慣れた動作で、エドラはゴツゴツの岩場にドシンと腰を下ろす。手際よくエサの虫を針に刺して、竿を振る。

「姐さん、負けないからな!」

 ペルが、エドラの隣に並んで竿を投げた。

「息抜きも、大事だよね」

 ミュンも後に続く。彼女の場合、ガチ釣りというより集中力アップのため、という印象だ。

 プリティカはイヤな顔ひとつせず、ミミズを針につける。地元が田舎だって聞いたから、虫は平気なんだろう。

「それー」

 竿の投げ方は、完全に素人だが。

「釣りに付き合うとき、この作業だけは慣れないのよね」

「虫に触れられる方たちの神経が、わかりませんわ」

 逆にイルマやデボラは、虫がダメらしい。

「貸してみろ」

 キャロリネが、二人の針に虫を通す。「これでいい」と、竿を返した。

「ありがとう。いつもはエドラにやってもらうんだけど」

「どうってことはない。虫には慣れている」

 まずは、イルマが竿を振る。

「キャロリネさん、感謝します」

 続いて、デボラも。

「お前さんは、釣らないのか?」

「ヌシはデカいと聞いた。なので、タモを用意しておいた」

 キャロリネは自分では釣らず、サポートに徹するという。

「じゃあ、代わりばんこで釣ろう。お前さんが釣っている間に、オレがタモを引き受ける」

「感謝する」

「あんたら、ヌシを釣りに来たのかい?」

 年老いた釣り師が、オレたちのところまで近づいてきた。

「そうだぞー」

「やめときな。今のヌシは、デカすぎる」

 釣り師が、首を振る。

「そんなに成長したのかー?」

「ああ。あちこちの海で、暴れ回っている。ここ最近では、ヤツのせいで漁獲量も減って」

 海底噴火も、ヌシが起こしたってウワサだ。

「そこまで、影響のある魚なんだな」

「うむ。この辺りに潜伏しておる魚型モンスターは、魔力が強いらしい」

 パァイによると、そうらしい。

「そのせいで、海の生態系を狂わせるというのう」

「ヌシって、守り神的なポジションじゃねえんだな?」

「うむ。どちらかというと、ボスモンスターのような扱いじゃのう」

 絵日記を書く作業に、パァイは戻る。

「どうだろうなー? 釣ってみないとわからんなー」

「止めはせんが、ケガはせんようにな」

「おー。ありがとー、じいさーん」

 忠告をした後、老いた釣り師は自分のポイントへ戻っていった。 

 さっそく、オレの竿に反応が。

「おっおっ。これは大きいぞっ」

 実はオレも、釣りは得意ではない。へっぴり腰で、対処する。

「キタキタ」

 魚影が見えてきた。しかし……。

「ちっさ!」

 釣れたのは、小さいアジだった。すごくビリビリと反応があったのにな。

「第一号で釣れるとか、たいしょーってすげーな」

「でも、こんな子どもみたいなアジだぜ」

 さすがに、これは食べられるサイズじゃない。海へと返す。

「おじー、これなーにー?」

 プリティカが、毒を持つ魚を釣った。

「触るな。ハオコゼだ」

 背びれにある棘に刺さると、激痛が走る。慎重に針から抜いて、海へリリース。

「エサだけ持っていかれたわ」

「わたくしもですわ」

 イルマとデボラは、ダメだったらしい。

 キャロリネとオレで、二人のエサ付けを交代する。

「すまない、イクタのおやっさん」

「お前さんは、楽しんでくれ」

「うむ」

 夕方になりかけて、オレが小さいアジを大量に釣った。キャロリネがクロダイを一匹。

「おじー、これなーにー?」

 平たいウミヘビのような魚を、プリティカが釣り上げた。

「触るなよ。ウツボだ」

 下手に触ると、指を食いちぎられる。慎重に針から抜いて、ウツボをシメた。

「釣れましたわ、イクタ!」

 イルマとデボラは、仲良くイカを一匹ずつ。

「よかったな。こっちも来たぞ」

 一応ペルも、デカいアンコウを釣っていた。

「浅い岩場で、アンコウが釣れるのかよ?」

 さすが異世界だな。常識が通用しない。

 だが、ペルは納得がいっていない様子である。ヌシではないからだろう。

「うーん。難しいね」

 ミュンもオレと同じで、アジばかりだった。早々に釣りをやめ、おにぎりの消化に励む。

 これで、坊主はエドラだけ。

 さて、エドラの様子を。

「うおお、近づけん」

 目を閉じて、エドラは釣りに集中していた。

 シン、と辺りが静まり返っている。

 片手だけで竿を持っているのに、エドラは微動だにしない。大物を釣るのではないかという、風格があった。

 他の釣り客も、帰り支度の手を止める。

 エドラに、多くの視線が集まってきた。

「うお! ヒットしたぞーっ!」

 突然、エドラが目を見開く。竿が、折れそうなほどにしなった。
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