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第一章 寄り道と大衆食堂とJK
第15話 カップル未満同士のケンカは犬も食わない問題
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不安を抱えつつ、孝明は若菜を大衆食堂に連れて行く。
「まったくあいつ、どこで見てたんだ?」
「分からないわ。ストーカじゃないんでしょ?」
まさか、彼女に限ってそれはないだろう。
病んでいたら、そもそも孝明だって話しかけない。
危険な気配というモノは、案外分かるものだ。
食堂が見えてくる。店の前には、うずくまっている少女が。
「おーいコトコト、連れてきたぞ」
孝明の声に反応して、琴子が立ち上がった。
しかし、すぐ店の扉にへばりつく。
「どうした、コトコト?」
琴子が急に泣き出す。
「うわーん! やっぱり年上がいいんだーっ。わーん!」
周囲の迷惑も顧みず、琴子はわんわんと声を張り上げた。マンガみたいな泣き方である。
「あのなあ、何を勘違いしてんだ?」
「何がよ。その人が、例の藤枝さんなんでしょ?」
「そうだけど?」
「やっぱり付き合ってんじゃーん。あはーん!」
どうやら、盛大に勘違いしているようだ。
「どこをどう考えたら、そういう結論に行き着くんだよ?」
「お嫁に行っちゃった元カノさんを、あんたが取り戻したんでしょ?」
何を言っているのか。
「こいつは姉貴だよ!」
孝明が告げると、琴子は唖然として、立ち尽くす。
泣いていたことすら忘れていたみたいに。
血を分けた姉、若菜は、困り顔で立ち尽くしている。
「え? だって藤枝課長って」
「藤枝は旧姓! 前の旦那の名字! コイツの名前は若菜で、オレの五つ上の姉貴!」
家を出た皆ので、外では姉という身分を撤廃するように言われたのである。
「名前で呼んでるじゃん! 若菜って!」
「姉さん、って呼び方がキライなんだよ、こいつは!」
『お姉ちゃんなんだから』と何事もガマンされられてきた反動で、大人になって容赦したくないと、姉呼びを治さされたのだ。
「なんだぁ。それならそうと、早く言ってくれたらいいのに」
事情が分かったからか、琴子が泣き止んだ。
「興味なさそうだったから、話題にしなかったんだよ」
姉の話題が出ると琴子が不機嫌になることも、理由の一つだった。
「あたしはてっきり、二人は昔付き合っていて、亭主から元カノさんを取り返したのかとー」
琴子の妄想がたくましすぎる。
「よく考えてみろよ。いくら親しいからって、単なる部下に身内の恥をさらすような裁判の内容をベラベラ話すと思うか?」
それも、身内しか知らない、 極プライベートな情報を。
「あ、そっか。立ち会ったんだね?」
「そうそう。オレら家族全員な。向こうの家族も」
親権争いに争点が集まった。
一人息子だったので、どっちも譲りたがらなかったのである。
息子に決めさせたら、若菜側についたのだ。
「な? だから、この人はオレの姉なの。分かったか?」
「うん。分かった」
話がまとまったところで、若菜が琴子に握手を求める。
「改めまして、初めまして。旧姓藤枝の、和泉 若菜です」
「は、はじめまして。実栗 琴子です」
「まったくあいつ、どこで見てたんだ?」
「分からないわ。ストーカじゃないんでしょ?」
まさか、彼女に限ってそれはないだろう。
病んでいたら、そもそも孝明だって話しかけない。
危険な気配というモノは、案外分かるものだ。
食堂が見えてくる。店の前には、うずくまっている少女が。
「おーいコトコト、連れてきたぞ」
孝明の声に反応して、琴子が立ち上がった。
しかし、すぐ店の扉にへばりつく。
「どうした、コトコト?」
琴子が急に泣き出す。
「うわーん! やっぱり年上がいいんだーっ。わーん!」
周囲の迷惑も顧みず、琴子はわんわんと声を張り上げた。マンガみたいな泣き方である。
「あのなあ、何を勘違いしてんだ?」
「何がよ。その人が、例の藤枝さんなんでしょ?」
「そうだけど?」
「やっぱり付き合ってんじゃーん。あはーん!」
どうやら、盛大に勘違いしているようだ。
「どこをどう考えたら、そういう結論に行き着くんだよ?」
「お嫁に行っちゃった元カノさんを、あんたが取り戻したんでしょ?」
何を言っているのか。
「こいつは姉貴だよ!」
孝明が告げると、琴子は唖然として、立ち尽くす。
泣いていたことすら忘れていたみたいに。
血を分けた姉、若菜は、困り顔で立ち尽くしている。
「え? だって藤枝課長って」
「藤枝は旧姓! 前の旦那の名字! コイツの名前は若菜で、オレの五つ上の姉貴!」
家を出た皆ので、外では姉という身分を撤廃するように言われたのである。
「名前で呼んでるじゃん! 若菜って!」
「姉さん、って呼び方がキライなんだよ、こいつは!」
『お姉ちゃんなんだから』と何事もガマンされられてきた反動で、大人になって容赦したくないと、姉呼びを治さされたのだ。
「なんだぁ。それならそうと、早く言ってくれたらいいのに」
事情が分かったからか、琴子が泣き止んだ。
「興味なさそうだったから、話題にしなかったんだよ」
姉の話題が出ると琴子が不機嫌になることも、理由の一つだった。
「あたしはてっきり、二人は昔付き合っていて、亭主から元カノさんを取り返したのかとー」
琴子の妄想がたくましすぎる。
「よく考えてみろよ。いくら親しいからって、単なる部下に身内の恥をさらすような裁判の内容をベラベラ話すと思うか?」
それも、身内しか知らない、 極プライベートな情報を。
「あ、そっか。立ち会ったんだね?」
「そうそう。オレら家族全員な。向こうの家族も」
親権争いに争点が集まった。
一人息子だったので、どっちも譲りたがらなかったのである。
息子に決めさせたら、若菜側についたのだ。
「な? だから、この人はオレの姉なの。分かったか?」
「うん。分かった」
話がまとまったところで、若菜が琴子に握手を求める。
「改めまして、初めまして。旧姓藤枝の、和泉 若菜です」
「は、はじめまして。実栗 琴子です」
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