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第三章 メスガキフェンリル、最後の戦い

伏線回収

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 ジョシュアは、ミラのいるところまでよじ登っていく。

「ボクがリトルアーミーで、ミラを助け出す!」

 おもちゃの兵隊を大量に召喚して、上に上がらせた。

 ミラのツタが切れたときに、キャッチするのである。

 切っても切っても再生するツタだとしても、リトルアーミーの数なら。

「アタシはどうしたらいいのよ?」
「リヨ、キミは特大の炎で、この世界樹を焼き尽くすんだ!」

 思わぬ提案に、リヨは顔をしかめた。彼女は『氷魔法系』の使い手だから。

「炎なんてどこに……あったわね」
「そうだろ? 初めてあった頃のことを思い出せ!」


 幼少期に、ジョシュアはリヨを召喚した。


 理由は、バラ園が火事になったからである。

 リヨに炎を食ってもらって、事なきを得た。言葉を話せるようになったのも、リヨが炎を吸い込んだからだろう。

「さっさと助け出しなさい。特大の炎で抱いてあげるわ!」
「そうしてくれ」

 ようやく、ミラの元へリトルアーミーが到達した。ツタを切り裂く。

「ミラ、こっちにダイブして!」

 ジョシュアの元へ、ミラがふわりと落ちてくる。

「ぐおっふ!」

 ミラをキャッチした瞬間、ジョシュアは背中を地面に打ち付けた。小さくて細身といえど、スピードが乗ると重い。

「今だリヨ、やれえええ!」
「やってやるわ! ファイア・ブレス!」

 全身に眠るありったけの炎を、リヨが吐き出す。

 世界樹はその魔力量も相まって、炎を飲み込んでいった。リヨの魔力も吸い取ろうとして、引火してしまったのだろう。

「さあミラ、こっちだ!」

 ミラと手をつなぎ、研究所の外へ。

 炎に追いかけ回されながら、ミラとともに逃げ出す。

 研究所が、火に包まれる。

「おいリヨ! どうしたんだ!?」

 呼んでも、返事がない。

 研究所のガレキが落ちて、リヨの様子が見えた。リヨはずっと、世界樹のツタを掴み続けていたのである。ジョシュアたちを逃がすために。

「リヨ! もういいんだ! 逃げるんだよ早く!」

 ジョシュアが呼びかけた。

 しかし、リヨは振り返って笑うだけ。いつものように、口を吊り上げた生意気な笑みで。

「だめだリヨ! 戻ってこい! まだ決着は付いていないんだぞ!」

 必死でジョシュアが呼びかけても、もうリアクションすらしない。

 そのままリヨは、世界樹と運命をともにした。

 リヨも世界樹も、崩れ落ちた研究所の下敷きになって見えなくなる。

「バカヤロウ! リヨ! お前がいなかったら、誰がボクとケンカしてくれるんだよぉ……」

 消防車のサイレンを聞きながら、ジョシュアは地面に泣き崩れた。



 

 数日後……。

「アオウ オオウ!」

 病室のベッドに顔を出すと、そこにはナースとよろしくやっているリヨの姿が。
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