そのモフモフ、メスガキにつき ―三十路DT魔術師、懐かないフェンリルに勝つため鍛えていたら無自覚最強に。ロリダークエルフの彼女までゲット―

椎名 富比路

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第三章 メスガキフェンリル、最後の戦い

教授とトレーニング

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 それ以来、ジョシュアは仕事が終わると、教授のもとでトレーニングを開始した。

 教授自身は、何も教えてはくれない。

 が、教授の持ち物で役に立ちそうなことは全て試した。
 彼の読み終えた本を解読したり、独自で魔法を開発したり。

 ミラも、実戦形式の魔法合戦に付き合ってくれている。

 魔法による実戦は、ミラの方が優れていた。
 
 デスクワークがメインだと言っていたが、訓練は怠っていなかったようだ。
 いや、実際に魔物とも戦ってきたような慣れを感じる。

 頭しか使ってこなかったジョシュアとは、大違いだ。

「はあはあ、ありがとうございました」
「ありがとうございました」

 涼しい顔で、ミラはジョシュアに礼をする。

「熱心やな。そこまでその召喚獣は、憎たらしいんか?」

 ジョシュアの頼みに、教授は首をかしげた。

「いえ。追い出したいんじゃないです。ただ、御せないのです。抑え込めなくて」

 これまでリヨにされた仕打ちを、教授に話す。

「ほな、その家に居座ってるフェンリルを、手懐けたいと?」
「そうしないと、一人前といえません」

 ペットであるリヨを越えること。
 それがジョシュアの悲願である。

 そうでなければ、リヨは自分から離れてくれないだろう。

 ジョシュア自身も、リヨの手助けを必要としない男にならなければ。

「せやろか? もっと大事な問題があると思うけどな?」

 ゴードン教授は、ミラと視線を合わせる。
 ミラは、首を振るだけ。

「意味ないと思うで。実害は被ってないんやろ?」
「ありますよ。ずっとそばにいます」
「ないやんけ」

 一緒に暮らしすぎて、自分があの家の主だと感覚がマヒしているのだ。
 この間も、メイドと必要以上にイチャついていたし。
 もしメイドにリヨの血筋が混じったら、どうするつもりなのか。

「リヨは基本、無害。気にすることはない」

 ミラも言ってくれるが、彼女のストッパーもいないのも事実なのだ。

「今は、そうかもしれない。でも、あいつを止める力を得ないと、リヨはずっと増長する。更に力をつけて手に負えなくなる前に、止める手段を考えないと」
「そんなに、ザコ呼ばわりされるのはイヤ?」

 ミラが、悲しげな顔をする。

「ワタシは、ジョシュアのいいところをいっぱい知っている。ジョシュアは自分が思っているほど、弱い人間じゃない。親切なところもある」
「せやんけ。ミラはんもそう言ってくれてるんやし、気にせんでええんとちゃうか?」

 ジョシュアは一瞬、心が揺らいだ。
 自分がこんなに慕われているとは、思っていなかった。

「ありがとうミラ。ありがとうございます教授。でも、これでいいんでしょうか?」
「ええねんええねん。同じ土俵で戦おうとするから、アカンねん。あんたの得意なスタイルに持ち込んだらええ。あんたがそのフェンリルより高度なことは何や?」
「そうですね……あいつよりは、漫画を読むのが早いです」

 すぐに飽きてしまうリヨと違い、理解も深い。それは、自負できる。

「お、おう……」

 さすがに、教授でもお手上げだったらしい。

「だったら、彼らを実際に発動させればいい」

 ミラが、アドバイスをくれた。

「ああ、幻想の具現化か。資料があったなぁ。どれやったか。あ、これや」

 机の奥で足置きになっていた本を、教授が出す。

「おもちゃかなにかに仮初の命を吹き込んで、操ると。その能力は、作中の設定に依存する……なるほど」

 イメージは、実体化できる。
 化け物には、化け物をぶつけろ、か。
 これは、使えるかもしれない。

「参考になりました。ありがとうございます」

 教授に続き、ミラにも礼を言う。

「ありがとうミラ。仕事の邪魔をして悪かったね」
「いい。また来て」
「そうだね。リヨに勝ったらまた」
「関係ない。いつでも来て」

 ありがたい。そこまで慕ってくれるなんて。

「いい報告を期待していてくれ。それじゃあ」


 これは、戒めだ。ミラの行為に甘えてはいけない。
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