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第二章 ここからが本当のモフモフだ

コンパの帰り

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 ミラが「出ましょう」と、ジョシュアに提案してくる。

「いいの? スポンサーでしょ?」
「帰っていいことにした。スポンサー権限」

 ちょうどいい。ジョシュアも食事に飽きてきたところだった。

「ああ、そうだ。ラーメンでもどうかな? ごちそうするよ」
「行く」

 ミラには悪いが、別の場所で食べ直したかった。
 もっとガッツリ食べられるのかと思ったが、女性に合わせているのか少しのサイズしかない。本当に、採れた野菜の試食会だったのだろう。

 近くにあるラーメン屋へ、馬車を飛ばす。
 女性でも入りやすい、おしゃれな場所を選んだ。

「うーん、これこれ。背脂がギットギトなんだよ」

 ジョシュアはこってり系の豚骨しょうゆラーメンの、トッピング全部乗せをチョイスする。いつもの店では、これに加えて山盛りのにんにくを入れるのだが、女性連れなので遠慮した。

「興味深い」

 対するミラは、ロカボ系を食べている。味も、カルボナーラ的なパスタ風だ。

「シェア」
「いいの? 食べちゃってるけれど」

 お箸が入ってしまったので汚いと思うのだが、ミラは「シェアしたい」と聞かない。

「うん! じゃあ、どうぞ」

 別にジョシュアだって、独り占めしたいわけじゃない。小鉢に盛って、お互いに味を確かめ合う。

「おいしい!」

 ミラも、背脂のトリコになったようである。

 ジョシュアも、ロカボラーメンの可能性を感じた。これはこれで完成していると。なにより、ミラが箸をつけたものを食べることになって、ドキドキしている。

「ごちそうさま」

 外へ出ると、少し肌寒かった。

 ジャケットを脱ぎ、ジョシュアはミラの肩にかけてあげる。

「ありがと」

 ミラは、ジョシュアの手を握った。

「いつもこういう、おいしいものを食べているの?」
「普段は、もっと安いお店で食べるかな。近くのボロいラーメン屋さんがあるんだけど、ギョーザセットが安くてお腹が膨れるんだ。味は、こっちの方がいいけれど」

 いかにもジャンクを食べている、という気分がして、ついつい食べすぎてしまう。

「そっちも一緒に行きたい」
「ダメダメ! 床が油まみれだよ? 女性なんて呼べないよ」

 手をひらひらさせると、ミラはしょんぼりした。

「いつも一人で食べている?」
「ひとりじゃないね。リヨも一緒だよ」
「わたしも、一緒に食べたい」
「帰ったら聞いてみるね」
「約束」
「うん」

 女性と食事の約束なんて、初めてかも知れない。

 
「で、結局逃げ帰ってきたと」
「そうだよ」

 コンパが終わる二時間前に、ジョシュアはミラと共に家へと帰ったのである。

「別にいいだろ? ミラも退屈そうにしていたんだから」

 部屋着に着替えながら、ジョシュアも言い返す。

「いいわけないでしょ!? なんでヤッちまわないのよ! いい雰囲気だったのに!」
「できるわけないだろっ!? キミじゃあるまいし! そんなことをしたら嫌われる!」
「どうだか。相手は望んでいたんじゃないの!? サインとか出てたでしょ!?」

 ジョシュアは黙り込む。

 女性がそんなビッチな信号なんて送るだろうか。

 ましてや萬年童貞な自分に。

「バッ……カじゃないのアンタ。簡単なシグナルを見落とすとか。バッカみたい!」

 何も悪くないはずなのに、リヨが罵倒してきた。

「ほんとアンタ、マジそういうトコよ! なんで女のサインを察知できないの!? してあげないのかしら? もうバカ! マジでザコねザコジョシュアッ!」

 これ以上ない罵倒が飛んでくる。枕まで飛んできた。

「あああもう、ジャケットかけるとか気遣いはできるのに、女心のアンテナがぶち折れているのが最悪ね。マジ最悪ザコ。〇点……いや、マイナス一〇〇〇点ねっ!」

 はあ~っ、と、大げさにリヨがため息をつく。

「何をそんなに怒ってるんだ、リヨ?」
「教えない! 自分で考えなさい! まったくザコザコだわアンタ!」


 そのまま、リヨはふて寝してしまった。
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