そのモフモフ、メスガキにつき ―三十路DT魔術師、懐かないフェンリルに勝つため鍛えていたら無自覚最強に。ロリダークエルフの彼女までゲット―

椎名 富比路

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第二章 ここからが本当のモフモフだ

童貞をこじらせた魔術師

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「ジョシュアくん、キミに朗報ですぞ!」

 倉庫でポーションのラベル貼りをしていると、メガネのザカリーがジョシュアを呼び止めた。彼は昔、ジョシュアが助けた生徒会のメンバーだ。

「ああ、ザカリーくん。どうしたの?」
「交流会のお知らせがありますぞ。婚期に乗り遅れている男子たちのために、イーデン団長がコンパを主催してくださるそうです! しかも今夜!」

 表向きは、他団体との交流会らしい。

「そうなんだ。気前がいいなぁ」

 さすがイーデン団長だ。太っ腹である。

 とはいえ、自分が行ったところで空気がしらけるだろう。世話焼きなザカリーならともかく、自分のような陰キャと飲んで楽しいなんて思えない。

「いいよ。ボクには、心に決めた人がいるから」
「しばらく会ってないんですよね? ミラ殿と」
「ああ。そうなんだ」

 かれこれ、何年会っていないだろう? 仕事が忙しくて、顔を出せていない。仕事を得てから、家も出て女子寮生活だったと言うし。

「ひょっとすると、コンパにも出席しているかもしせませんぞ! 招待状は、渡しているそうなので!」
「どうかな?」

 ミラの性格では、来ないと思うが。

「もし気が向いたら、出席を! 一人だと心細いのですぞ!」
「考えておく」

 ジョシュアは仕事の合間に、行きつけのレストランへ。

 そこでは、リヨがトレーを持ってサンドウィッチを運んでいるではないか。ミニスカートで、シッポをフリフリしながら。

「うへへ、フェンリルちゃん、一晩付き合えよ」

 労働者風の客が、リヨの尻を触ろうとした。チアガール風の服を着ているから、女の子と間違えているらしい。

「気安く触らないでよブタ。あんたにはヤギがお似合いよ。家畜同士仲良くなさい」

 てっきり客は激昂すると思った。ジョシュアも身構える。
 しかし、男はうっとりとした顔で、去りゆくリヨを眺めた。

「こっちにホットドッグだったわね」

 トレイから料理の乗った皿を、老婆の前に置く。

「ありがとうリヨちゃん。よく働くわね」

 ホットドッグをつまみながら、老婆は愉快そうにリヨへ声をかけた。

「ええ。自慢の白い毛が料理に入らないようにするのがポイントなの」

 リヨが老婆の隣の席に座って、足を組む。

「モフモフの毛並みねぇ。触らせてくれる?」
「もちろんよ。この毛はね、アンタに触ってもらうためにお手入れしているんだから」
「まあ。お上手だこと」

 老婆が、肩から腕を撫でた。

「そうそう、上手よ。ああ、もっと際どいところも触ってちょうだい……」
 リヨのスカートが、ムクムクと起き上がる。下腹部でスカートが、真っ赤なテントを張った。

「なにやってんの?」

 呆れて、ジョシュアはリヨに声をかける。 

「あらジョシュア、おかえりなさい」

 スカートが持ち上がったまま、リヨは立ち上がった。

「どうしたの、リヨ? バイトなんてして」

 ジョシュアが、席に座る。

「おばさんに頼まれたのよ。ぎっくり腰やっちゃったって」

 レストランの経営者から、病欠する自分の代わりに店に立ってくれと頼まれたらしい。

「うまくやっているみたいじゃないか」
「そりゃそうよ。アタシはフェンリルよ。不可能なんてないわ。おばちゃん直伝のカツサンドだって再現できるんだから」

 リヨが「食べてみなさい」と、ジョシュアの前にカツサンドを出した。ソースのいい香りが漂う。

「ホントだ。キャベツのきめ細やかさまで完璧だ」
「でしょ?」

 得意げに、リヨが鼻を鳴らす。

「でも一人で切り盛りって大変なのよ。おばさんが元気になればいいけれど」
「じゃあ、ボクが診てみようか? ちょうど、骨に効果がある軟膏を開発中なんだ」

 リヨに店を任せ、ジョシュアはレストランの主の元へ。

 腰に軟膏を塗ってやると、みるみる回復した。

「ありがとう。これで店に出られるわ」

 腰をなでながら、主が店に立つ。

 リヨは「やるじゃない」とジョシュアの肩をポンと叩く。

「こんなに役に立つ男なのに、いまだいいお嫁さんがいないなんて」

 周囲が結婚ラッシュに湧く中、ジョシュアはまだ童貞だった。
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