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第二章 ここからが本当のモフモフだ
童貞をこじらせた魔術師
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「ジョシュアくん、キミに朗報ですぞ!」
倉庫でポーションのラベル貼りをしていると、メガネのザカリーがジョシュアを呼び止めた。彼は昔、ジョシュアが助けた生徒会のメンバーだ。
「ああ、ザカリーくん。どうしたの?」
「交流会のお知らせがありますぞ。婚期に乗り遅れている男子たちのために、イーデン団長がコンパを主催してくださるそうです! しかも今夜!」
表向きは、他団体との交流会らしい。
「そうなんだ。気前がいいなぁ」
さすがイーデン団長だ。太っ腹である。
とはいえ、自分が行ったところで空気がしらけるだろう。世話焼きなザカリーならともかく、自分のような陰キャと飲んで楽しいなんて思えない。
「いいよ。ボクには、心に決めた人がいるから」
「しばらく会ってないんですよね? ミラ殿と」
「ああ。そうなんだ」
かれこれ、何年会っていないだろう? 仕事が忙しくて、顔を出せていない。仕事を得てから、家も出て女子寮生活だったと言うし。
「ひょっとすると、コンパにも出席しているかもしせませんぞ! 招待状は、渡しているそうなので!」
「どうかな?」
ミラの性格では、来ないと思うが。
「もし気が向いたら、出席を! 一人だと心細いのですぞ!」
「考えておく」
ジョシュアは仕事の合間に、行きつけのレストランへ。
そこでは、リヨがトレーを持ってサンドウィッチを運んでいるではないか。ミニスカートで、シッポをフリフリしながら。
「うへへ、フェンリルちゃん、一晩付き合えよ」
労働者風の客が、リヨの尻を触ろうとした。チアガール風の服を着ているから、女の子と間違えているらしい。
「気安く触らないでよブタ。あんたにはヤギがお似合いよ。家畜同士仲良くなさい」
てっきり客は激昂すると思った。ジョシュアも身構える。
しかし、男はうっとりとした顔で、去りゆくリヨを眺めた。
「こっちにホットドッグだったわね」
トレイから料理の乗った皿を、老婆の前に置く。
「ありがとうリヨちゃん。よく働くわね」
ホットドッグをつまみながら、老婆は愉快そうにリヨへ声をかけた。
「ええ。自慢の白い毛が料理に入らないようにするのがポイントなの」
リヨが老婆の隣の席に座って、足を組む。
「モフモフの毛並みねぇ。触らせてくれる?」
「もちろんよ。この毛はね、アンタに触ってもらうためにお手入れしているんだから」
「まあ。お上手だこと」
老婆が、肩から腕を撫でた。
「そうそう、上手よ。ああ、もっと際どいところも触ってちょうだい……」
リヨのスカートが、ムクムクと起き上がる。下腹部でスカートが、真っ赤なテントを張った。
「なにやってんの?」
呆れて、ジョシュアはリヨに声をかける。
「あらジョシュア、おかえりなさい」
スカートが持ち上がったまま、リヨは立ち上がった。
「どうしたの、リヨ? バイトなんてして」
ジョシュアが、席に座る。
「おばさんに頼まれたのよ。ぎっくり腰やっちゃったって」
レストランの経営者から、病欠する自分の代わりに店に立ってくれと頼まれたらしい。
「うまくやっているみたいじゃないか」
「そりゃそうよ。アタシはフェンリルよ。不可能なんてないわ。おばちゃん直伝のカツサンドだって再現できるんだから」
リヨが「食べてみなさい」と、ジョシュアの前にカツサンドを出した。ソースのいい香りが漂う。
「ホントだ。キャベツのきめ細やかさまで完璧だ」
「でしょ?」
得意げに、リヨが鼻を鳴らす。
「でも一人で切り盛りって大変なのよ。おばさんが元気になればいいけれど」
「じゃあ、ボクが診てみようか? ちょうど、骨に効果がある軟膏を開発中なんだ」
リヨに店を任せ、ジョシュアはレストランの主の元へ。
腰に軟膏を塗ってやると、みるみる回復した。
「ありがとう。これで店に出られるわ」
腰をなでながら、主が店に立つ。
リヨは「やるじゃない」とジョシュアの肩をポンと叩く。
「こんなに役に立つ男なのに、いまだいいお嫁さんがいないなんて」
周囲が結婚ラッシュに湧く中、ジョシュアはまだ童貞だった。
倉庫でポーションのラベル貼りをしていると、メガネのザカリーがジョシュアを呼び止めた。彼は昔、ジョシュアが助けた生徒会のメンバーだ。
「ああ、ザカリーくん。どうしたの?」
「交流会のお知らせがありますぞ。婚期に乗り遅れている男子たちのために、イーデン団長がコンパを主催してくださるそうです! しかも今夜!」
表向きは、他団体との交流会らしい。
「そうなんだ。気前がいいなぁ」
さすがイーデン団長だ。太っ腹である。
とはいえ、自分が行ったところで空気がしらけるだろう。世話焼きなザカリーならともかく、自分のような陰キャと飲んで楽しいなんて思えない。
「いいよ。ボクには、心に決めた人がいるから」
「しばらく会ってないんですよね? ミラ殿と」
「ああ。そうなんだ」
かれこれ、何年会っていないだろう? 仕事が忙しくて、顔を出せていない。仕事を得てから、家も出て女子寮生活だったと言うし。
「ひょっとすると、コンパにも出席しているかもしせませんぞ! 招待状は、渡しているそうなので!」
「どうかな?」
ミラの性格では、来ないと思うが。
「もし気が向いたら、出席を! 一人だと心細いのですぞ!」
「考えておく」
ジョシュアは仕事の合間に、行きつけのレストランへ。
そこでは、リヨがトレーを持ってサンドウィッチを運んでいるではないか。ミニスカートで、シッポをフリフリしながら。
「うへへ、フェンリルちゃん、一晩付き合えよ」
労働者風の客が、リヨの尻を触ろうとした。チアガール風の服を着ているから、女の子と間違えているらしい。
「気安く触らないでよブタ。あんたにはヤギがお似合いよ。家畜同士仲良くなさい」
てっきり客は激昂すると思った。ジョシュアも身構える。
しかし、男はうっとりとした顔で、去りゆくリヨを眺めた。
「こっちにホットドッグだったわね」
トレイから料理の乗った皿を、老婆の前に置く。
「ありがとうリヨちゃん。よく働くわね」
ホットドッグをつまみながら、老婆は愉快そうにリヨへ声をかけた。
「ええ。自慢の白い毛が料理に入らないようにするのがポイントなの」
リヨが老婆の隣の席に座って、足を組む。
「モフモフの毛並みねぇ。触らせてくれる?」
「もちろんよ。この毛はね、アンタに触ってもらうためにお手入れしているんだから」
「まあ。お上手だこと」
老婆が、肩から腕を撫でた。
「そうそう、上手よ。ああ、もっと際どいところも触ってちょうだい……」
リヨのスカートが、ムクムクと起き上がる。下腹部でスカートが、真っ赤なテントを張った。
「なにやってんの?」
呆れて、ジョシュアはリヨに声をかける。
「あらジョシュア、おかえりなさい」
スカートが持ち上がったまま、リヨは立ち上がった。
「どうしたの、リヨ? バイトなんてして」
ジョシュアが、席に座る。
「おばさんに頼まれたのよ。ぎっくり腰やっちゃったって」
レストランの経営者から、病欠する自分の代わりに店に立ってくれと頼まれたらしい。
「うまくやっているみたいじゃないか」
「そりゃそうよ。アタシはフェンリルよ。不可能なんてないわ。おばちゃん直伝のカツサンドだって再現できるんだから」
リヨが「食べてみなさい」と、ジョシュアの前にカツサンドを出した。ソースのいい香りが漂う。
「ホントだ。キャベツのきめ細やかさまで完璧だ」
「でしょ?」
得意げに、リヨが鼻を鳴らす。
「でも一人で切り盛りって大変なのよ。おばさんが元気になればいいけれど」
「じゃあ、ボクが診てみようか? ちょうど、骨に効果がある軟膏を開発中なんだ」
リヨに店を任せ、ジョシュアはレストランの主の元へ。
腰に軟膏を塗ってやると、みるみる回復した。
「ありがとう。これで店に出られるわ」
腰をなでながら、主が店に立つ。
リヨは「やるじゃない」とジョシュアの肩をポンと叩く。
「こんなに役に立つ男なのに、いまだいいお嫁さんがいないなんて」
周囲が結婚ラッシュに湧く中、ジョシュアはまだ童貞だった。
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