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第4話 最強の投資先
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イオリはわたしに、自己投資こそ最強と語る。
「自分の身体こそ資産であり、資本なんだよ」
「……つまり、身体を売れと?」
「ちげーよ」
勉強をすれば、自分に知恵がつく。
健康を考えて行動をすれば、年老いても自分の足で立っていられる。脳も元気なまま。
「何より、自分が好きなことを目標にすれば、どう動けばいいか逆算できる」
お金を今のうちに運用しておけば、時間を味方につけてお金自身が働いてくれるだろう、とのこと。
「それにあたしはさ、Vチューバーなわけじゃん。それって、あたしらが就活生のときにあった仕事?」
「なかったよね」
「でしょ? そもそもさ、三〇年後どんな仕事ができて、どんな会社がなくなっていくかなんてさ、誰にも想像はできないんだよ」
信じられない話だが、三〇年以上前は、日本が世界のトップだった。今は見る影もない。
そう聞くと、いつなにがあるかなんてわからない。
「がっかりした? もっと有用な個別株の情報とか、知りたかった?」
「いいよ、そういうの」
たとえ教えてもらったとしても、わたしなら怖くてそんな株は買わないだろう。
「そうだね。いくらオルカンがいいっていっても、成果が出るのは積立てて一〇年以上かかる。その点、自己投資に全力を注げば、一年もしないうちに結果がついてくるよ」
つい最近亡くなった経済評論家も、「同じ一〇〇万円でも、投資より稼ぐ力を身につけることに使うことが一番重要だ」と語っていたそうだ。
「いや。説得力があるなーって」
わたしが感心していると、「ありがとう」とイオリが告げた。
「マジメに聞いてくれたの、ルカくらいだよ。あたしだってバカにしていたけど、実践して今頃になって、ようやくわかってきたくらいだから」
イオリは個人勢時代に一度、なにもしていないのに体調を崩したことがあるのだとか。理由が判明しなかったが、『運動不足で血の巡りが悪くなっている』と診断された。
このまま個人V活動を続けていれば、身体がおかしくなる。そう考えたイオリは、健康診断を受けられる企業と提携し、そこでV活動をすることにしたという。
「自分に投資するって言っても、具体的にどうすれば」
「好きなことを、徹底的にやる。そのための体力をつけることだよ」
イオリは、断言する。
「あんた、クレーンゲームにマンガのキャラクターを卸すビジネスでやっているわけじゃん。あんた、まだ夢をあきらめてないじゃん。マンガ家になるって目標があるから、それに近い職種を選んだって思わん?」
「うん。そうだね。マンガなどのサブカルならお任せって感じ」
「でしょ? 人より映画も詳しいし、ゲーム実況を仕事にしているあたしより、ゲーマーじゃん」
それって資料というべき内容だろうか、って思うけど。
「あんたは勝手に、好きなことをして生きてる。だから、声をかけてみたんだよね。あんたは、くすぶっているような子じゃないって」
マンガはあきらめなくていいと、アドバイスをしてくれた。
「好きなことがあるってだけでも、すごいことなんだよ? あたしなんて、未だに見つけられていない」
意外だ。
「イオリはてっきり、好きなことをして生きていてすごいなって、思っていたんだけど?」
しかし、イオリは首を横に振る。
「あたしは嫌いなことから、逃げてるだけなんだよね」
イオリはどちらかというと、現実から逃げたいって感情が強いらしい。
「実家でね、大学の卒業後、嫁に出されそうになったの。だから縁を切ってきちゃった」
一人で生きていくしかなくなったが、今の方が幸せだという。リアルはクソと考えているため、バーチャルYouTuberは天職だとは思っているそうだ。
「でもね、一人だけ友だち以上の関係でいたいなって」
ついに、恋人にしたいって人が現れたと? そんな素振りはなかったが。
「ルカ、あんたと一緒になりたい」
「家をシェアしてるじゃん」
わたしがいうと、「そういう意味じゃない」とイオリが告げる。
「実はイオリさん、ルカさんとパートナーシップを組みたいとおっしゃっています」
秘書の小林さんの言葉に、わたしは息を呑んだ。
イオリはわたしを、恋人にしたかったのか。
「自分の身体こそ資産であり、資本なんだよ」
「……つまり、身体を売れと?」
「ちげーよ」
勉強をすれば、自分に知恵がつく。
健康を考えて行動をすれば、年老いても自分の足で立っていられる。脳も元気なまま。
「何より、自分が好きなことを目標にすれば、どう動けばいいか逆算できる」
お金を今のうちに運用しておけば、時間を味方につけてお金自身が働いてくれるだろう、とのこと。
「それにあたしはさ、Vチューバーなわけじゃん。それって、あたしらが就活生のときにあった仕事?」
「なかったよね」
「でしょ? そもそもさ、三〇年後どんな仕事ができて、どんな会社がなくなっていくかなんてさ、誰にも想像はできないんだよ」
信じられない話だが、三〇年以上前は、日本が世界のトップだった。今は見る影もない。
そう聞くと、いつなにがあるかなんてわからない。
「がっかりした? もっと有用な個別株の情報とか、知りたかった?」
「いいよ、そういうの」
たとえ教えてもらったとしても、わたしなら怖くてそんな株は買わないだろう。
「そうだね。いくらオルカンがいいっていっても、成果が出るのは積立てて一〇年以上かかる。その点、自己投資に全力を注げば、一年もしないうちに結果がついてくるよ」
つい最近亡くなった経済評論家も、「同じ一〇〇万円でも、投資より稼ぐ力を身につけることに使うことが一番重要だ」と語っていたそうだ。
「いや。説得力があるなーって」
わたしが感心していると、「ありがとう」とイオリが告げた。
「マジメに聞いてくれたの、ルカくらいだよ。あたしだってバカにしていたけど、実践して今頃になって、ようやくわかってきたくらいだから」
イオリは個人勢時代に一度、なにもしていないのに体調を崩したことがあるのだとか。理由が判明しなかったが、『運動不足で血の巡りが悪くなっている』と診断された。
このまま個人V活動を続けていれば、身体がおかしくなる。そう考えたイオリは、健康診断を受けられる企業と提携し、そこでV活動をすることにしたという。
「自分に投資するって言っても、具体的にどうすれば」
「好きなことを、徹底的にやる。そのための体力をつけることだよ」
イオリは、断言する。
「あんた、クレーンゲームにマンガのキャラクターを卸すビジネスでやっているわけじゃん。あんた、まだ夢をあきらめてないじゃん。マンガ家になるって目標があるから、それに近い職種を選んだって思わん?」
「うん。そうだね。マンガなどのサブカルならお任せって感じ」
「でしょ? 人より映画も詳しいし、ゲーム実況を仕事にしているあたしより、ゲーマーじゃん」
それって資料というべき内容だろうか、って思うけど。
「あんたは勝手に、好きなことをして生きてる。だから、声をかけてみたんだよね。あんたは、くすぶっているような子じゃないって」
マンガはあきらめなくていいと、アドバイスをしてくれた。
「好きなことがあるってだけでも、すごいことなんだよ? あたしなんて、未だに見つけられていない」
意外だ。
「イオリはてっきり、好きなことをして生きていてすごいなって、思っていたんだけど?」
しかし、イオリは首を横に振る。
「あたしは嫌いなことから、逃げてるだけなんだよね」
イオリはどちらかというと、現実から逃げたいって感情が強いらしい。
「実家でね、大学の卒業後、嫁に出されそうになったの。だから縁を切ってきちゃった」
一人で生きていくしかなくなったが、今の方が幸せだという。リアルはクソと考えているため、バーチャルYouTuberは天職だとは思っているそうだ。
「でもね、一人だけ友だち以上の関係でいたいなって」
ついに、恋人にしたいって人が現れたと? そんな素振りはなかったが。
「ルカ、あんたと一緒になりたい」
「家をシェアしてるじゃん」
わたしがいうと、「そういう意味じゃない」とイオリが告げる。
「実はイオリさん、ルカさんとパートナーシップを組みたいとおっしゃっています」
秘書の小林さんの言葉に、わたしは息を呑んだ。
イオリはわたしを、恋人にしたかったのか。
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