64 / 64
第六章 激突、鬼怨組との決闘!
第64話 最終話 JKは今日もダンジョンに潜る
しおりを挟む 朝井さんが俺のパーカーに手を掛けて、チャックを下ろし手を滑り込ませた時だった。
幻聴かもしれないけど、外から足音が近づいてくるのが聞こえた。
でもそれは幻聴ではなく、どんどんと大きくなってくる。
朝井さんもそれに気付いたようで、手の動きを止めた途端、ドアが勢いよく開けられた。
その向こう側には、さっき俺が名を呼んだ、愛しい人。
その後ろにはタケさんがスマホを握りしめ、この状況を見て目を丸くさせていた。
景は室内に入るなり、朝井さんの首根っこを掴んで俺の体から引き離す。
よろけながら立ち上がる朝井さんの胸倉に掴みかかり、右手に力を入れて拳を作ったから俺はぎょっとしたけど、俺よりも早くタケさんが止めに入った。
「わーっ、景ちゃん! さすがに殴るのはまずいよ!」
タケさんが二人を引き離している間に俺は上半身を起き上がらせ、乱れた息を整えた。
た、助かった……
パーカーのチャックを上げると、手首が痛んだ。なんだか捻ってしまったようだった。
景が俺の元に近づいて来て、俺の唇を親指で撫でた。
「大丈夫?」
低くて頼もしい声を聞いて、ようやく安心出来た。
うん、と頷くと景も安堵の表情を浮かべる。
見ると景の額にじんわりと汗が滲んでいて、酷く息切れしていた。
きっと俺の事を懸命に探していてくれたんだ。それが嬉しくて、今度は安堵の涙をほろりと流した。
朝井さんはそんな俺たちに向かって言い放った。
「よく分かったなぁ。ここだって」
景はピクリと方眉を動かすと、朝井さんに視線を移した。
「随分と探しましたよ。桜理は今頃あなたのマンションを訪れているはずです。タケがいなかったらここまでたどり着いてなかったでしょうね。交友関係が広いタケにいろんな方と連絡を取ってもらって、あなたと関係を持った男性達にたどり着きました。決まって出てくる店の名前はここでしたし、ここなら人に会わないですみますからね」
「へぇ」
朝井さんはタケさんの方をちらりと見る。タケさんはその冷たい視線に少したじろいたけれど、タケさんはスマホの画面を朝井さんに見せつけた。
「朝井さん! この事は誰にも言いませんl だから、このまま修介を開放してあげて下さい!」
画面には、俺の上に乗っかる朝井さんの姿があった。
朝井さんはぐっと唇をかんでから、もう一度景に視線を移して言い放った。
「ムカつくんだよな、お前のその目。事務所の力でここまで来れたようなもんだろ? 努力なんかしなくて才能だけで生きてるような奴って、俺本当に嫌いなんだよね」
「違いますっ!」
俺は自然と口から零れていた。そんな俺に景とタケさんは固まっていた。
「景はっ、才能だけでここまで来てるんじゃないんですっ! 言わないだけで、朝井さんが知らないだけで、見えないところで沢山努力してるんですっ! 俺は知ってます、景がいつもどれだけ頑張ってるのか……景の事、悪く言うのはっ、俺がっ許さないですから……っ」
早口になりながら言葉が溢れる俺の肩を、景は優しくポンポンと叩いて、ニコリとした。
そのまま俺を立ち上がらせると、手を引いて何も言わずに部屋を出ようとする景に、朝井さんは自嘲気味に笑った。
「いいよ。一発殴っても。俺お前の一番大事な人に嫌な思いさせちゃったんだぜ? 憎いだろ?」
「殴りませんよ」
景は冷酷に微笑して朝井さんを上から見下ろした。
「殴る価値も無い」
「……言うねえ」
「今度はこんな形じゃなくて、演技で勝負して下さいよ。まあ、僕が負けることは無いですけど」
「楽しみにしてる」
二人で意味深に微笑み合ってから、タケさんを先に部屋から出して、景は俺の手を引いてその場を後にした。
幻聴かもしれないけど、外から足音が近づいてくるのが聞こえた。
でもそれは幻聴ではなく、どんどんと大きくなってくる。
朝井さんもそれに気付いたようで、手の動きを止めた途端、ドアが勢いよく開けられた。
その向こう側には、さっき俺が名を呼んだ、愛しい人。
その後ろにはタケさんがスマホを握りしめ、この状況を見て目を丸くさせていた。
景は室内に入るなり、朝井さんの首根っこを掴んで俺の体から引き離す。
よろけながら立ち上がる朝井さんの胸倉に掴みかかり、右手に力を入れて拳を作ったから俺はぎょっとしたけど、俺よりも早くタケさんが止めに入った。
「わーっ、景ちゃん! さすがに殴るのはまずいよ!」
タケさんが二人を引き離している間に俺は上半身を起き上がらせ、乱れた息を整えた。
た、助かった……
パーカーのチャックを上げると、手首が痛んだ。なんだか捻ってしまったようだった。
景が俺の元に近づいて来て、俺の唇を親指で撫でた。
「大丈夫?」
低くて頼もしい声を聞いて、ようやく安心出来た。
うん、と頷くと景も安堵の表情を浮かべる。
見ると景の額にじんわりと汗が滲んでいて、酷く息切れしていた。
きっと俺の事を懸命に探していてくれたんだ。それが嬉しくて、今度は安堵の涙をほろりと流した。
朝井さんはそんな俺たちに向かって言い放った。
「よく分かったなぁ。ここだって」
景はピクリと方眉を動かすと、朝井さんに視線を移した。
「随分と探しましたよ。桜理は今頃あなたのマンションを訪れているはずです。タケがいなかったらここまでたどり着いてなかったでしょうね。交友関係が広いタケにいろんな方と連絡を取ってもらって、あなたと関係を持った男性達にたどり着きました。決まって出てくる店の名前はここでしたし、ここなら人に会わないですみますからね」
「へぇ」
朝井さんはタケさんの方をちらりと見る。タケさんはその冷たい視線に少したじろいたけれど、タケさんはスマホの画面を朝井さんに見せつけた。
「朝井さん! この事は誰にも言いませんl だから、このまま修介を開放してあげて下さい!」
画面には、俺の上に乗っかる朝井さんの姿があった。
朝井さんはぐっと唇をかんでから、もう一度景に視線を移して言い放った。
「ムカつくんだよな、お前のその目。事務所の力でここまで来れたようなもんだろ? 努力なんかしなくて才能だけで生きてるような奴って、俺本当に嫌いなんだよね」
「違いますっ!」
俺は自然と口から零れていた。そんな俺に景とタケさんは固まっていた。
「景はっ、才能だけでここまで来てるんじゃないんですっ! 言わないだけで、朝井さんが知らないだけで、見えないところで沢山努力してるんですっ! 俺は知ってます、景がいつもどれだけ頑張ってるのか……景の事、悪く言うのはっ、俺がっ許さないですから……っ」
早口になりながら言葉が溢れる俺の肩を、景は優しくポンポンと叩いて、ニコリとした。
そのまま俺を立ち上がらせると、手を引いて何も言わずに部屋を出ようとする景に、朝井さんは自嘲気味に笑った。
「いいよ。一発殴っても。俺お前の一番大事な人に嫌な思いさせちゃったんだぜ? 憎いだろ?」
「殴りませんよ」
景は冷酷に微笑して朝井さんを上から見下ろした。
「殴る価値も無い」
「……言うねえ」
「今度はこんな形じゃなくて、演技で勝負して下さいよ。まあ、僕が負けることは無いですけど」
「楽しみにしてる」
二人で意味深に微笑み合ってから、タケさんを先に部屋から出して、景は俺の手を引いてその場を後にした。
0
お気に入りに追加
8
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜
仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。
森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。
その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。
これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語
今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ!
競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。
まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。
なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。
しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。
探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。
だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。
――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。
Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。
Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。
それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。
失意の内に意識を失った一馬の脳裏に
――チュートリアルが完了しました。
と、いうシステムメッセージが流れる。
それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて
於田縫紀
ファンタジー
東京の南はるか先、聟島に作られた魔法特区。魔法技術高等専門学校2年になった俺は、1年年下の幼馴染の訪問を受ける。それが、学生会幹部3人を交えた騒がしい日々が始まるきっかけだった。
これは幼馴染の姉妹や個性的な友達達とともに過ごす、面倒だが楽しくないわけでもない日々の物語。
5月中は毎日投稿、以降も1週間に2話以上更新する予定です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる