ダンジョンを出禁にされたJK二人組は、母校の旧校舎型ダンジョンを守護するバイトを始めました。

椎名 富比路

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第六章 激突、鬼怨組との決闘!

第56話 突入準備

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「これが、鬼怨おにおん組の屋敷の、見取り図じゃ」

 駄菓子屋のおばさんが、絵画を広げた。
 この絵はミュージアムに展示してあった、大昔に書かれた絵画である。

 隠れていた鬼怨組のアジトは、合宿会場である島の対岸に現れていた。こちらを迎え撃つ姿勢のようである。
 
「かつて鬼を退治した桃太郎が、書き残した地図じゃ」 

 鬼怨組が狙うわけだ。

 おばあさんは絵画のあちこちを指さしながら、冒険者たちに事細かく説明する。

 しかし、あたしたちや勇者連合に対する、具体的なアドバイスはない。

「あたしたちは、どうすればいいのさ?」
 
「お前さんたちには、いらんじゃろ?」

 おばあさんは惜しげもなく、見取り図を床にぶちまけた。国の手で、大切に保管されている絵画なのに。

「この見取り図も、実際どこまで信用していいかわからん。一度襲撃されているからのう。とはいえ、完全改装できるまでの工事はしておらんはずじゃ。ガキどもに、そこまでの技術はないからのう」

 なにより、と、おばあさんは続ける。

「こういうのをすっ飛ばして、正面突破っ! それが一番、奴らには堪える」

 なるほど。綿密に計画を立てている部隊と、遊撃を分けるのね。

 どちらに対処していいか、相手にはわらかなくなる。

「桃太郎も、そうやって鬼に勝ったんじゃ」
 
「やけに、詳しいね?」

「まあのう。色々あったからのう」

 このおばあさんも、若い頃は相当なムチャをしてきたのかもしれない。

「作戦をまとめるぞ」

 トロちゃんが、まとめに入った。

「アタイらドワ女、巳柳みやなぎ、勇者連合は、見取り図どおり計画を進める。なお、召喚が使えるピオニたちだけは別行動な」

「ウチたち駄菓子屋班は、空と陸からの襲撃でいいわね?」

 ピオニとティナ、蓮川はすかわ先輩、野呂のろ先輩は、あたしたち金盞花きんせんか学園と同じチームである。通称「駄菓子屋班」だ。

「バッチリだ。つか、お前らだけでも制圧できそうだな」

「イバラが盗んだ鬼の心臓が、気になるのよね。その力がわかるまでは、打ち合わせ通りブチかましましょう」

「賛成だ。デリオン姫は麝香じゃこうといっしょにバックアップを頼むぞ」

 トロちゃんから話しかけられ、デリオン姫が「おー」と腕を上げた。


 突入の前に、正装をする。

「相手が要求しているのは、【殲滅】ルールじゃ」

 殲滅ルールとは、一度倒された相手は復活できないというルールを差す。
 つまり、いつものように復帰ができない。
 初期、地上に現れたダンジョンはすべて、殲滅ルールだったという。というか、死んだら復活できないのが当然だったらしい。
 
「そのため、制服に特殊な材質を仕込んだ」

 金盞花チームは、自分たちで制服に素材を融合させた。

「すごいね」

 勇者連合も、夏の制服に着替えている。こちらは、おばあさんが素材を仕込んでくれた。

「おー。制服なんて、久々に来たぜ。ティナ、似合ってるか?」

 普段着の上に、ピオニが制服を着込む。

「ピオニったら。でも、似合ってますよ」

「サンキュな。それにしても、これが銃弾も弾くとか」

 続いて、ピオニに弾丸を渡す。
 
「特殊スチール弾。徹甲弾の二倍の殺傷力があるよ」

「殺傷って。殺せないっしょ」

「うむ。じゃが、ダンジョンから退場させることはできるぞ」

 つまり、復活できないってわけか。

「ただし、相手も同じような装備で来るはずじゃ。心してかかれよ」

「ああ。いざとなったら、コイツを使うから」

 あたしは今日、ドラゴンキラーの能力を全開放するつもりだ。

 そうしなければ、イバラには勝てないだろう。

 駄菓子屋から外に出ると、みんなも準備を終えていた。
 
「揃ったな。駄菓子屋ども。じゃ、作戦開始!」


「……まった!」

 いざ出発となる直前、あたしはある提案をする。

「だってさ、せっかくの夏休みなんだよ。因縁の相手とガチのバトルでシメって、つまんなくない? 怨恨が残るだけじゃん」

 
「……お前さぁ! ほんっっっっっ……とに!」

「だめ?」
 
「面白いな!」
 
 この場全員の現地を取れたので、合宿最終日は、あたしの計画で進めることになった。
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