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第五章 鬼族が合宿を襲撃! 防衛ミッション!
第52話 ドロボー組の策略
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「はるたん、試合は!?」
あたしは船を降りて、現場まで駆けつけた。
「普通にウチらが負けた」
会場には、ドロボーチームの勝利を告げるアナウンスが流れている。
お宝を手に入れたドロボーチームは、何人かに別れて逃走を図った。
デリオン姫が地上から、ピオニが空から追跡していた。
だが逃走の際に、蓮川先輩が待ち伏せされたらしい。
それに気を取られて、ピオニが止まったのがいけなかった。
強い戦力が削がれた結果、結局ドロボーチームが逃げ切ったという。
「この状況は?」
「試合とは関係ない。試合の後に起きた話だから」
睡蓮 ティナと、野呂 アスカ先輩が戦っている。
「蓮川先輩を助けたかったら、自分と勝負しろって言ったのよ」
無線で言ってた「負けそう」ってのは、「野呂先輩が、ティナに負けそう」って意味だったらしい。
事実、野呂先輩得意の雷魔法攻撃が、ティナに通じていない。対策でもされているかのようだ。
「あいつ、どういうつもりなん?」
それにしても、強い。
防御一辺倒とはいえ、決めきれないということはなかった。ハンマーを振り回し、「殴りヒーラー」として野呂先輩に襲いかかる。
これがティナの、本来のファイトスタイルだとは。
「ああ、オレたち勇者連合ダンジョン部の部長って、ティナの兄貴なんだよ」
ピオニが、そう教えてくれた。
だから強いのか。部長直々に鍛えられているのだろう。
「いや、そうじゃなくて。どうして、こういう状況になった?」
「狂言誘拐だよ」
答えてくれたのは、ドロボーチームのリーダ、トロちゃんである。
「表向きは、ティナってやつの提案だ。『このままだと勇者連合は、敗北を知らないままで勝ち進んじゃう』ってな」
「どのようなアクシデントにも対応できるように、状況適応力を鍛えろ」と、ティナは兄貴から言われていたらしい。他の部活メンバーに黙って。
「でも本心は、ティナは野呂さんと蓮川さんに、意識し合ってほしいって思ってたらしいぜ」
マジか、と。
あの二人って、そんな関係だったのか。
「勇者とかやってると、私生活がおろそかになるからなー。オレらの家もそうだわ」
たしかにダンジョン部なんてやってると、楽しすぎる。「ダンジョン! ダンジョン!」って、探索で頭がいっぱいになるし。
「かといってさ。ティナがそんなおせっかいをかけてやる必要性って、あるのかよ?」
「そうよね。嘘をついてまで、先輩と戦う道を選ぶなんて」
あたしたちが頭にハテナマークを浮かべていると、トロちゃんがため息をつく。
「……お前らがそういうヤツだから、あたいらに相談が来たんだよ」
ふむふむ。乙女心は、わかりかねますなあ。って、ほっとけ。
「たしかに、女の複雑な心境なんて、ウチらじゃ理解しかねるかも」
「なー」
戦闘の心理戦なら、サラリとわかるだけどな。
「って! 野呂先輩! そっちに逃げたらダメだ!」
さっそく、あたしの闘争本能が危険信号を発した。
野呂先輩の脇腹に、ティナのハンマーがクリーンヒットする。
先輩が、海に落ちていった。
「トドメです!」
ダメ押しで、ティナがハンマーを振り上げて海へダイブする。
あっ。
風魔法で、野呂先輩は飛び上がった。
入れ替わりで、ティナが着水する。
「しくじりました!」
「【エレクトリック】!」
野呂先輩が海に雷を撃ち、ティナを感電させた。
バリバリと身体を震わせて、ティナが落水する。
「ティナ! おい【ゴリゴリくん】、来て!」
召喚したゴリラとともに、ピオニが海に飛び込んだ。ティナを保護して、海から上がってくる。
「ティナくん!」
「おっと、いけねえや。さわるな」
近づこうとした野呂先輩を、ピオニが静止した。
「今アンタが助けなきゃいけないのは、あっち」
ピオニが、蓮川先輩のいる方を指差す。
「わかった」
野呂先輩も理解したようで、蓮川先輩の元へ。
「ティナ。ムチャしすぎ。野呂先輩と戦うなんて。あの人は鈍いけど、ちゃんと強いんだからな」
「自分の気持ちに決着をつけるためなら、戦わなきゃいけなかったんです」
「うーん、よくわからん。とにかくお前の気が済んだんなら、いいか」
「ありがとうございます、ピオニ」
「しょげてるお前に、なんかごちそうしてやろう。なにがいいよ?」
「そうですね。この近くに、おいしいパン屋さんが……ピオニ!?」
ゴリラに抱きかかえられていたティナが、飛び起きた。
「麝香学園が燃えています!」
あたしは船を降りて、現場まで駆けつけた。
「普通にウチらが負けた」
会場には、ドロボーチームの勝利を告げるアナウンスが流れている。
お宝を手に入れたドロボーチームは、何人かに別れて逃走を図った。
デリオン姫が地上から、ピオニが空から追跡していた。
だが逃走の際に、蓮川先輩が待ち伏せされたらしい。
それに気を取られて、ピオニが止まったのがいけなかった。
強い戦力が削がれた結果、結局ドロボーチームが逃げ切ったという。
「この状況は?」
「試合とは関係ない。試合の後に起きた話だから」
睡蓮 ティナと、野呂 アスカ先輩が戦っている。
「蓮川先輩を助けたかったら、自分と勝負しろって言ったのよ」
無線で言ってた「負けそう」ってのは、「野呂先輩が、ティナに負けそう」って意味だったらしい。
事実、野呂先輩得意の雷魔法攻撃が、ティナに通じていない。対策でもされているかのようだ。
「あいつ、どういうつもりなん?」
それにしても、強い。
防御一辺倒とはいえ、決めきれないということはなかった。ハンマーを振り回し、「殴りヒーラー」として野呂先輩に襲いかかる。
これがティナの、本来のファイトスタイルだとは。
「ああ、オレたち勇者連合ダンジョン部の部長って、ティナの兄貴なんだよ」
ピオニが、そう教えてくれた。
だから強いのか。部長直々に鍛えられているのだろう。
「いや、そうじゃなくて。どうして、こういう状況になった?」
「狂言誘拐だよ」
答えてくれたのは、ドロボーチームのリーダ、トロちゃんである。
「表向きは、ティナってやつの提案だ。『このままだと勇者連合は、敗北を知らないままで勝ち進んじゃう』ってな」
「どのようなアクシデントにも対応できるように、状況適応力を鍛えろ」と、ティナは兄貴から言われていたらしい。他の部活メンバーに黙って。
「でも本心は、ティナは野呂さんと蓮川さんに、意識し合ってほしいって思ってたらしいぜ」
マジか、と。
あの二人って、そんな関係だったのか。
「勇者とかやってると、私生活がおろそかになるからなー。オレらの家もそうだわ」
たしかにダンジョン部なんてやってると、楽しすぎる。「ダンジョン! ダンジョン!」って、探索で頭がいっぱいになるし。
「かといってさ。ティナがそんなおせっかいをかけてやる必要性って、あるのかよ?」
「そうよね。嘘をついてまで、先輩と戦う道を選ぶなんて」
あたしたちが頭にハテナマークを浮かべていると、トロちゃんがため息をつく。
「……お前らがそういうヤツだから、あたいらに相談が来たんだよ」
ふむふむ。乙女心は、わかりかねますなあ。って、ほっとけ。
「たしかに、女の複雑な心境なんて、ウチらじゃ理解しかねるかも」
「なー」
戦闘の心理戦なら、サラリとわかるだけどな。
「って! 野呂先輩! そっちに逃げたらダメだ!」
さっそく、あたしの闘争本能が危険信号を発した。
野呂先輩の脇腹に、ティナのハンマーがクリーンヒットする。
先輩が、海に落ちていった。
「トドメです!」
ダメ押しで、ティナがハンマーを振り上げて海へダイブする。
あっ。
風魔法で、野呂先輩は飛び上がった。
入れ替わりで、ティナが着水する。
「しくじりました!」
「【エレクトリック】!」
野呂先輩が海に雷を撃ち、ティナを感電させた。
バリバリと身体を震わせて、ティナが落水する。
「ティナ! おい【ゴリゴリくん】、来て!」
召喚したゴリラとともに、ピオニが海に飛び込んだ。ティナを保護して、海から上がってくる。
「ティナくん!」
「おっと、いけねえや。さわるな」
近づこうとした野呂先輩を、ピオニが静止した。
「今アンタが助けなきゃいけないのは、あっち」
ピオニが、蓮川先輩のいる方を指差す。
「わかった」
野呂先輩も理解したようで、蓮川先輩の元へ。
「ティナ。ムチャしすぎ。野呂先輩と戦うなんて。あの人は鈍いけど、ちゃんと強いんだからな」
「自分の気持ちに決着をつけるためなら、戦わなきゃいけなかったんです」
「うーん、よくわからん。とにかくお前の気が済んだんなら、いいか」
「ありがとうございます、ピオニ」
「しょげてるお前に、なんかごちそうしてやろう。なにがいいよ?」
「そうですね。この近くに、おいしいパン屋さんが……ピオニ!?」
ゴリラに抱きかかえられていたティナが、飛び起きた。
「麝香学園が燃えています!」
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