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第五章 鬼族が合宿を襲撃! 防衛ミッション!
第50話 合宿二日目 豪華客船 防衛ミッション
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「すいません。おまたせしました、みなさーん」
「あ、ティナ戻ってきた」
集合時間ギリギリで、ティナが現地入りした。
結局、ティナは採掘用ダンジョンには潜らなかったらしい。
「忘れ物を取りに行っていた」と話すが、それまで時間がかかるとは。
「なにを取りに戻ってたん?」
「パッドですぅ」
語弊がないように言うが、ティナはいわゆる偽乳ではない。胸を整えるために、むしろパッドが必要なのだという。乳を補強せねばならんとは、どんだけ殺人的なバストなのか。
うらやま。
「なかなか、水着にフィットしなくて」
「その割には、遅かったわね。人を呼んで、ヘルプしてもらうって手もあったのに」
はるたんが、疑いの視線を向ける。
「あれじゃないの、モモ? ティナはテキ屋の【朝イチボーナス】を、狙っていたとか」
「ああ。宿のメダルゲームのことか? あたしも寝る前にやった」
麝香学園が手配した宿泊施設には、【テキ屋】という、古いメダルゲームの筐体がある。
一〇円硬貨を弾いて所定の穴に入れるという簡単なルールなのだが、ハマるとやみつきになってしまう。
「そう。【朝イチボーナス】ってレアが出るガチャ要素が高まるから、中毒性が高いの」
テキ屋の筐体には、「朝イチボーナス」というのがある。ハズレ穴が一つ増える代わりに、レアを排出する確率が上がるのだ。
「あれは、朝でも遊んじゃうかも。ティナも、あのゲームの魅力に取りつかれたんじゃない?」
「あ、う。実は……」
ティナが、苦笑いをした。図星をつかれたか。
「もう。遊ぶのは、ほどほどにしてよね。ティナ」
蓮川先輩が、ティナをたしなめた。
「すいません」と、ティナは頭を下げる。
だがその視線は、むしろ蓮川先輩を心配しているように見えた。
……気のせいか?
一瞬チラっと、野呂先輩にも目を向けたような。
「金盞花の皆さん、ごめんなさいね。ウチの後輩がポカをやらかして。叱っておきましたから」
「いえいえ。ウチらも、あのゲームは寝る前にやってしまうから」
時間には間に合ったんだから、いいだろう。
「よっしゃ、いくぞー」
あたしたちは、豪華客船を防衛するミッションを行う。
具体的には、「逃げる民間人の救出」と「お宝の奪還」を同時に行うのだ。
捕まっていた民間人は、あっという間に救出できた。ピオニの召喚獣であるデカい鳥に乗りながら、上空からはるたんが的確に指示を送っていたためである。
「私が前線を押し上げます。うおおおおお!」
盾を装備した蓮川先輩が、ギャングに扮した冒険者たちをぶっ飛ばす。ドワ女さえ、その勢いを殺せない。
すごいな。これが勇者か。
あたしは、民間人役の妖怪たちを避難させる。
船首で避難民の誘導をしていると、一人の冒険者が。
「妹が世話になったそうだな! 手合わせ願おうか!」
昨日あたしが倒した、忍者風冒険者のお兄さんのようだ。鉄棍を手に、あたしに襲いかかる。
「うわうわうわ!」
強い! 連続攻撃にスキがねえ!
冒険者の中にも、こんな相手がいるから楽しい。
こんなに強いのに、名前も知られていないとは。
名前も知らない強豪が、まだまだたくさんいるんだな。
とはいえ、あたしはまだドラゴンキラーを開放しない。
ウインドカッター浴びせ蹴りで、相手の鉄棍を叩き落とす。
「とどめ……ぐふう!?」
斬りかかろうとしたとき、あたしのノドに鉄棍がめり込む。
とっさに後ろに下がっていなかったら、クリーンヒットであたしは気絶していたかも。
叩き落としたはずなのに、この立ち直りの早さよ。
魔法で身体を強化していなかったら、危なかった。
「あの攻撃を受けて、まだ立つとは!」
「まだまだ! 不意打ちはもっと効果的にやらんと!」
「ならば正面から!」
再び、冒険者は突きにかかる。
「それはもう見たんで!」
相手の鉄棍を、あたしは飛びかかって抱き込む。【ドラゴンスクリュー】という、プロレス技だ。本当は足を抱え込む技なのだが、あたしの狙いは相手の腕だ。
鉄棍を手放そうとするが、あたしは腕まで抱え込んでいるため放れない。
「ぐあ!」
冒険者は投げられながらも、体勢を立て直そうとした。しかし、船首の手すりに側頭部を打ち付ける。
「あんたの相手をしている場合じゃないんで。なあ、パニさん」
はるたんが乗っていた召喚獣の鳥が、何者かに攻撃を受けて消滅した。
きっと、パニさんだろうと当たりをつけたが、正解のようである。
地雷系の水着を着たパニさんが、華麗に着地をした。
遅れて、はるたんが着地する。
「なんなら、二人がかりでもいいっすよ」
後ろにいるはるたんに、パニさんが目配せをした。
「ウチはいいわよ。モモ、やっちゃって」
はるたんは、避難民のガード役に回る。
前回はミッションが終わってしまい、パニさんとは決着をつけられなかった。
「今回は、オイラがミッションのカギを握っているっす」
パニさんが、黒く光る物体を手にした。
お宝は、黒い大きなサザエである。
「これこそこの島に伝わる伝説の秘宝、【うつぶし色の心臓】っす。桃太郎が退治した鬼の、心臓らしいっすよ」
「あ、ティナ戻ってきた」
集合時間ギリギリで、ティナが現地入りした。
結局、ティナは採掘用ダンジョンには潜らなかったらしい。
「忘れ物を取りに行っていた」と話すが、それまで時間がかかるとは。
「なにを取りに戻ってたん?」
「パッドですぅ」
語弊がないように言うが、ティナはいわゆる偽乳ではない。胸を整えるために、むしろパッドが必要なのだという。乳を補強せねばならんとは、どんだけ殺人的なバストなのか。
うらやま。
「なかなか、水着にフィットしなくて」
「その割には、遅かったわね。人を呼んで、ヘルプしてもらうって手もあったのに」
はるたんが、疑いの視線を向ける。
「あれじゃないの、モモ? ティナはテキ屋の【朝イチボーナス】を、狙っていたとか」
「ああ。宿のメダルゲームのことか? あたしも寝る前にやった」
麝香学園が手配した宿泊施設には、【テキ屋】という、古いメダルゲームの筐体がある。
一〇円硬貨を弾いて所定の穴に入れるという簡単なルールなのだが、ハマるとやみつきになってしまう。
「そう。【朝イチボーナス】ってレアが出るガチャ要素が高まるから、中毒性が高いの」
テキ屋の筐体には、「朝イチボーナス」というのがある。ハズレ穴が一つ増える代わりに、レアを排出する確率が上がるのだ。
「あれは、朝でも遊んじゃうかも。ティナも、あのゲームの魅力に取りつかれたんじゃない?」
「あ、う。実は……」
ティナが、苦笑いをした。図星をつかれたか。
「もう。遊ぶのは、ほどほどにしてよね。ティナ」
蓮川先輩が、ティナをたしなめた。
「すいません」と、ティナは頭を下げる。
だがその視線は、むしろ蓮川先輩を心配しているように見えた。
……気のせいか?
一瞬チラっと、野呂先輩にも目を向けたような。
「金盞花の皆さん、ごめんなさいね。ウチの後輩がポカをやらかして。叱っておきましたから」
「いえいえ。ウチらも、あのゲームは寝る前にやってしまうから」
時間には間に合ったんだから、いいだろう。
「よっしゃ、いくぞー」
あたしたちは、豪華客船を防衛するミッションを行う。
具体的には、「逃げる民間人の救出」と「お宝の奪還」を同時に行うのだ。
捕まっていた民間人は、あっという間に救出できた。ピオニの召喚獣であるデカい鳥に乗りながら、上空からはるたんが的確に指示を送っていたためである。
「私が前線を押し上げます。うおおおおお!」
盾を装備した蓮川先輩が、ギャングに扮した冒険者たちをぶっ飛ばす。ドワ女さえ、その勢いを殺せない。
すごいな。これが勇者か。
あたしは、民間人役の妖怪たちを避難させる。
船首で避難民の誘導をしていると、一人の冒険者が。
「妹が世話になったそうだな! 手合わせ願おうか!」
昨日あたしが倒した、忍者風冒険者のお兄さんのようだ。鉄棍を手に、あたしに襲いかかる。
「うわうわうわ!」
強い! 連続攻撃にスキがねえ!
冒険者の中にも、こんな相手がいるから楽しい。
こんなに強いのに、名前も知られていないとは。
名前も知らない強豪が、まだまだたくさんいるんだな。
とはいえ、あたしはまだドラゴンキラーを開放しない。
ウインドカッター浴びせ蹴りで、相手の鉄棍を叩き落とす。
「とどめ……ぐふう!?」
斬りかかろうとしたとき、あたしのノドに鉄棍がめり込む。
とっさに後ろに下がっていなかったら、クリーンヒットであたしは気絶していたかも。
叩き落としたはずなのに、この立ち直りの早さよ。
魔法で身体を強化していなかったら、危なかった。
「あの攻撃を受けて、まだ立つとは!」
「まだまだ! 不意打ちはもっと効果的にやらんと!」
「ならば正面から!」
再び、冒険者は突きにかかる。
「それはもう見たんで!」
相手の鉄棍を、あたしは飛びかかって抱き込む。【ドラゴンスクリュー】という、プロレス技だ。本当は足を抱え込む技なのだが、あたしの狙いは相手の腕だ。
鉄棍を手放そうとするが、あたしは腕まで抱え込んでいるため放れない。
「ぐあ!」
冒険者は投げられながらも、体勢を立て直そうとした。しかし、船首の手すりに側頭部を打ち付ける。
「あんたの相手をしている場合じゃないんで。なあ、パニさん」
はるたんが乗っていた召喚獣の鳥が、何者かに攻撃を受けて消滅した。
きっと、パニさんだろうと当たりをつけたが、正解のようである。
地雷系の水着を着たパニさんが、華麗に着地をした。
遅れて、はるたんが着地する。
「なんなら、二人がかりでもいいっすよ」
後ろにいるはるたんに、パニさんが目配せをした。
「ウチはいいわよ。モモ、やっちゃって」
はるたんは、避難民のガード役に回る。
前回はミッションが終わってしまい、パニさんとは決着をつけられなかった。
「今回は、オイラがミッションのカギを握っているっす」
パニさんが、黒く光る物体を手にした。
お宝は、黒い大きなサザエである。
「これこそこの島に伝わる伝説の秘宝、【うつぶし色の心臓】っす。桃太郎が退治した鬼の、心臓らしいっすよ」
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