ダンジョンを出禁にされたJK二人組は、母校の旧校舎型ダンジョンを守護するバイトを始めました。

椎名 富比路

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第四章 島全体がダンジョン! ダンジョン部たちのなつやすみ

第46話 一日の終りは、温泉で

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「イバラをやっつけたら、鬼怨だって瓦解しそうじゃね?」
 
「モモのいうとおりよ。ああいうのは、柱をぶっ潰したら一気に傾くわよ」

「みんなも、そんな感じでいいか?」

 他の学校に聞いても、問答無用で合宿継続を希望した。

 大人の冒険者たちも、あたしたちの意思に賛同してくれる。

「というわけで、嵐山さん。合宿の最終日は、イバラを潰しに行くから」

 それまでは、生かしておいてやろう。
 ヤツらがおてんとさんを拝める日は、あさってまでだ。

「わかりました。まったくあなたがたの闘争本能には、驚かされますね。ですが……」

 あたしの意見に、嵐山氏はため息をつく。

「イバラの潜伏先が、わかりません。ドローンで逃げたイバラを追跡しましたが、ドローンを破壊されてしまいました」

「まあ、また合宿していたら出てくるっしょ」

「わかりました。合宿は継続します。ですが鬼怨を相手にするなら、本当に身の安全は保証できかねます。自分のことは、ご自身で守ってください」

「OKOK」

「本来ならば、『我々が全力でサポートします』というべきところなのに。代表である身として、こういう言い方しかできず、情けなく感じています」
 
「いいって! すごくがんばってるじゃん。嵐山さんは! そうだよな?」

 あたしだけじゃない。みんな、麝香じゃこう学園のがんばりをわかっている。

「というわけで、大変だけどさ。これからも合宿、楽しみにしているから」

「はい。今日はゆっくり休んでください。あれだけの大立ち回りの後です。鬼怨おにおんだって、休息しているでしょうし」

 よっしゃ、風呂に入って寝るか。


 
 この島は、温泉地でもあるらしい。

「おーっ。仕上がってんなあ!」

 大浴場は、岩風呂だ。

 灼熱の真夏といえど、温泉はテンションが上がる。

 あたしたちは、さっそく湯に浸かった。

「みなさん、スタイルがよくてうらやましいわね」

 スレンダーな蓮川はすかわが、あたしたちのプロポーションをうらやましがる。

「でも、一番ナイスバディなのって、ティナだよな」

 さっそくのぼせたのか、ピオニは木製のベンチで寝そべっていた。

「うんうん。オレら女子の中でも、全校生徒でトップなんだってさ」

 そのティナは、デリオン姫の背中を流してやっている。

「ティナ。そのおっぱいで、スリスリしてやってもいいぞ」

「そのほうが、気持ちいいんですか?」

「気分的に」

「では……」

 冗談のつもりが、ティナは本気にしてしまった。バスタオルに石鹸をつけて胸に当て、ゴシゴシと背中をさする。

「おふ、おう」

 デリオン姫が、小学生のオスガキみたいな声を上げ始める。

「姫様、トリップしていますから!」

 従者の綿毛が慌てて、姫にお湯をかけた。
 
「はっ。ママに抱っこされてる夢を見ていたのだ」

「お妃様は、姫と対して変わらないスタイルでございますっ」

 精神耐性の強いエルフに、幻想まで見せてくるとは。ティナ、恐るべし。 

「てっきり、ピオニが一番胸でかいって思っていたけどな」

「オレは、そうでもないんだよ。春子はること同じくらいで、形が違う感じ」

 はるたんが洋ナシ型なら、ピオニはロケットバストだ。
 
「ン?」

 あたしは、温泉の看板を確認する。

「ここって混浴なんだよな~。野呂のろさん呼ぶか?」

 水着もあるし、大事なところを見られる心配はない。

「バカ言わないでよ! ここにアスカなんて呼んだら、あの子は卒倒してしまうわ!」

 蓮川が、身体を隠す。

「それにしても、七星ななほしさん」

「ん?」

「どうして、勇者連合を受けなかったの?」

 蓮川先輩に続き、ピオニも「そうだよ」とベンチから身体を起こす。

「おめえの腕なら、勇者連合だって二つ返事で入学OKなのに。金盞花きんせんか女子って、元々ダンジョン部がなかったんだろ?」

「おーん」

 はるたんが「ダンジョン部がない学校に通いたい」と言ってきたので、離れ離れは覚悟していた。金盞花からスカウトの通知がなかったら、勇者連合へ入学も考えたかも。

「あなたがウチに来てくれたら、めんどくさいピオニのお世話も任せられたのに」

 蓮川先輩、かなり苦労させられてるんだな。

「でもなあ、勇者連合って都内じゃん。バイトの手伝いができんくなる」

 金盞花女子もウチの実家も、郊外だ。金盞花も、家から目と鼻の先にある。

「タフだなあ。ダンジョン潜って、バイトもするのかよ」

 ピオニの実家も店屋らしいが、手伝わないという。 

「つーか。なにより、はるたんがいるってのがデカいんだよな」

 はるたんがいるから、ダンジョン部が新たにできたから、というのが、金盞花を選んだ理由である。でも、はるたんの存在が一番大きい。

「だから、勇者連合の校風がキライってわけじゃないから」
 
 とはいえ勇者連合は、あたしが通うにはあまりにもガチすぎだ。
 
 はるたんとユルいペースで攻略するのが、一番性に合っている気がする。
 
「あ~あたしはやっぱり、こういうユルい活動のほうがスキだな」

「そうね。ウチらに慌ただしい戦場は、似合わないわよ」

 湯に身体を浮かばせながら、あたしとはるたんは同じことを考えていた。


(第四章 おしまい)
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