ダンジョンを出禁にされたJK二人組は、母校の旧校舎型ダンジョンを守護するバイトを始めました。

椎名 富比路

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第四章 島全体がダンジョン! ダンジョン部たちのなつやすみ

第45話 合宿中止か、継続か

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 突然、各校ダンジョン合宿の中止を検討中と言われて、全学校の生徒が動揺する。

 そこまでの相手なのか、鬼怨おにおん組とは。

嵐山あらしやまさんよぉ! そもそもアイツら、なんなん!? 田舎のヤンキーか? 地元のヤーさんか?」

 怒ったあたしは、麝香じゃこう学園代表の嵐山生徒会長に詰め寄った。

「彼らは一言でいうと、田舎のチンピラです。七星ななほしさん」

 一番タチ悪いやつらやんけっ!
 
「彼らは現状の『ユルいダンジョン活動』に、嫌気が差しています」

 そのため、各地で様々な嫌がらせを行っているという。

「いわゆる、ダンジョン攻略ガチ勢ってわけ?」

七星ななほしさんの言葉を借りるなら、そうですね。ですが、ニュアンスはちょっと違います」

 鬼怨が求めているのは、生と死が隣り合わせの、文字通り人間対魔物の戦争だという。

「昔から、こういった嫌がらせが続いています。妖怪軍団の数が多いので、さすがの鬼怨もうかつに手が出せないでいます。が、イバラはその均衡を破ろうと画策していまして」

 話を聞く感じだと、イバラは鬼怨組でもかなりの秘蔵っ子らしい。

「言い分は、わからんでもないんだよなあ」

 中年の冒険者が、ポツリとつぶやく。見た目からして、獣人族のようだ。

「どういう意味ですか!? 鬼怨のやり方を肯定するとでも!?」

 さっそく勇者連合高校の蓮川はすかわ副会長が、噛みついた。

「いやさ、そうは言ってないよ。おれらってかつては、ギリギリそういう経験をしていたわけよ。野生が滾るっていうか」

 獣人冒険者の発言に、エルフの狩人がうなずく。

「不謹慎ではありますが、冒険者さんのお話もわかります。やはりダンジョンとは、闘争本能を掻き立てるものがあるのですよ」

 ドワ女を引率している先生も、同じ意見のようだ。

 彼らも『いつかまた、そういう経験をしてみたいな』って気持ちが、なくなったわけじゃないらしい。

「ですが、規約としては認められません」

 なおも、蓮川は食い下がる。

「うん。キミの言う通りだよ。おれらは、現状には満足しているよ。だから、鬼怨おにおん組のやり方は気に食わない」

 いくら歴戦の冒険者と言えど、鬼怨組に賛同するものはいなかった。
 
「アイツらの出身って、鬼神きしん高校とか言ってたじゃん。どうにかならんの?」

「どうにもなりません。先程、鬼神高校の教員一同が、謝罪に来ました」

「マジかよ」

 それによると、もはや鬼神高校は鬼怨おにおん組の傘下であり、彼らの暴動は手に負えないのだそう。

「屈強な教師が、イバラという問題児を取り押さえようとしました。今は病院のベッドの上で、うめいているそうです」

 大人でも、止められないってわけかよ。 

「そこで、我々麝香学園は、金盞花の校長とも話し合って、合宿の中止を表明しようかと」

 冒険者も交えて、マジメに合宿を行おうとした。が、鬼怨はもう誰に求められない。

「もうみなさんの安全を、保証できなくなりました」

「冗談じゃないわ!」

 まっさきに異議を唱えたのは、蓮川だった。

「私たちは、冒険者よ。むしろこんな事態のために、今までトレーニングを重ねてきたのよ。日和ってたまるもんですか!」

 おとなしい大人組とは対照的に、蓮川は熱い言葉をみんなに投げつける。

「だよなー。ぶっ潰さなきゃいけないのは、あっちだし」

「モモのいうとおりね。ウチらも不満だし」

 あたしの言葉に、はるたんも賛同した。

「ところで、鬼怨組の親はどうなのよ? 親分っていうか」

「現状、地球における鬼怨のトップは、イバラなんだそうです」

 鬼怨の組長並びに幹部は、もう地球にいないそうだ。「地球は若頭が制圧したらいいだろう」と、全権を委ねているらしい。

「トップを持たないチンピラにすべてを任せるとか、無責任すぎるな」

「むしろ地球を無法地帯にしたいなら、ベストなチョイスだわ」

 だったら、イバラを潰せばいい。
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