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第四章 島全体がダンジョン! ダンジョン部たちのなつやすみ

第44話 鬼のリーダー イバラ

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「俺の名は【イバラ】! 鬼神きしん高校一年にして、鬼怨おにおん組の若頭だ!」

 赤い肌に、黒の儀式的なメイクをした、袴の男性である。虎柄の紋付袴は、どうやら制服のようだ。野球の応援団かな? しかし見た目からして、強そうだ。話が通じなさそう、とも言える。

「ニンゲンの女! 調子に乗ってんじゃねえぞ!」

 イバラが、腰の刀を抜く。二刀流か。
 
金盞花きんせんか学園、一年の七星ななほし 洲桃すもも! ケイドロのイベント中にガチ勢が乗り込んでんじゃねえよ!」

「うるせえ! こんなヌルい生活、お前だって耐えられねえだろ! 俺たちは冒険者に、刺激を与えてやってんだよ!」

「余計なお世話なんだよ!」

 あたしの【ドラゴンキラー】と、イバラの刀が火花を散らす。

 鍔迫り合いの中、イバラが脇差しで突いてきた。

「刀は、こっちにだってあるんだよ。ウインドゥ、カァタ!」

 風魔法を乗せた回し蹴りで、こちらも応戦する。

 あたしのキックが、脇差しを弾き飛ばした。

「どこまでも、忌々しい女だぜ!」

「ムカつくのは、そっちだろうが!」
 
 トラックがとうとう、鉄橋に差し掛かる。
 
「覚悟しろよニンゲ……ぐお!」

 崖の上から、巨大なゴリラが体を丸めながら転がってきた。積み荷を残す形で、トラックの部分にアタックをかます。

 だが、あたしたちも海に落ちかける。
 
「【ピーたん】、キャッチ!」

 モンジャの上から、ピオニが空に号令をかけた。
 
 はるたんを乗せていたバカでかい鳥の魔物が、トラックの荷台とアタシを足で掴む。

「クソザルがぁ!」

 トラックとイバラだけが、海に落ちていった。

「ナイス、ピオニ!」

 釣り上げられたままで、あたしはピオニにサムズ・アップする。

 ピオニも、親指を立て返してきた。

「このままで済むと思うなよ!」
 
 負け惜しみのセリフを吐きながら、イバラは凄まじいスピードで海を走り抜ける。
 水上を移動できるのかよ。

『モモ、無事なの!?』

「おーう」

 あたしは、空に向かって手を振った。

「洲桃。よく、オレが【ゴリゴリくん】を配置していたのがわかったな」

「なんか、毛むくじゃらの球体があるなーって思ってたら、ゴリラかよ! って」

 視線をごまかすのに必死だったのを、思い出す。

 しかしイバラには感づかれたようで、対応されてしまった。
 ヤツにゴリラアタックを、クリーンヒットさせたかったのだが。




 
 
 夕飯を囲んで、感想会に。
 大鍋に盛られた水炊き、全員が箸をつける。

 イバラには逃げられたが、トラックを運転していた鬼族は逮捕したようだ。
 しかし下っ端なので、大した情報は得られなかったらしい。
 とはいえ、今後も合宿に対する襲撃が予想される。

「みなさん、今日は大変でしたね。お疲れ様でした」

 お料理は運営の麝香じゃこう学園と、勇者連合高校の睡蓮すいれん ティナが担当したらしい。ティナはずっと、負傷した冒険者たちの治療にあたっていたという。

「それにしても、今日はどうしたん? 盗賊団チームはよぉ?」

 あたしのことも足止めして、楽勝モードだったはずなのに。
 
「実は……」

 なぜか、巳柳みやなぎ高校の愚地おろち三姉妹がシュンとなっている。
 
「聞いた話だと、ウチのトロちゃんと巳柳の三姉妹が、手柄を巡って対立したそうなんすよ」
 
 そこに、勇者の蓮川はすかわ副長に、まとめて拘束されたという。

 


「セキュリティを解除したのは、我々ですわ」

「でも、警備兵を止めたのはあたいらだろうが!」

 巳柳とドワ女は、まだケンカをしていた。
 
「そこまでよ。どちらも健闘したけど、チームワークの乱れは思わぬ隙を作るわ」

 当の蓮川が、二校の間に割って入る。

「おめえ強えな」

「伊達に問題児だらけの勇者を、まとめ上げていませんから」

「エドワード大学付属女子三年、トローゼ・フィングスだよ」

「勇者連合高校、蓮川はすかわ なこよ。よろしく」

 勇者とドワーフが、固い握手を交わす。

「イバラですか……」

 あたしの話を聞いて、生徒会長の嵐山あらしやま氏が苦い顔をした。

「七星さんの話を聞いて、運営側で『合宿を中止にしようかどうか』と、話し合っていたんです」
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