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第三章 アウェー戦! 今度はこっちが攻め込むぜ!

第22話 蛇塚

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 勝手に巳柳みやなぎ高校との対戦を承諾したことで、あたしは晴子はるたんに責められた。

「いい、モモ? 全国ダンジョン部において、愚地おろち三姉妹と巳柳みやなぎ蛇塚ヘビヅカを知らない人はいないわ」
 
 はるたんが、女の子モードで話す。つまり今は、いわゆる「ガチモード」だ。はるたんは強敵を前にすると、女性らしい言葉遣いに戻る。家だと常時、こんな感じだ。つまり、家ではリラックスできていないってわけである。

愚地おろち三姉妹ってのは、実質親戚同士の集まりなのよ。本家の長女友希那ゆきな、間に次女ポジションの分家筋トップ、三澄みすみ、三女が確か、友希那の妹だったっけな? 名前はたしか、青葉あおばだったわね」

 それぞれ「クチナワの友希那」、「ウワバミの三澄」、「アオダイショウの青葉」というあだ名が付けられているとか。

「この家は結構複雑な家庭事情があって、友希那と青葉は、母親が違うわ」

 友希那は、愚地の前妻の娘である。

「父親は、友希那と同じなんだよな?」

「青葉の母親は、先代三女の孫なのだ。つまり、友希那の父親といとこ同士なんです」
 
 いとこ同士の間に産まれたのが、青葉だというわけか。

「長女の親が離婚した後で、結ばれた?」

「違うのだ」
 
「まさか、親戚間で不倫したというわけ?」

「そうなのだ」

 二人は幼馴染で、仲が良かったらしい。長女の母親と結婚した数年後に、三女の孫の妊娠が発覚したという。

「そのため友希那の母親とギクシャクして、離婚しているのだ」

「めんどくさ」

 これ以上は、追求しない。脳内家系図が、えらいことになってきた。こっちの方が、蛇塚じゃねえか。
 
「まだ長女・友希那だけだった当時の、巳柳みやなぎ高校ダンジョン部の映像が、あるわ。そのときの様子が、これよ」

 長女しか入学していないってことは、友希那って奴が一年のときだな。

 上級生を差し置いて、友希那が無双をしている。

 戦闘スタイルは毒ナイフであり、三澄と変わらない。しかし三澄のような攻撃的ファイトというより、相手のスキをつくヒットアンドアウェイな戦い方だ。
 これは、手強いかも。

「すっご! 一年のときから、こんなに強かったのかよ!」

「今は、もっと洗練されているでしょうね」

 しかも、これで手を抜いているんだとか。

 あたしは、唖然となる。
 
「前の戦いは三澄だけだったから、あんたもヨユーで戦っていたのか」

「そんな感じかしら? こっちが魔王側だったからね。純魔なウチからしたら、御しやすい相手だったかも。三人いない愚地三姉妹なんて、特に恐るるに足らないから」
 
 とはいえ、今度は三姉妹全員が相手だ。あたしらは、勝てるのか?

 まして、今回は三女のデビュー戦だ。つまり、情報がないのである。

 そんな状況の中、勝つ見込みは?

「まあ、そのためにドワ女から勝利報酬をもらってきたわ」

 はるたんが、「ドドーン」と、大げさ目に口でファンファーレを流す。

 現れたのは、一八〇センチあるかないかの、大型のヨロイだ。頭部がフルフェイスヘルメットで、近未来的な単眼スコープが特徴的である。

「トロちゃんが乗るはずだった試作機を、譲ってもらったわ」
 
「乗る?」

「そう。これは『搭乗型プロテクター』よ。その名も【ジャケット・ギア】よ」
 
 胸の部分をを開くと、車のようなシートが現れた。
 
「これには、デリオン姫が乗ってもらう。姫が魔力で操縦して、動いてもらうわ」

「ほおー」

 でも、綿毛はどうすれば?

「ご心配には及びません」

 文字通り、綿毛がたんぽぽの綿毛のような小ささに。

「これで、姫のお側に付き従えますから」

 分析役として、姫をサポートするわけか。

「それって、大変じゃないんか?」

「これが私の、本体ですので」

 いつもは認識阻害の魔法で、人間態を取っているだけなんだとか。

 それにしても、よく見るとこのジャケット・ギア、姫をおんぶしているように見えるなあ。

「あっ! だからか!」

 あたしは昨日のことを思い出して、手を叩く。

「ン? 昨日って」

「いや、なんでもない」

 ハッとなって、あたしは口をつぐんだ。

 そういえば、トロちゃんがパニさんにおんぶしてもらっていたのって、内緒だったっけ。

 
「練習試合までに、デリオン姫には細かいテストとか模擬戦闘をこなしてもらうわ」

「おっけーなのだ」

 こうして、デリオン姫に強力な力が加わった。

* * * * * * *


「へえー。巳柳と対戦かー」

「巳柳、知ってるの?」

 夕飯時、かーちゃんが学生当時のことを話す。
 どうも、巳柳の生徒と親しかったらしい。

 そのウチの三女ミツバが、青葉の母親だったとか。 

「愚地の長男ってね、あたしの中学の担任でさぁ」

 ダンジョン部の顧問で、母は愚地先生から色々と教わったという。

「その当時から、ミツバちゃんって子とこっそり交際していたみたい」」

「一回りも下なのに?」

「うん。前の奥さんとの結婚も、カモフラージュだったみたい。愚地とミツバちゃんは、かなり歳が離れていたけどね」

 そこで、青葉が産まれたと。


「なにその相関図。昭和のミステリ小説かよ」

「だよねー。でも、気をつけなよ、モモ。聞いた話だと、あの子こそ、二代目愚地三姉妹だったらしいよ」

 初代愚地三姉妹は、長女と次女には男児しか産まれなかったという。
 それで三女が、実質的な愚地を継ぐだろうと思われていた。

 しかし青葉が産まれたことで、権利を剥奪されたという。
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