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第三章 アウェー戦! 今度はこっちが攻め込むぜ!
第21話 相手チームからの、対戦要求
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あたしの眼の前にいるのは、どう見ても「エドワード大学付属 女子高等学校」の生徒だ。
ドワ女のダンジョン部リーダーであるトロちゃんが、サブリーダーのパニさんにおんぶされている。
しかも、ふたりともお揃いの服装をしていた。いわゆる「地雷系ドワーフ」である。ミニのフリルスカートと、レースバチバチの黒ニーソ。前髪に、色違いのメッシュまでかましている。対戦したときは、黒髪だったのに。
ゴスロリカップルは、町中華に場違いなくらい目立っていた。
普段のドワ女って、こんな感じなんだな。普段が建築業と男臭いから、反動でこうなってしまうのかもしれない。
「ほらあ。モモさんが店番しているかもしれないから、避けようって言ったじゃないっすかー」
「でもでも、ごはんを食べるならここがいいって思ったんだよ! ここのチャーハンを、お前に食べさせたかったの! めちゃうまいから!」
ランチを巡って、パニさんとトロちゃんが言い争いをしている。
「あはは、こんちはー、モモさん。Bセット二つ」
「あいよ。オヤジ、Bふたつ!」
気を取り直して、あたしはパニさんからオーダーを受けた。
とはいえ、ありがたい。
ゴスロリでバッチリ決めているなら、おしゃれなカフェなどをチョイスするはず。なのに、うちに来てくれるなんて。
Bセットのチャーハン・唐揚げ定食を、トロちゃんとパニさんに提供する。
「どうぞー」
二人のテーブルに、ランチセットを置く。
「ここ、これはだな! 筋肉痛でおぶってもらっているだけで! 決して、普段からこうやっておぶって移動しているわけじゃないから! わかった!?」
「アッハイ」
「ぜったい公言するなよ!」
「アッハイ……」
よほど恥ずかしかったのか、トロちゃんもパニさんも秒でBセットを食って帰っていった。
ひとまず、客足が落ち着いてくる。
そのタイミングで、学生風の少女が来店してきた。ランチにしては、遅めかな。ランチセットも、終わった時間帯だ。
こちらも白いワンピースとクリーム色のカーディガンといったお嬢様スタイルで、明らかに町中華の中で異彩を放っていた。
町中華の中では、お嬢様スタイルでの入店が流行っているのか?
「天津チャーハンを。デザートに『とろとろ杏仁豆腐』をお願いしますわ」
「あいよ……お? あんたは」
さっきはるたんとの話にでてきた巳柳の二年、愚地 三澄である。
「おっと、天津チャーハンね。オヤジ!」
あたしはカウンターの向こうにいる父に、オーダーをする。
「ショートパンツ姿も、美しいですわね」
「どうもどうも。そういうことを言ってくれるの、オヤジの連れのオッサンくらいしかいないから新鮮だよ」
愚地のテーブルに、天津チャーハンを置く。
卵が大好きなのか、愚地は上に乗った卵と一緒にチャーハンを口へと運んだ。
「うんめ……コホン。おいしゅうございましてよ」
素が出ていましてよ、お客様。オホホ。
「実は、お願いがあってきました」
杏仁豆腐をきっちり食べ終わって、愚地はドリンクのオレンジジュースまでたしなむ。作動みたいな持ち方で、瓶を傾けている。
「おん?」
「うちのダンジョンにいらしてください。歓迎いたします」
対戦要求が、愚地から来た。
「わたくしからというより、我が学校のリーダーが、あなたにお詫びがしたいと」
「お詫び、とな?」
あたしら、相手になんかされたっけ?
「リーダーは、金盞花に自らが出向かなかったことを、恥じております。自分たちの祖母【愚地三姉妹】を倒した金盞花 幹代の孫と、ちゃんと向き合わなかったと」
『できたてホヤホヤのダンジョン部など、姪に偵察させておけばいい』と、リーダーは思っていたらしい。
「リーダーってのは、あんたの伯母さんなんだな?」
「はい。愚地 友希那。わたくしの父の兄の娘です。愚地一族だと、あちらが本家となりますね」
コイツもたいがい強かったのに、もっとヤバい奴がいるってわけか。
「いかがでしょう? 我が姉の提案、受けていただけますでしょうか?」
「はるたんと相談しないとイカンが、あたしはOKだよ」
「ありがとうございます」
「ところで、ルールは?」
「公式ルールで構いませんわ。ドワ女の方々とは、『風魔』ルールで戦ったとお聞きましたので、そちらでも構いませんけど」
「公式ルールでお願いします」
曲者の愚地が提案する【風雲 魔王城!】ルールなんて、事故しか起きねえだろ。沼地に毒とか、ガチで設置しそう。
「もし我らのダンジョン部にいらっしゃるなら、わたくしを含む愚地三姉妹の血族が、全力でお相手いたしますわ」
愚地、姪、姪の妹で、あたしたちの相手をするそうだ。
「おう。楽しみにしてるぜ。といっても、はるたんとの相談の後だけどな」
「よきお返事を。では」
最後まで優雅に、愚地は帰っていく。
* * * * * *
「……モモ。あんた、マジでバカじゃないの?」
翌日、はるたんからめちゃ怒られた。声のトーンが、二オクターブくらい低い。
「安請け合いして。あんた、巳柳のダンジョン部がなんて言われているか知ってるの?」
「なんて呼ばれてるんだ?」
「【蛇塚】よ。通称、【お化け屋敷】」
そのダンジョンは毎回、妖怪大戦争になるという。
「沼地に毒とか設置してそう?」
「バチバチ、してるわよ」
ドワ女のダンジョン部リーダーであるトロちゃんが、サブリーダーのパニさんにおんぶされている。
しかも、ふたりともお揃いの服装をしていた。いわゆる「地雷系ドワーフ」である。ミニのフリルスカートと、レースバチバチの黒ニーソ。前髪に、色違いのメッシュまでかましている。対戦したときは、黒髪だったのに。
ゴスロリカップルは、町中華に場違いなくらい目立っていた。
普段のドワ女って、こんな感じなんだな。普段が建築業と男臭いから、反動でこうなってしまうのかもしれない。
「ほらあ。モモさんが店番しているかもしれないから、避けようって言ったじゃないっすかー」
「でもでも、ごはんを食べるならここがいいって思ったんだよ! ここのチャーハンを、お前に食べさせたかったの! めちゃうまいから!」
ランチを巡って、パニさんとトロちゃんが言い争いをしている。
「あはは、こんちはー、モモさん。Bセット二つ」
「あいよ。オヤジ、Bふたつ!」
気を取り直して、あたしはパニさんからオーダーを受けた。
とはいえ、ありがたい。
ゴスロリでバッチリ決めているなら、おしゃれなカフェなどをチョイスするはず。なのに、うちに来てくれるなんて。
Bセットのチャーハン・唐揚げ定食を、トロちゃんとパニさんに提供する。
「どうぞー」
二人のテーブルに、ランチセットを置く。
「ここ、これはだな! 筋肉痛でおぶってもらっているだけで! 決して、普段からこうやっておぶって移動しているわけじゃないから! わかった!?」
「アッハイ」
「ぜったい公言するなよ!」
「アッハイ……」
よほど恥ずかしかったのか、トロちゃんもパニさんも秒でBセットを食って帰っていった。
ひとまず、客足が落ち着いてくる。
そのタイミングで、学生風の少女が来店してきた。ランチにしては、遅めかな。ランチセットも、終わった時間帯だ。
こちらも白いワンピースとクリーム色のカーディガンといったお嬢様スタイルで、明らかに町中華の中で異彩を放っていた。
町中華の中では、お嬢様スタイルでの入店が流行っているのか?
「天津チャーハンを。デザートに『とろとろ杏仁豆腐』をお願いしますわ」
「あいよ……お? あんたは」
さっきはるたんとの話にでてきた巳柳の二年、愚地 三澄である。
「おっと、天津チャーハンね。オヤジ!」
あたしはカウンターの向こうにいる父に、オーダーをする。
「ショートパンツ姿も、美しいですわね」
「どうもどうも。そういうことを言ってくれるの、オヤジの連れのオッサンくらいしかいないから新鮮だよ」
愚地のテーブルに、天津チャーハンを置く。
卵が大好きなのか、愚地は上に乗った卵と一緒にチャーハンを口へと運んだ。
「うんめ……コホン。おいしゅうございましてよ」
素が出ていましてよ、お客様。オホホ。
「実は、お願いがあってきました」
杏仁豆腐をきっちり食べ終わって、愚地はドリンクのオレンジジュースまでたしなむ。作動みたいな持ち方で、瓶を傾けている。
「おん?」
「うちのダンジョンにいらしてください。歓迎いたします」
対戦要求が、愚地から来た。
「わたくしからというより、我が学校のリーダーが、あなたにお詫びがしたいと」
「お詫び、とな?」
あたしら、相手になんかされたっけ?
「リーダーは、金盞花に自らが出向かなかったことを、恥じております。自分たちの祖母【愚地三姉妹】を倒した金盞花 幹代の孫と、ちゃんと向き合わなかったと」
『できたてホヤホヤのダンジョン部など、姪に偵察させておけばいい』と、リーダーは思っていたらしい。
「リーダーってのは、あんたの伯母さんなんだな?」
「はい。愚地 友希那。わたくしの父の兄の娘です。愚地一族だと、あちらが本家となりますね」
コイツもたいがい強かったのに、もっとヤバい奴がいるってわけか。
「いかがでしょう? 我が姉の提案、受けていただけますでしょうか?」
「はるたんと相談しないとイカンが、あたしはOKだよ」
「ありがとうございます」
「ところで、ルールは?」
「公式ルールで構いませんわ。ドワ女の方々とは、『風魔』ルールで戦ったとお聞きましたので、そちらでも構いませんけど」
「公式ルールでお願いします」
曲者の愚地が提案する【風雲 魔王城!】ルールなんて、事故しか起きねえだろ。沼地に毒とか、ガチで設置しそう。
「もし我らのダンジョン部にいらっしゃるなら、わたくしを含む愚地三姉妹の血族が、全力でお相手いたしますわ」
愚地、姪、姪の妹で、あたしたちの相手をするそうだ。
「おう。楽しみにしてるぜ。といっても、はるたんとの相談の後だけどな」
「よきお返事を。では」
最後まで優雅に、愚地は帰っていく。
* * * * * *
「……モモ。あんた、マジでバカじゃないの?」
翌日、はるたんからめちゃ怒られた。声のトーンが、二オクターブくらい低い。
「安請け合いして。あんた、巳柳のダンジョン部がなんて言われているか知ってるの?」
「なんて呼ばれてるんだ?」
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