ダンジョンを出禁にされたJK二人組は、母校の旧校舎型ダンジョンを守護するバイトを始めました。

椎名 富比路

文字の大きさ
上 下
16 / 64
第二章 新入部員は戦力外VTuber

第16話 建築マッチョ学校、ドワ女!

しおりを挟む
「モモ、お客さんが来たよ」

「うん。学校の外から見ても、デカいな」

 窓の外から、客の姿が見えた。
 あたしたちは、二階からダンジョンの入口まで降りる。

 はたから見ると、メイドの集団に見えた。
 しかし彼女たちは、全員がれっきとした女子高生だ。
 身体が横に大きすぎて、メイド服のようなフワッとした服でないと入らないのである。
 
 今回対戦を要求してきたのは、【エドワード大学付属 女子高等学校】という学校だ。
 通称を、『ドワ女』という。つまり……。

「あたいはドワ女のリーダーを務める、三年のトローゼ・フィングスといいまーす! ドワーフ魂でダンジョン制覇するんで、よろしくぅ!」

『よろしくぅ!!!!!!』

 リーダー含め、全員がドワーフなのである。

「副長の二年! パニ・キュラータっす! トローゼ先輩は、トロちゃんとお呼びくださると喜ぶんで、よろしくっすぅ!」

『よろしくっすぅ!』

 トロちゃんもパニさんも、あたしのお腹くらいしか身長がない。
 が、ドワーフ女子たちは誰しも四角形を思わせる筋肉質だ。レスラー体型っていうのかな。

 リーダーのトロちゃんは、ピッグテールの腹筋女子ちびっこスタイル。この子だけは、細マッチョだ。胸ポケットに芍薬フィングストローゼを象ったピンのついた万年筆を差している。
 
 サブリーダーのパニさんは、やや大人びたドレッドヘア褐色マッチョで、他の生徒より背が高い。それでも、あたしの胸くらいしかないけど。こちらの胸ポケットには、紫陽花パニキュラータのピン付き万年筆が。 

「全員、マッチョなのだ」

「腹筋女子ってレベルじゃないですね。腕までモリモリですよ」

 さっそく、新入部員のデリオンと綿毛が、ビビり散らかしていた。

「ども。金盞花きんせんか 晴子はるこです」

七星ななほし 洲桃すももです」
 
 あたしたちも、あいさつをする。

「よく、対戦を引き受けてくれたね?」

「ダンジョンっつったら、あたいドワーフっしょ。ましてあたいらは、建築学科だ。これまでにも、多くの学園用のダンジョンに携わってしている。金盞花きんせんかグループにだって、あたしらのOBがいるものさ」

 ダンジョンを作るだけではなく、マスターまで勤める人材も多いとか。

「それは知っている。腕が立つから、よくわかるよ。エドワード大学は、『ダンジョン界における、ハーバード大学』って言われている」

 金盞花晴子はるたんが、ドワーフのリーダー・トロちゃんと話し合った。
 
「なーのーにっ、あんたらが選んだのはウッドエルフだっ!」

 トロちゃんが、デリオン姫に指を指す。

「しかも、金盞花が誇る【ユリ園】を、西洋のお屋敷みたいにしちまって。お人形さんでも、飾ってるのかい? あるいは、ぬいぐるみとかさ」

 トロちゃんが、新しくなったユリ園を罵倒する。

「金盞花 晴子。ユリ園は、シンプルさが売りだったんじゃないのかい?」

「ウッドエルフの素質は、あんたらなら知っているはずだよ」

 そう、彼女たちはウッドエルフの特性を知った上で、あたしたちに対戦を挑んできたのである。
 いくら情報を隠しても、ドワーフの洞察力が相手では隠し通せない。
 しかも、こちらが新生ダンジョンを公開した直後に、対戦を要求してきた。
 ウッドエルフが一枚噛んでいると、すぐに見抜いたのであろう。
 そこまでの相手なのだ。

「知ってるよ。ウッドエルフはダンジョン作成においては、右に出るものはいない。あたいらドワーフだって、認めてる。といっても、ありがたがられているのは、フレーバーじゃないか。見てくれがよくなったところで、なんだってんだ?」

「ウッドエルフに関してそんな程度の知識しかないから、あんたらドワーフには頼らなかったんだよ」

 はるたんも、トロちゃんに言い返す。 

「ウチに相談してくれたら、立派なダンジョンにしてやったのに」

「それも考えたんだけど、新入部員の勧誘も兼ねていたからね。それに我が校は、堅実健全なダンジョン作りは間に合っているんだ。ちょっとぶっ壊れた設定のダンジョンが、気に入っているんだよ」

 はるたんは、ささやかにドワ女を挑発する。
 
「言ってくれるじゃないか。あたいらが、このダンジョンをぶっ壊してやるよ!」

「そちらこそ、ダンジョンの沼がいかに奥深いか、知るといいさ」

 ダンジョンを知り尽くした者同士が、闘志を剥き出しにした。

「はるたんっ。あんた、大丈夫なのか? あんなタンカ切って。相手は一応、優勝候補だぜ?」

「だからだよ。あれくらいノリノリで潰してきてもらわないと、ウチらのダンジョンの凄さが伝わらん。さんざん煽り合ってて、こちらが勝ったらすごくね?」
 
「すごいけどさ。どうすんだよ?」

「今回、ウチらの出番はないから。『風魔』ルールで行くからね」

「マジかよ……」

 風魔ルールとは、通称『風雲 魔王城!』ルールという。

 風雲魔王城とは、大昔にやっていたテレビ番組で、ダンジョンに設置されたアトラクションを制覇したら勝ちというルールである。
 ダンジョン内には、キラーも魔物も存在しない。ひたすらに、トラップだけを切り抜けていく。
 
 つまりだ。
 はるたんのヤツ、デリオン姫ひとりだけで、ドワ女を倒す気なのである……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。 しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。 探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。 だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。 ――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。 Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。 Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。 それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。 失意の内に意識を失った一馬の脳裏に ――チュートリアルが完了しました。 と、いうシステムメッセージが流れる。 それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀
ファンタジー
 東京の南はるか先、聟島に作られた魔法特区。魔法技術高等専門学校2年になった俺は、1年年下の幼馴染の訪問を受ける。それが、学生会幹部3人を交えた騒がしい日々が始まるきっかけだった。  これは幼馴染の姉妹や個性的な友達達とともに過ごす、面倒だが楽しくないわけでもない日々の物語。  5月中は毎日投稿、以降も1週間に2話以上更新する予定です。

処理中です...