上 下
15 / 64
第二章 新入部員は戦力外VTuber

第15話 圧倒的に、ダンジョン部に足りなかったもの

しおりを挟む
 はるたんが、次の台詞を貯めに貯める。

「ウチらに圧倒的に足りなかったもの……それは、女子力!」

「女子力なんて気にするタイプだったっけ、お前!?」

「いやあ、女子力大事よ、モモ。特に女子校のダンジョン部は」

「男子禁制なのに?」
 
「だからだよ、モモ。ウチら、どれだけ女子っぽさないのかよ、と」

 たしかに、言えてるかも。

 はるたんにダンジョンを任せていたら、永遠に殺風景なダンジョンのままだ。女子力のない、木造旧校舎として、ずっとこの地に残り続けるだろう。

「今の時代、機能性だけ追求してもダメなんだって」

「映えを気にしろと?」

「ていうか、映えをカモフラージュにして、凶悪なダンジョンにしたい」

「なるほど!」

 このビジュアルは、むごたらしいトラップを隠すためのアップリケであると。

「『わぁ~。なんてファンシーな見た目なの? キャハハウフフギャアア!』みたいなのを、期待している」

「悪い顔してんなー、お前」

 ではさっそく、ダンジョンを作った張本人と対面致しましょう。

「おお、モモとはるたん」

 部長兼ダンジョンマスターとなったデリオン姫が、ノートPCで何かをチェックしていた。
 
「モモさんにはるたんさん、お茶を入れてました。どうぞ」

 あたしは着席して、「どうも」とホットカフェオレをもらう。
 お茶請けはいつもなら、はるたんがお取り寄せした特製お菓子のはずだ。
 今日はエルフの『綿毛』が手作りした、チーズケーキである。

「たまにでいいので、料理させていただけると」

「構わない。材料費とかはこっちで持つから、請求してね」

「そんな、好きでやっていますから」
 
「交際費として、部費でまかなうから、気にしないで」

 でしたらと。

 ああー、チーズケーキが口の中でとろけるぅ。
 うまい。お店で食べるよりガッツリしているのに、味わいは上品だぁ。

 デリオン姫もたいしたもんだが、綿毛の女子力も相当なものである。

「でさ、デリオン姫はなにをチェックしてんの?」

「『お前らのダンジョン探訪』って配信」

 姫が、ノートPCの画面をこちらに向けた。

 自作ダンジョンの様子をアップしたSNSを、VTuberが解説している。
 
 ダンジョンマスターの中には、自分たちのダンジョンをお披露目している存在も。

 姫はそれらをくまなくチェックして、自分のダンジョンでも活用できないか調べているのだ。
 この勉強熱心な部分も、はるたんは欲していた。

「姫、あんたのVアバターも、自分で描いたんだよね?」

「そういうの好きだったから。あと、画面のレイアウトも全部自分でやった」

 すごいな。デリオンって、どこまで才能があるんだろう。
 あたしなんて、動画にコメントを打つ方法すらロクに知らない。

「綿毛の方も、各ダンジョン部の部員たちの調査を進めているんだよね?」

「はい。それが趣味みたいなものでして」

 綿毛の方も、様々な女子校のダンジョン部のサイトを周り、力量などを調べている。

「あんたのデータは、今後も頼りになる。期待しているから」

「ありがとうございます、はるたんさん。それでですね……」

 さっそく綿毛が、対戦を求める高校を調べていた。

「ああ、巳柳みやなぎをやっつけて、対戦要求の数が減ったと思っていたのに」

「はい。こちらの高校は、それでも対戦したいと」

「わかった。約束を取り付けて」

 そこではるたんが、「おっと」とデリオンに視線を向ける。

「いいよね、姫部長?」

「どんとこいなのだ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

物理系魔法少女は今日も魔物をステッキでぶん殴る〜会社をクビになった俺、初配信をうっかりライブにしてしまい、有名になったんだが?〜

ネリムZ
ファンタジー
 この世界にはいくつものダンジョンが存在する。それは国ごとの資源物資でもあり、災害を引き起こすモノでもあった。  魔物が外に出ないように倒し、素材を持ち帰る職業を探索者と呼ぶ。  探索者にはありきたりなスキル、レベルと言った概念が存在する。  神宮寺星夜は月月火水木金金の勤務をしていた。  働けているなら問題ない、そんな思考になっていたのだが、突然のクビを受けてしまう。  貯金はあるがいずれ尽きる、生きる気力も失われていた星夜は探索者で稼ぐ事に決めた。  受付で名前を登録する時、なぜか自分で入力するはずの名前の欄に既に名前が入力されていた?!  実はその受付穣が⋯⋯。  不思議で懐かしな縁に気づかない星夜はダンジョンへと入り、すぐに異変に気づいた。  声が女の子のようになっていて、手足が細く綺麗であった。  ステータスカードを見て、スキルを確認するとなんと──  魔法少女となれる星夜は配信を初め、慣れない手つきで録画を開始した。  魔物を倒す姿が滑稽で、視聴者にウケて初配信なのにバズってしまう!  だが、本人は録画だと思っているため、それに気づくのは少し先の話である。  これは魔法少女の力を中途半端に手に入れたおっさんがゆったりと殴り、恋したり、嘆いたり、やっぱりゆぅたりする話だ。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...