ダンジョンを出禁にされたJK二人組は、母校の旧校舎型ダンジョンを守護するバイトを始めました。

椎名 富比路

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第二章 新入部員は戦力外VTuber

第13話 戦力外だからこそいい

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「私は、OKです。あこがれのモモさん・はるたんさんコンビと、一緒に部活ができるなら」

 どうも綿毛の方は、あたしたちを『推して』いるらしい。

「ウチらのプレイなんて配信で見ても、特に面白くないんじゃ?」

 ダンジョン探索者の中には、配信を行う人も多くいる。

「ウチらは配信なんて、する余裕ないよね」

「ああ。配信なら公式がやってくれるから、あたしたちは特に何もしないねえ。配信に夢中になって負けたやつとか、見ちゃうとなぁ」

 あたしたちは、見栄えのする配信をするどころか、配信自体をしない。そもそも動画や配信を見ないタイプだからかも。

「そうなんですね。過去を顧みないタイプも、素敵です」

 なんか、高感度が上がったみたいである。

「私はOKなんですが、姫がなんというか」

 とにかく、一人は確保できた。あと一人である。

「うーん。モモ氏。はるたん氏。入部自体は問題ない。条件があるのだ」

 デリオンが、指を一つ立てた。

「というと?」

「我が部長になりたい。オタサーの姫って、一度やってみたかったのだ」

「そういうことか。いいよ」
 
「え?」

 デリオンがサークルの姫なりたいというので、快く承諾した。

「普通、こういうのって、元々いたリーダーともめるのだ。ギスッてしまって、最終回直前までずっと悪化した関係を続けるのだ。いきつくところまでいって、最終回で出し切って、結局解散してしまうんだぞ」

「もめないし、ギスらない」

 そもそも、あたしたち二人は、どっちがリーダーとかではない。お互いパートナーではあるが、『どっちが偉いか』はまったく話し合ったことがなかった。

「『どっちが強いか』だったら、ウチら今でもケンカになるよね」

「だなー。どっちも譲らんもんな」

 で、ガチンコじゃなくてゲームで決着つける。

「とはいえ、我々でいいんですか? 私はダンジョンの知識こそあります。選手のデータも集めています。ですが、戦力としては」

 デリオンも綿毛も腕が細く、脚力もなさそうだ。

「私は、姫のお世話くらいしかできません。家でもそうなので」

 実は綿毛、リアルでもデリオンのメイドをしているらしい。

「メイドが出ちゃいけないってルールは、ない」

 きっぱりと、はるたんが言い張る。

「ほんとに、我が姫でいいのか? ダンジョンも、ずっとマスターぞ? 配信したまま、一歩も動かんぞ? 連れ去られたら、負けぞ?」

「OKOK。それくらいが、ちょうどいいハンデだよね、モモ?」

 はるたんからの問いかけに、あたしも首を縦に振った。

「むしろ、そういうヤツが欲しかったんだよ。賑やかしみたいな」

 あたしたちだけでダンジョンを攻略すると、どうしても殺伐としてしまう。味気ないなと、ずっと思っていたのだ。

 かといって、戦力を増強すると、敵が弱くなる。

「で、アレな城主をあたしたちで守るって図式になったらさ、ちょうどいいかなと」


「でもでも、ほんとにほんとに我らは、ダンジョン界隈ではお荷物なのだ」

 デリオンが、過去を語った。

 どうもデリオン・綿毛コンビは、至る所のダンジョンで戦力外通告を受けていたらしい。

 パーティに入れてもらっても、役立たず。特にすることがない。荷物の見張り程度しか、役目をもらえなかった。

「我らはウッドエルフだから、エルフ族の中でも魔法が強いわけじゃないのだ」

 エルフの花形といえば、魔法に長けているハイエルフだ。ウッドエルフ程度では、弓の腕前が高いか、薬草の知識がなければダンジョンでは必要とされない。

「ウッドエルフの狩人は、どこも間に合っていて、我らは特にやることがなかったのだ」

 なので「取材」という体で、仲間たちに付き添うことを続けていたという。

「冒険者の知識が豊富なのは、そのためです」

「十分じゃん」

 あたしも、はるたんも、二人を加入させるのは問題なし。

「でもでも、我は体力もないし。弓や薬草の知識も、スマホで十分だし。こんなエルフ族は、必要とされない。でも我は魔法でも、その辺の魔法使いに負けちゃう」

 加入をあきらめてほしいかのように、デリオンはまくしたてる。
 
「いいんだって。それで」

 なおも、はるたんはデリオンの勧誘をやめない。
 
「あんたには、やってもらいたいことがあるんだよね」
 
 はるたんが出した提案に、デリオンはうなずく。

「なら、承諾するのだ」

 こうして、部員が四人揃った。

 これで、公式戦にも出られる。
 
 
 翌日、旧校舎ダンジョン【ユリ園】に向かうと、外観も内装もめっちゃファンシーになっていた。
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