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第六章 海底神殿! 幼女は魔族の親玉と勝負する!(そこら中で派手にやったる

第53話 幼女、お隣さんと再戦する 

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 最初に戦った頃と同じように、ウチらは名乗ってから戦う。

 違うのは、ウチもクゥハも最初から全力ということ。

「邪神ビィィィンムッ!」

 ウチは、渾身の【邪神ビーム】を放つ。正式名称・【パーティクル・キャノン】を。
【粒子砲】っていうだけあり、重金属が混ざっている。鉱石の金属部分を溶かして、魔力を混ぜ合わせる。つまり、圧力を持たせた光子熱線なのだ。

「……我に断てぬモノ、なし! 断ッ!」

 それでも、クゥハはウチの最強技をいとも簡単に切り捨てる。
 華麗に斬るのではなく、無骨に断つ。それが彼女のスタイルだ。美人な顔に似合わず、戦闘はワイルド極まりない。
 
「やっぱり高圧熱線では、あんたに敵わん! せやったら、これや!」

 ウチの妖刀が、クゥハの剣を弾く。

 クゥハは剣の軌道を変えて、ウチの妖刀を叩き落とそうとした。

 妖刀を杖代わりにして、ウチはクゥハの剣の上に乗る。

「首をもろたで!」

「それは首を斬ってから言いなさい!」

 クゥハが剣を構えたまま、飛び蹴りをかましてきた。

「うわお!」

 ウチは、クゥハの魔剣から飛び退く。

「アトキン。フィジカルも強化しましたか!」

「多少はな。でないと、あんたのクソ高い体力に勝たれへん!」

 敏捷性、反応速度、あと多少の耐久値に、ウチはステータスを割り振った。

 とにかく、当たらないこと。

 クゥハの攻撃は、ダゴンのそれとはケタ違いだ。当たれば即死。
 ウチの性分としては、真正面からドンとぶつかり合いたい。
 しかし、クゥハの魔力がそれを許さなかった。

「妖刀、丹亀尼タンキニ、ウィップモード!」

 ウチは妖刀を蛇腹状に変化させて、ムチのように振り回す。

 無軌道な剣戟に、クゥハも攻めあぐねている。

 だが、こんな子どもだましなど、いつまでもクゥハには通じない。あっさりと突破される。

「強くなった代わりに緊張感がありませんね! ザコばかり相手にしていたせいで、動きが緩慢になっていませんか?」

「気のせいや!」

 クゥハの袈裟斬りが届く直前、ウチは【分身】で逃走した。

「ほう。分身を会得しましたか。術師なら、防御するか遠方から攻撃してくるかとおもいましたが」

「遠距離攻撃は、あんたには通じん。密着して叩かんと」

 このデカい魔剣がある限り、クゥハにウチの攻撃は当たらない。遠くからペチペチ魔法を撃ったところで、跳ね返されるか攻撃そのものをぶった切られるだけ。

 だったら、リスクを承知で懐に飛び込むしかない。

 幸い、クゥハはヨロイまではバージョンアップしていなかった。こいつ防御より、攻撃を選んだのだ。攻撃のために、防御を犠牲にしたと思っていい。

 そこに、つけ入るスキがある。
 
【半永久器官】のパワーを、フィジカルの強化に回す。

「おお、【マギアーツ】とは。とうとう、あなたがカンフーを!」

 マギアーツとは、魔法と拳法を組み合わせた独特の体術のことだ。

 ウチの徒手空拳を魔剣で受け流しながら、クゥハの声が裏返った。歓喜に震えているように感じるが。

「あんたとの勝負限定や! この純魔殺しが!」

 この際、純魔でクゥハに勝つのをあきらめた。その時点でコイツの勝ちなのだが、勝負自体はウチが勝たせてもらう!

「ですが、付け焼き刃のマギアーツでは!」

「ウチかて、強くなってるんやで!」

 これまで戦ってきたウチだって、みんなの戦闘を見ていなかったわけじゃない。

 袈裟斬りを、白刃取りで受け止めた。

「まさか、バカな!」

 別に不思議なことでもない。クゥハの剣戟を、どれだけ見てきたと思っているのか。剣を振る速度、タイミング、そして威力。
 全部、ウチは頭に叩き込んでいた。

 それを全力で阻止しただけ。

「えいっ」

 しかし、それまでだった。

 完全に脱力したウチは、クゥハの腹につま先でチョンと蹴るしかできない。
 白刃取りで、ウチはすべての力を出し尽くしてしまったのである。

「降参や」
 
「いえ。参りました」

 クゥハが、剣を下ろす。

「なんでや。トドメは刺されへんかったやんけ」

「いえ。あなたに剣を止められてしまった時点で、ワタシは負けました」

 これは実力の問題じゃない。プライドの問題なのだろう。

「いやあ。今回はワタシもいい線をいくと思ったんですけどねえ」

 カブトを脱いで、汗びっしょりの状態でクゥハは清々しい笑顔を見せた。

「さてアトキン、お風呂に入りますよ」
 
 ウチは、クゥハにお姫様抱っこをされたまま、荒野エリアの大浴場まで連れて行かれる。

 
(第六章 完 以後、不定期更新)
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