53 / 65
第六章 海底神殿! 幼女は魔族の親玉と勝負する!(そこら中で派手にやったる
第53話 幼女、お隣さんと再戦する
しおりを挟む
最初に戦った頃と同じように、ウチらは名乗ってから戦う。
違うのは、ウチもクゥハも最初から全力ということ。
「邪神ビィィィンムッ!」
ウチは、渾身の【邪神ビーム】を放つ。正式名称・【パーティクル・キャノン】を。
【粒子砲】っていうだけあり、重金属が混ざっている。鉱石の金属部分を溶かして、魔力を混ぜ合わせる。つまり、圧力を持たせた光子熱線なのだ。
「……我に断てぬモノ、なし! 断ッ!」
それでも、クゥハはウチの最強技をいとも簡単に切り捨てる。
華麗に斬るのではなく、無骨に断つ。それが彼女のスタイルだ。美人な顔に似合わず、戦闘はワイルド極まりない。
「やっぱり高圧熱線では、あんたに敵わん! せやったら、これや!」
ウチの妖刀が、クゥハの剣を弾く。
クゥハは剣の軌道を変えて、ウチの妖刀を叩き落とそうとした。
妖刀を杖代わりにして、ウチはクゥハの剣の上に乗る。
「首をもろたで!」
「それは首を斬ってから言いなさい!」
クゥハが剣を構えたまま、飛び蹴りをかましてきた。
「うわお!」
ウチは、クゥハの魔剣から飛び退く。
「アトキン。フィジカルも強化しましたか!」
「多少はな。でないと、あんたのクソ高い体力に勝たれへん!」
敏捷性、反応速度、あと多少の耐久値に、ウチはステータスを割り振った。
とにかく、当たらないこと。
クゥハの攻撃は、ダゴンのそれとはケタ違いだ。当たれば即死。
ウチの性分としては、真正面からドンとぶつかり合いたい。
しかし、クゥハの魔力がそれを許さなかった。
「妖刀、丹亀尼、ウィップモード!」
ウチは妖刀を蛇腹状に変化させて、ムチのように振り回す。
無軌道な剣戟に、クゥハも攻めあぐねている。
だが、こんな子どもだましなど、いつまでもクゥハには通じない。あっさりと突破される。
「強くなった代わりに緊張感がありませんね! ザコばかり相手にしていたせいで、動きが緩慢になっていませんか?」
「気のせいや!」
クゥハの袈裟斬りが届く直前、ウチは【分身】で逃走した。
「ほう。分身を会得しましたか。術師なら、防御するか遠方から攻撃してくるかとおもいましたが」
「遠距離攻撃は、あんたには通じん。密着して叩かんと」
このデカい魔剣がある限り、クゥハにウチの攻撃は当たらない。遠くからペチペチ魔法を撃ったところで、跳ね返されるか攻撃そのものをぶった切られるだけ。
だったら、リスクを承知で懐に飛び込むしかない。
幸い、クゥハはヨロイまではバージョンアップしていなかった。こいつ防御より、攻撃を選んだのだ。攻撃のために、防御を犠牲にしたと思っていい。
そこに、つけ入るスキがある。
【半永久器官】のパワーを、フィジカルの強化に回す。
「おお、【マギアーツ】とは。とうとう、あなたがカンフーを!」
マギアーツとは、魔法と拳法を組み合わせた独特の体術のことだ。
ウチの徒手空拳を魔剣で受け流しながら、クゥハの声が裏返った。歓喜に震えているように感じるが。
「あんたとの勝負限定や! この純魔殺しが!」
この際、純魔でクゥハに勝つのをあきらめた。その時点でコイツの勝ちなのだが、勝負自体はウチが勝たせてもらう!
「ですが、付け焼き刃のマギアーツでは!」
「ウチかて、強くなってるんやで!」
これまで戦ってきたウチだって、みんなの戦闘を見ていなかったわけじゃない。
袈裟斬りを、白刃取りで受け止めた。
「まさか、バカな!」
別に不思議なことでもない。クゥハの剣戟を、どれだけ見てきたと思っているのか。剣を振る速度、タイミング、そして威力。
全部、ウチは頭に叩き込んでいた。
それを全力で阻止しただけ。
「えいっ」
しかし、それまでだった。
完全に脱力したウチは、クゥハの腹につま先でチョンと蹴るしかできない。
白刃取りで、ウチはすべての力を出し尽くしてしまったのである。
「降参や」
「いえ。参りました」
クゥハが、剣を下ろす。
「なんでや。トドメは刺されへんかったやんけ」
「いえ。あなたに剣を止められてしまった時点で、ワタシは負けました」
これは実力の問題じゃない。プライドの問題なのだろう。
「いやあ。今回はワタシもいい線をいくと思ったんですけどねえ」
カブトを脱いで、汗びっしょりの状態でクゥハは清々しい笑顔を見せた。
「さてアトキン、お風呂に入りますよ」
ウチは、クゥハにお姫様抱っこをされたまま、荒野エリアの大浴場まで連れて行かれる。
(第六章 完 以後、不定期更新)
違うのは、ウチもクゥハも最初から全力ということ。
「邪神ビィィィンムッ!」
ウチは、渾身の【邪神ビーム】を放つ。正式名称・【パーティクル・キャノン】を。
【粒子砲】っていうだけあり、重金属が混ざっている。鉱石の金属部分を溶かして、魔力を混ぜ合わせる。つまり、圧力を持たせた光子熱線なのだ。
「……我に断てぬモノ、なし! 断ッ!」
それでも、クゥハはウチの最強技をいとも簡単に切り捨てる。
華麗に斬るのではなく、無骨に断つ。それが彼女のスタイルだ。美人な顔に似合わず、戦闘はワイルド極まりない。
「やっぱり高圧熱線では、あんたに敵わん! せやったら、これや!」
ウチの妖刀が、クゥハの剣を弾く。
クゥハは剣の軌道を変えて、ウチの妖刀を叩き落とそうとした。
妖刀を杖代わりにして、ウチはクゥハの剣の上に乗る。
「首をもろたで!」
「それは首を斬ってから言いなさい!」
クゥハが剣を構えたまま、飛び蹴りをかましてきた。
「うわお!」
ウチは、クゥハの魔剣から飛び退く。
「アトキン。フィジカルも強化しましたか!」
「多少はな。でないと、あんたのクソ高い体力に勝たれへん!」
敏捷性、反応速度、あと多少の耐久値に、ウチはステータスを割り振った。
とにかく、当たらないこと。
クゥハの攻撃は、ダゴンのそれとはケタ違いだ。当たれば即死。
ウチの性分としては、真正面からドンとぶつかり合いたい。
しかし、クゥハの魔力がそれを許さなかった。
「妖刀、丹亀尼、ウィップモード!」
ウチは妖刀を蛇腹状に変化させて、ムチのように振り回す。
無軌道な剣戟に、クゥハも攻めあぐねている。
だが、こんな子どもだましなど、いつまでもクゥハには通じない。あっさりと突破される。
「強くなった代わりに緊張感がありませんね! ザコばかり相手にしていたせいで、動きが緩慢になっていませんか?」
「気のせいや!」
クゥハの袈裟斬りが届く直前、ウチは【分身】で逃走した。
「ほう。分身を会得しましたか。術師なら、防御するか遠方から攻撃してくるかとおもいましたが」
「遠距離攻撃は、あんたには通じん。密着して叩かんと」
このデカい魔剣がある限り、クゥハにウチの攻撃は当たらない。遠くからペチペチ魔法を撃ったところで、跳ね返されるか攻撃そのものをぶった切られるだけ。
だったら、リスクを承知で懐に飛び込むしかない。
幸い、クゥハはヨロイまではバージョンアップしていなかった。こいつ防御より、攻撃を選んだのだ。攻撃のために、防御を犠牲にしたと思っていい。
そこに、つけ入るスキがある。
【半永久器官】のパワーを、フィジカルの強化に回す。
「おお、【マギアーツ】とは。とうとう、あなたがカンフーを!」
マギアーツとは、魔法と拳法を組み合わせた独特の体術のことだ。
ウチの徒手空拳を魔剣で受け流しながら、クゥハの声が裏返った。歓喜に震えているように感じるが。
「あんたとの勝負限定や! この純魔殺しが!」
この際、純魔でクゥハに勝つのをあきらめた。その時点でコイツの勝ちなのだが、勝負自体はウチが勝たせてもらう!
「ですが、付け焼き刃のマギアーツでは!」
「ウチかて、強くなってるんやで!」
これまで戦ってきたウチだって、みんなの戦闘を見ていなかったわけじゃない。
袈裟斬りを、白刃取りで受け止めた。
「まさか、バカな!」
別に不思議なことでもない。クゥハの剣戟を、どれだけ見てきたと思っているのか。剣を振る速度、タイミング、そして威力。
全部、ウチは頭に叩き込んでいた。
それを全力で阻止しただけ。
「えいっ」
しかし、それまでだった。
完全に脱力したウチは、クゥハの腹につま先でチョンと蹴るしかできない。
白刃取りで、ウチはすべての力を出し尽くしてしまったのである。
「降参や」
「いえ。参りました」
クゥハが、剣を下ろす。
「なんでや。トドメは刺されへんかったやんけ」
「いえ。あなたに剣を止められてしまった時点で、ワタシは負けました」
これは実力の問題じゃない。プライドの問題なのだろう。
「いやあ。今回はワタシもいい線をいくと思ったんですけどねえ」
カブトを脱いで、汗びっしょりの状態でクゥハは清々しい笑顔を見せた。
「さてアトキン、お風呂に入りますよ」
ウチは、クゥハにお姫様抱っこをされたまま、荒野エリアの大浴場まで連れて行かれる。
(第六章 完 以後、不定期更新)
0
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
(完)聖女様は頑張らない
青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。
それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。
私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!!
もう全力でこの国の為になんか働くもんか!
異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる