新大陸を開拓するため、幼女型モンスターに魂を転送した魔女は、後に邪神と崇められる(自力で幼女になりたかっただけやのに!

椎名 富比路

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第五章 幼女、はじめての襲撃ミッション!(邪魔するんやったら、帰って~

第41話 邪神幼女と、王女様

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 ウチは上空から、人型のダゴンを見下ろす。
 
「えらいシャッキリした、スマートな体型になったやん? ダイエットしたん?」
 
 眼の前の人型ダゴンは、ヒトデ? みたいなフォルムである。人間と同じサイズで、ウチよりちょっと背が高い。体の線も、やや細め。胸も控えめだ。見ようによっては、スリングショット水着みたいなデザインである。
 今まで襲ってきたダゴンが怪獣なら、コイツは宇宙人というべきか。

 浮遊能力が、切れそうだ。
 
「おっと」

 触手に埋め込んだ魔石によって、重力を制御する。

 ウチは飛べるといっても、自由に空を飛び回れるわけじゃない。「浮遊できる」に近かった。
 それに、地面にいる相手に空から攻撃ってのも、性に合わない。
 相手の土俵に立った上で、完膚なきまでにブチのめす。これがウチの、ファイトスタイルだ。

 だから……。
 

「一旦、帰ったらどないや?」

 コイツが本気だった場合、あのビームっぽい魔法を連発するはずだ。しかし、コイツはそれをしなかった。

 つまり……。

「帰れや。はよう。パワー切れなんやろ?」

 ジリジリと、人型ダゴンは後ずさる。

「お前ンとこのホームで、戦ったるわ。どうせ海の底に、神殿とかあるんやろうが。そこに攻め込んだるから、待っとけや」

 お互い万全な状態で、それでも勝てないと思わせるのだ。それが、ウチのやり方である。

「……こウかイ、させテやる」

 ヒトデ型ダゴンが、言葉を発した。発音が慣れていないのか、時々声が裏返る。

 ズズズ……と、人型のダゴンが海に沈んでいった。
 他の魔物たちも、引き換えしていく。


 同時に、ウチらはポーレリアの兵隊に囲まれた。

「やめよ! 彼女たちに、攻撃の意思はない!」

 王女らしき女性が、兵隊たちに剣を収めるように指示を出す。
 
「ですがミネルヴァ姫様!」

 最年長の兵隊らしき男性が、王女に意見をする。

「じいや、わたくしに、街を守ってくださった英雄を討てというのですか!? 異形であるというだけの理由で!」
 
「……仰せのままに」

 じいやと呼ばれた近衛兵長らしき男性が、騎士たちに剣を収めさせた。

「申し訳ございません、アティ様。ご無礼をお許しを」

 王女風の女性が、ウチの前でひざまずく。

「ええて。気にしてないよってに。よう、ウチがアティってわかったな。バケモンの姿やのに」

「ええ。世間からは邪神と言えど、あなたはこの国を救ってくださった守り神です」

 そんな大層なものでは、ないのだが。

「わたくしは、ポーレリアの第七王女、ミネルヴァ・ストロボッツィ。あなたには……」

 ミネルヴァと名乗った王女が、メガネとベレー帽をかぶる。
 
「トルネルとお呼びしたほうがよろしいですわね」
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