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第五章 幼女、はじめての襲撃ミッション!(邪魔するんやったら、帰って~
第32話 幼女の領地に、ダゴン襲来!
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「~♪おどれ、どこ中じゃ!? はよ帰ったほうがええんとちゃうか?~♫」
歌を歌いながら、ウチは移動要塞を使って、【荒野エリア】と【海洋エリア】の間へ向かった。
「あ~。おるわ」
飛空艇停留所と鉄道建設予定地に、巨大なピンク色のタコがにじり寄ってきている。一〇メートルはある巨体を、大きな触手で引きずっていた。目は、一つしかない。タコは太い触手で、駅舎を破壊する。
あれこそ、ダゴンだ。
ウチがこの肉体を作る際にベースにした、紫色の個体ではない。相手は、ピンク色である。
ダゴンは、配下に魚人たちを引き連れていた。人魚でも半魚人でなく、魚人である。人間らしさは身体しかなく、頭は完全な魚だ。サメ、カツオ、マンボウなど、種類も豊富である。ダゴンと同じく、魚人にも様々な個体があるのかもしれない。
荒野エリアに住まう村人たちが、武器を持って魚人に応戦する。
魚人には対抗できているが、ダゴンにはまったく刃が立たない。あれでは、押しつぶされるのがオチだ。
「ムリせんときや。ケガしたら、回収したるさかいに」
「は! 邪神アトキン様! あなたの土地は、我々が全力でお守りいたします!」
アカン、聞いていない。彼らは神に殉じて、死ぬ気だ。
これは、ウチが出張らないといけないか。
「お手伝いしますよ、アトキン」
クゥハが前に出る。その剣は、ベヤムの手によって強靭に鍛え直されていた。
クゥハは「別にいい」といったのだが、ベヤムが志願したのである。「自分の腕を磨くため」魔剣に触れたい、と。
ただでさえ禍々しく鋭かった剣が、ベヤムの手でより凶悪な姿に変わっている。
「それとも、ワタシは見学した方がいいですかね?」
「せやな。村人を守ってや」
やはりボスは、ウチが戦うべきだ。相手の力量を把握せねば。
「承知しました。骨は拾ってあげますから、思う存分自分をぶつけてください」
「おおきに」
「ですが、忘れないでください。あなたはワタシを、十分追い越していますからね」
「そうなんか?」
「戦闘力は、まだワタシが上です。けど総合的な能力は、あなたが勝っていますよ」
いつの間にか、クゥハを上回っていたのか。
「みなさん、ワタシの後ろに下がってくださいね。ほらそこ、勝手に動かないっ。下がってくれないと、あなたがたの神サマが全力をだせませんよ~」
クゥハが、うまいこと村人を誘導する。先導の仕方が、堂に入っていた。メフティと接したことで、多少コミュ力が上がったか。
村人たちが、一斉にクゥハの後ろに下がる。
「お前たち、ボスの領土に土足で踏み込んできた、愚か者デス! たとえダークエルフと言えど、容赦しないデス!」
魚人が、しゃべった。泡を食べながら話しているかのような、ノイズが入っている。
「お前たちこそ、身の程をわきまえなさい」
シュコン……と、クゥハが剣を凪ぐ。
涼風のような、力のない一撃。
それなのに、一瞬で魚人たちが全滅した。一匹残らず、灰になっていく。
クゥハの剣には、血糊やサビの一つも着いていない。
めちゃ強くなってるな。昔はもっと、力任せな攻撃一辺倒だったのに。ウチとの戦い以降、ファイトスタイルが変わったようだ。
さて、相手のダゴンだが。
「ゴッツいな」
ウチが戦った個体より、数倍は大きい。とはいえ、コイツはボスではないだろう。おそらくボスは、こんなものではない。遥かに巨大なモンスターだろう。
つまり、様子見。ウチの進撃を気に食わん海洋エリアのボスが、刺客を送り込んだ程度だ。
とはいえ、ただの村からすると脅威である。
コイツを倒すことは、つまり、過去の自分を超えるってこと。
「瞬殺……できんわな」
そもそも、瞬殺なんて考えてない。じっくり戦ってやる。
ダゴンが、こちらに触手で殴りかかった。間近で見ると、すごい迫力である。
「らうあ!」
メカ幼女形態で、触手を蹴り飛ばす。
「もういっちょ!」
追撃で、さらにダゴンの目玉に飛びかかった。
補助腕のハサミで、突きを食らわせる。
「荒野エリアで見つけたレア武器を、そのままハサミに転用した特注品や! かますで!」
だが、魔法障壁によって阻まれた。
「ほったら、これはどうや!」
ウチは、補助腕を回転させる。
さしものダゴンも、触手でガードをした。
防いだ触手を、回転ハサミのドリルで切り刻む。
「おっしゃ! いけ……くっ!?」
ダゴンは目からの怪光線で、ウチを突き放す。
ウチも魔法障壁で、光線を受け流した。
後ろにふっとばされたが、どうにか無事である。
さすがベヤムの技術を使った、メカ幼女だ。衝撃を受け止めるのではなく、流す構造になっている。長期戦に対抗できるしようか。
とはいえ、攻撃面には効果がなかった。
「あーっ。あっかんよなあ。昔はこれで、倒せたんやけどなあ」
補助腕は戦闘面で、もうちょっと改良が必要か。
ウチは、補助腕を外して、軽量化する。
「まだあるんじゃ、とっておきが」
荒野エリアの開発で編み出した、攻撃方法を試してやる。
歌を歌いながら、ウチは移動要塞を使って、【荒野エリア】と【海洋エリア】の間へ向かった。
「あ~。おるわ」
飛空艇停留所と鉄道建設予定地に、巨大なピンク色のタコがにじり寄ってきている。一〇メートルはある巨体を、大きな触手で引きずっていた。目は、一つしかない。タコは太い触手で、駅舎を破壊する。
あれこそ、ダゴンだ。
ウチがこの肉体を作る際にベースにした、紫色の個体ではない。相手は、ピンク色である。
ダゴンは、配下に魚人たちを引き連れていた。人魚でも半魚人でなく、魚人である。人間らしさは身体しかなく、頭は完全な魚だ。サメ、カツオ、マンボウなど、種類も豊富である。ダゴンと同じく、魚人にも様々な個体があるのかもしれない。
荒野エリアに住まう村人たちが、武器を持って魚人に応戦する。
魚人には対抗できているが、ダゴンにはまったく刃が立たない。あれでは、押しつぶされるのがオチだ。
「ムリせんときや。ケガしたら、回収したるさかいに」
「は! 邪神アトキン様! あなたの土地は、我々が全力でお守りいたします!」
アカン、聞いていない。彼らは神に殉じて、死ぬ気だ。
これは、ウチが出張らないといけないか。
「お手伝いしますよ、アトキン」
クゥハが前に出る。その剣は、ベヤムの手によって強靭に鍛え直されていた。
クゥハは「別にいい」といったのだが、ベヤムが志願したのである。「自分の腕を磨くため」魔剣に触れたい、と。
ただでさえ禍々しく鋭かった剣が、ベヤムの手でより凶悪な姿に変わっている。
「それとも、ワタシは見学した方がいいですかね?」
「せやな。村人を守ってや」
やはりボスは、ウチが戦うべきだ。相手の力量を把握せねば。
「承知しました。骨は拾ってあげますから、思う存分自分をぶつけてください」
「おおきに」
「ですが、忘れないでください。あなたはワタシを、十分追い越していますからね」
「そうなんか?」
「戦闘力は、まだワタシが上です。けど総合的な能力は、あなたが勝っていますよ」
いつの間にか、クゥハを上回っていたのか。
「みなさん、ワタシの後ろに下がってくださいね。ほらそこ、勝手に動かないっ。下がってくれないと、あなたがたの神サマが全力をだせませんよ~」
クゥハが、うまいこと村人を誘導する。先導の仕方が、堂に入っていた。メフティと接したことで、多少コミュ力が上がったか。
村人たちが、一斉にクゥハの後ろに下がる。
「お前たち、ボスの領土に土足で踏み込んできた、愚か者デス! たとえダークエルフと言えど、容赦しないデス!」
魚人が、しゃべった。泡を食べながら話しているかのような、ノイズが入っている。
「お前たちこそ、身の程をわきまえなさい」
シュコン……と、クゥハが剣を凪ぐ。
涼風のような、力のない一撃。
それなのに、一瞬で魚人たちが全滅した。一匹残らず、灰になっていく。
クゥハの剣には、血糊やサビの一つも着いていない。
めちゃ強くなってるな。昔はもっと、力任せな攻撃一辺倒だったのに。ウチとの戦い以降、ファイトスタイルが変わったようだ。
さて、相手のダゴンだが。
「ゴッツいな」
ウチが戦った個体より、数倍は大きい。とはいえ、コイツはボスではないだろう。おそらくボスは、こんなものではない。遥かに巨大なモンスターだろう。
つまり、様子見。ウチの進撃を気に食わん海洋エリアのボスが、刺客を送り込んだ程度だ。
とはいえ、ただの村からすると脅威である。
コイツを倒すことは、つまり、過去の自分を超えるってこと。
「瞬殺……できんわな」
そもそも、瞬殺なんて考えてない。じっくり戦ってやる。
ダゴンが、こちらに触手で殴りかかった。間近で見ると、すごい迫力である。
「らうあ!」
メカ幼女形態で、触手を蹴り飛ばす。
「もういっちょ!」
追撃で、さらにダゴンの目玉に飛びかかった。
補助腕のハサミで、突きを食らわせる。
「荒野エリアで見つけたレア武器を、そのままハサミに転用した特注品や! かますで!」
だが、魔法障壁によって阻まれた。
「ほったら、これはどうや!」
ウチは、補助腕を回転させる。
さしものダゴンも、触手でガードをした。
防いだ触手を、回転ハサミのドリルで切り刻む。
「おっしゃ! いけ……くっ!?」
ダゴンは目からの怪光線で、ウチを突き放す。
ウチも魔法障壁で、光線を受け流した。
後ろにふっとばされたが、どうにか無事である。
さすがベヤムの技術を使った、メカ幼女だ。衝撃を受け止めるのではなく、流す構造になっている。長期戦に対抗できるしようか。
とはいえ、攻撃面には効果がなかった。
「あーっ。あっかんよなあ。昔はこれで、倒せたんやけどなあ」
補助腕は戦闘面で、もうちょっと改良が必要か。
ウチは、補助腕を外して、軽量化する。
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