上 下
27 / 65
第四章 幼女、ドワーフと荒野を目指す(ちびっこ同士やな!

第27話 幼女と、古代文明

しおりを挟む
 ウチは、遺跡の中に入った。

 地下の遺跡は、壁や天井、床に至るまで鉄が使われている。

「すげえ。鉄やん」

 基礎まで、鉄骨ではないか。腐食はしているが、作りはしっかりしている。

 やはり古代文明的なものは、存在していたようだ。
 見たこともない文字が、壁一面にビッシリと書かれている。

「アトキン、読めますか?」

「全然アカン。アンタはダークエルフやろ、クゥハ。アンタの方が詳しいんとちゃうん?」

「文字は読めますが、歴史はからっきしで」

 そうだった。彼女はエルフである以前に、魔族だ。外の世界に、たいして興味がないんだっけ。食べ物にならダイブしてでも飛びつくが、歴史や文化に関してはあまり食指が伸びないご様子である。

「そもそも、これは文字なんか?」

 字体がグチャグチャすぎて、文字かどうかすらも判別できない。古代の絵文字のようだ。意味はまったく、わからない。
 イケニエをどうにかしたような感じなのは、なんとなーくわかるのだが。
 
「カニエ、あんたやったらどうや?」

 外の世界に長く滞在しているカニエなら、なにかわかるかもしれない。

『ちょっと待ってください。えっと……』

 フェアリードローンが、すぐそばにあるレンガに座って、動きを止めた。操作しているカニエが、席を離れたのか。

『ありました。これは【古代ドワーフ】の文字ですね』

 マジか!? ドワーフが!?

「ドワーフが、ここに住んでたんか?」

『いえ。過去のダークドワーフです。今のドワーフが使う文章とは、似ても似つかないです』
 
 たしかに。魔族と交わってエルフがダークエルフという新たな生態系を得たように、ドワーフにも同じことがあったのかも。

『ダークドワーフがこの地に生息していたのは、たしかのようです。なんらかのトラブルで、絶滅しちゃったんではないでしょうか?』

 なぜドワーフが、この地に……そうか。

「エルフの中には魔界に種を残すために、暗黒面に堕ちた個体もおるよな? クゥハの父親みたいに」

「ですね。ワタシの父親は、ダークエルフに種族変化しました」

 ベルゼビュートに永遠の誓いを立てて、闇の力を得たという。今や彼は、ダークエルフの始祖となっているらしい。

「ドワーフにも、そういうヤツがおったんやろうな。それも、テネブライに入るために」

 魔族は、テネブライに入っても影響がない。むしろ魔族であるほど、テネブライに適合できる。

 となれば、テネブライに滞在するには暗黒面に堕ちるのが手っ取り早い。
 そう考えたドワーフが、いたのでは?

『待って。とーちゃんが話したいって』

 今度は、メフティのドワーフが棒立ちになった。
 
「どうしたんや、ベヤム?」
 
『さっきの話を聞いて、思い出した。ノルムスの歴史の中に、ダークドワーフとの戦いの記録があるんだよ』

 それによると、ダークドワーフはどこからともなく現れて、ノルムスを襲撃しに来たという。当時のダークドワーフのボスは、時のノルムス王の弟だったらしい。兄が実験を握ったことに嫉妬した弟は、ノルムスを魔族の力で支配しようと企んでいた。

『だがノルムス王が返り討ちにして、今でも平和な日々が続いている』

「ほんなら、ダークドワーフは大昔に、絶滅したっちゅうんやな?」

『おそらくな』
  
 となると、ここはかつていたドワーフの遺跡で、間違いないだろう。

 イケニエの儀式も、ダークドワーフになるための……。

「敵や! なんかおる!」

 ウチの合図で、全員が臨戦態勢になった。

 現れたのは、ヨロイやカブトを身につけた、機械の塊である。
 
「これは、ゴーレム!?」

 アイアンゴーレムが、ウチらを取り囲む。

 高度な機械文明で作った、作業用のマシンか。それを、戦闘用にアレンジしたようなものだろう。

「【サンドストーム】! ん?」

 床や壁が鉄板造りでは、砂のアリ地獄が作動しない。

 おまけに、こちらの魔力も通さない構造になっている。

「めんどくさい!」

 触手を巻き付けて、炎属性魔法でドロドロに溶かしてやった。

 ゴーレムが、熱暴走を起こして爆発する。

「みんな、避難しいや!」

 ウチは、魔法障壁を作り出した。

 しかし、壁や床は崩れない。
 
 爆発などで崩壊の危険はないが、この壁面は魔法で変形もさせられない。

 まとめて倒せないなら、各個撃破と行きますか。

「一人一体が、ノルマや。ええな?」

「おまかせを」

 クゥハが、一体を斬り捨てる。

 倒したかと思われたが、骨だけになってもまだ襲ってきた。

「しつこい人は、嫌われますよ」

 クゥハはみぞおちへのキックで、壁へ押しつぶす。おまけに、魔力も流し込む。
 今度こそ、アイアンゴーレムは機能を停止したようだ。

『こっちも、やっとおわった!』

 連続パンチの応酬で、メフティはゴーレムをやっつける。幼女猫パンチか。ウチも浴びてみたい。

「アトキン、デレデレしている場合じゃないです! 次が来ますよ」

「なんやねん、次から次と!」

 これでは、キリがない。

「この壁画の内容を解読せんと、ゴーレム無限湧きとか言わんやろうな!」

『とーちゃんが解読しているから、持ちこたえて!』

 メフティの言う通り、ドワーフのベヤムなら、この壁に書かれた文字を読めるかも。

『いけたぞ。【仮初の魂よ、主の道を開けよ】!」

 メフティゴーレムから、ベヤムの声がした。

 ゴーレムが、一斉に停止する。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...