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第二章 幼女はダンジョンを攻略する(売り物の材料も調達するで!

第13話 幼女、お宝探しとリベンジ

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 このダンジョンには宝箱があちこちにあると、クゥハから教わった。

 クゥハに教わったボス部屋は、ザコが大量に湧くトラップに過ぎない。
 ボス部屋の辺りには、宝箱が点在している。
 と、いうことは。
 ボス部屋攻略に必要なアイテムが、宝箱に眠っている可能性が高い。

「アトキンの考えが正しいなら、宝箱を開けまくったほうがよさそうですね」

「せやねん。クゥハ。モンスターがドロップするかもって思ったけど、せやったらもっと強いモンスターを配置するよなーと」

 なのでこれから、宝探しと行こうではないか。

 さっそく、宝箱を発見した。えらい雑なところに、置いてあるんだな。もっと玄室というか、鍵付きのフロアの中にあるもんだと思っていたが。

「うん、ハズレ」

 箱を開けて、ウチはため息をつく。

 踏破済みのスペースも、隅々まで調べてみる。結果は、芳しくない。

 だが、興味深いこともわかった。
 
「ここの宝箱って、一旦出たら中身が復活する仕組みやねんな?」

「中身のグレードは、落ちますけどね」

 たしかに。

「よっしゃ。このペースでアイテムを掘るで」

 気を取り直して、またアイテムを掘ろう。

「お? これはええんとちゃうか?」

 ブレスレットを、手に入れた。アイテムを探知できる効果が、ついているそうだ。

「これを手首にかけて、っと」

 防御効果を持つネックレスとデザインが違いすぎるが、まあいい。今は、実用性重視だ。

「アトキン、宝箱が出てくると言われた途端に、やる気を出し始めましたね?」
 
「ウチは、現金やからな」

 ダンジョンも、隅々まで確認しないと落ち着かない性格なのである。

 攻略済みの浅いフロアも周り、見落としがないか確認をした。

「ん?」
 
 腕輪が突然、ピコンピコンと反応する。この腕輪には、財宝探索機能を搭載している。さっそく、効果を発揮したではないか。

 洞窟の岩壁に近づけると、点滅がさらに激しくなる。

  どこかにスイッチでも、あるのだろうか。

「ビンゴや」
 
 岩壁を撫でてみると、不自然なくぼみを発見する。
 
「おっ。隠し扉や」

 くぼみに指を引っ掛けて、横へスライドさせてみた。

 壁がズズウ……と、移動を始める。

 新しいフロアが出現した。真っ暗な通路が、どこまでも続いている。

 行き止まりには、宝物庫があった。宝箱が、山ほど置いてある。
 
「おお、これはええな」

 箱を開けると、アイテムがザクザクと出てきた。ありがたく、いただいていく。とはいえ金貨があるとしても、テネブライでは使い道がない。とにかく、ボスに通じるアイテムがなければ。

「あった! これちゃうか?」

 銀色のカギを手に入れた。

「ボス部屋への本当の扉が開く……って書いてある!」
 
 やっぱり、ウチの読みは正しかったらしい。


 別の通路を発見し、奥へ進む。

 また、ボスフロアの扉を発見する。ハズレフロアと、同じ構造だ。しかし、この扉には鍵を差し込む穴がある。

 銀色のキーを差し込んだ。

 キーがひとりでに、吸い込まれていく。

 扉がギギギ……と、不気味な音を立てて開いた。
 
「邪魔するで」

『邪魔するなら帰れ』
 
「さよか……ってなんでやねん!」

 久々に、ノリツッコミをしてしまったではないか。

 デカいクモの巣の上に、アラクネらしき巨体が座っている。腕が何本もあり、その太さは木の幹くらいある。これこれ。上半身が人間で、下半身がクモってのが、そもそもアラクネだ。

「って、顔はガスマスクのままなんかいっ」

 またノリツッコミしてしまった。

 どうにも、このボスはウチのネタ意欲をくすぐってくる。 
 
「お前が、アラクネやな?」

『左様だ。ここに来たということは、我が子たちはやられたと思っていいだろう』

「ようわかっとるやんけ」

『我がフロアに入るには、一〇〇体以上の娘を倒さねば資格を得られぬ』

 ハズレフロアも、回る必要があったってわけか。

「とにかく、覚悟してや。シバくさかい」

 アイテムの「布」を効率的に手に入れるには、コイツを倒す必要がある。

「あんたに恨みはないが、やられてもらうで」
 
『よかろう。酔狂な魔物はキライではない。かかってくるがよい』

 では、お言葉に甘えさせてもらう。

 アラクネの前足と、ウチのレイピアが交差した。

 いける。アラクネの攻撃にも負けていない。

『なんと。木っ端のくせに、生意気な』

「木っ端かどうか、自分の身体で確認してみんかいっ」

 ウチはさらに追撃をする。

『我が手をかけずとも、お主はもう我が術中にハマっておる』

「なんやて? くっ!?」

 足の動きが鈍い。アラクネの巣を、踏んでしまったか。

 普通こういう敵は、「相手のテリトリーに入らず、遠距離でチクチク痛めつける」ってのがセオリーだ。
 
 ウチはそれを嫌った。デカい敵を相手に遠距離攻撃だと、時間がかかりすぎると思ったからである。
 その判断が、アダになったらしい。
 
「しゃらくさいわい!」

 火炎魔法で、巣を焼き尽くす。だが、すぐに復活してしまった。また、足を取られてしまう。

 足が動かないまま、アラクネの攻撃を受け止めるしかない。触手まで発動させて、アラクネの攻撃を受け流し続ける。
 
 とうとう、下半身まるまるが、巣に埋まってしまった。

『そのまま、我の糧となるがいい。安心しろ。我が娘として、我のために働く喜びを与えてやろう』

「……? ほんなら、ハズレフロアにおったんは?」

『無謀にも我に挑んだ、魔族たちなどだ。ただ殺すのは惜しいのでな。眷属にしてやることにした』

 ウチも、ハズレフロアの眷属みたいになるわけか。我が家で使っている、スケルトンとかのミニオンと同じ扱いだ。
 
 それは、ごめんこうむる。
 ウチは、使われるのは好かん。
 言われたことをやるのが苦手だから、依頼達成で生計を立てる冒険者にもならなかった。
 どうしてわざわざ自分から、人に操られる道を選ばなければならないのか。

「ミニオンになるんは、そっちや!」

 ウチは、大量の金貨を腰のアイテムボックスからぶちまけた。触手で金貨を受け止めて、受け止めて受け止めてー。まだまだ受け止め続ける。

 とうとう金貨の重みで、糸がちぎれる。

「思った通りや!」

 バカでかいアラクネが巣の上でも平気で立っていられるのは、複数の足で巣のあちこちに支点を散らしているからだ。
 だが、同じくらいの重みが一点に集中してしまったら?
 
『な!?』

 お前は、好かん。
 愛嬌がないから、ペットにもしてやらない。
 せめてウチの配下として、生まれ変われ。

「必殺! 銭投げ!」

 ウチは触手を駆使して、金貨をばらまき続ける。

『バカなやつだ。そんな小さい金貨で、我を貫こうなどと!』

 クモの糸を尻から放出して、アラクネは壁に金貨を叩きつけた。

「ほっよっはっ」

 明後日の方向にまで、ウチは金貨を撃ち続ける。
 
『なにを考えて?』

「こういうことや!」

 レイピアを突き出して、ウチは魔法を唱えた。「遠距離から熱線」を放つ。
 狙うは、アラクネの眉間だ。

『ふん。苦し紛れの攻撃など、我には通用せぬ』

 アラクネが、熱線を前足で軽く跳ね返した。

 だが、熱線は「壁に張り付いた金貨」に反射する。

「おかわりや!」

 ウチは金貨の方にも、魔法の熱線を放つ。
 
 反射した熱光線が、あちこちに散らばった。

『なにい!』

 ほんのわずかな小さい光線でも、無数に反射して一点に集まれば。

『おおおおおおお!?』

「クモの巣やのうて、ハチの巣にしたったわ」

 文字通り穴だらけになったアラクネが、地面に落下する。
 
「お見事でした、アトキン。無事ですか?」

「まあまあや。せやけど、お宝はダメになってもうたかも」

 ウチは、溶けた金貨をつまんで持ち上げた。

「大丈夫ですよ。黄金は、それだけでも価値がありますから。それに」

 アラクネの身体が、灰になっていく。代わりに、巨大な宝箱が出現した。

「あなたのいう[クリア報酬]というヤツが、出てきたかもしれませんね」
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