新大陸を開拓するため、幼女型モンスターに魂を転送した魔女は、後に邪神と崇められる(自力で幼女になりたかっただけやのに!

椎名 富比路

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第一章 魔女は二度死に、二度転生する。二度目の転生は、魔物幼女(幼女←ここ重要やで!)

第4話 幼女、怒りの絨毯爆撃

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 ウチは、テネブライの森になっていた木の実を貪る。
 魔力を回復させてくれるこの実がなかったら、危なかったかも。
 これは、当分の必須アイテムだ。

 特に……。

「あーあ」

 オオムカデに、アジトを破壊された今は。

 大木がムカデのアゴによって、見事に切断されていた。
 食料は、ダメになった。寝床も、消滅している。
 おまけに培養槽も、ガレキに埋まってしまっている。もう二度と再生できない。

「酒を飲みたくなるときって、こんなときなんやろうな」

 実はウチは、下戸である。酒の美味しさが、よくわからない。

 このアトキン・ネドログを【葡萄酒の魔女ソーマタージ・オブ・ヴィティス】の二つ名で呼び出したのは、ゴズリング侯爵である。ウチの弟子である、カニエのお父さんだ。
 ウチの髪の色から、ワインを連想したという。
 しかしウチがアルコールを受け付けない身体だと侯爵が知ったのは、二つ名をつけた後だった。

 この肉体を得ても、おそらく酒は飲めないだろう。嗜好品がいらないのは、節約になっていいのだろうけど。
 
 さらに、重大なことが。
 
「クツ作るの、忘れとった」

 なんか足が痛いと思っていたら、裸足のままだった。
 我、女子ぞ。ゲーマーとはいえど、女を捨てすぎだろ。危うく、自分をアバターか何かと勘違いするところだった。
 もう、命を粗末にできないのだ。気をつけないと。

「すんません。今の人生が気に入らんから、もっぺん死んでやり直しまっさ」とか、さすがの女神もプッチンプリンになる。
 
 まあ、クツはどうにでもなるだろう。

 その辺の木を削って、木靴を作って解決。
 作りながら、思った。どうせなら、パンプスにしようではないか、と。
 前世では履きづらかった、おしゃれな感じに仕上げる。

「おお、ええ感じやん?」

 ファッション誌に載っているようなビジュアルからは、程遠い。しかし、女子としては比較的まともなのではなかろうかと。戦闘の妨げにならないように、こんな見た目ながらちゃんと攻撃性も防御面も高めてある。

「うっひょ~」
 
 パンプスを鳴らしながら、スキップをした。どうせ、誰も見ていない。ルンルン気分で、楽しもう。

 そこでふと、我に返る。

「さて、エンジョイタイム終了。本格的にヤバいぞ」

 食い物は全滅、寝る場所もない。
 
「一からアジトを、作り直しや」

 別に悔しさはない。むしろ、清々していた。これで本格的に、生き方のやり直しができる。その気持ちに、心が踊った。

 ウチのことだ。どうせアジトが残っていたままなら、中でヌクヌクとアイテム製造などをして過ごし、惰眠を貪っていたに違いない。きっとそうだ。
 派手に家がぺしゃんこになったことで、もう帰る場所もなくなったくらいで、ちょうどいい。ここに骨を埋めようという気持ちが、より一層強くなった。
 とことん、付き合ってやろうじゃないか。

 ひとまず、どうする?

「あの岩山、ええな」

 真っ二つに避けた岩山が、眼の前に見える。

「あの岩山を、家にしたろうやないの」
 
 目標は決まった。

 見た感じ、ここから岩山の距離はいうほど離れていない。一時間もかからず、たどり着けるだろう。

「まずは、アレやな」

 アジトをこんな目に遭わせた魔物どもを、一掃せねば。
 
 ウチは残った装備品で、爆弾を作り上げた。

 魔法石を圧縮して、燃えやすい木の素材を使って、さらに固める、と。
 バスケットボールくらいの大きさがある爆弾を、数百個作り上げる。畑の整地もせんとなにをしているのかと思われるだろうが、まずは道を作るのだ。

 前の魔女人生で手に入れた魔法石は、大量にある。どうせこんなもの、テネブライの魔物共には通用しないんだ。ならば、盛大に消費してやろうではないか。エリクサー症候群という名のもったいない精神が働きすぎて、山ほど持て余していたが。
 今こそ、この魔法石を惜しげもなくぶっ放すべき。

「おらあああ!」

 整地ついでに、黒い森を焼き払う。
 どのみちこんな森、存在していても開拓の邪魔なのだ。

 自然と共存する精神は大事だが、こんな人類を脅かす領地は破壊するべきだろう。

 オオムカデが、面白いように吹っ飛んでいった。それも一匹や二匹ではない。
 なにを求めていたのか、魔物たちはバンバン焼け落ちていく。

「さよか。この木の実が欲しかったんかもしれんなあ」
 
 爆発の度に、魔力を回復できる木の実を回収した。触手で丁寧に、拾い集める。

「ほしかったら、かかってこんかい! ムカデどもが!」

 ウチの挑発が聞こえたのか、はたまた昆虫の感覚なのか、ムカデが大量に襲いかかってきた。

「それでええんや! それでこそエンドコンテンツ!」

 向かってくるムカデを、ウチは魔法石爆弾でお迎えする。

 こいつらの強さは、おそらくラストダンジョンの中ボスくらいだ。いっぺん、魔王の住んでる城に殴り込みに行ったとき、四天王とかいうやつと戦ったっけ。その中で一番弱いやつと、このムカデがちょうど同じくらいの強さだ。群れても、こんなもんか。武器さえ整っていたら、案外やれるものだな。

「こんなもんなんか? もっと来いや!」

 ウチの「怒りの絨毯爆撃じゅうたんばくげき」は止まらない。

 あらかたムカデを吹き飛ばし、整地が完了した。

 岩山の側に、到着する。ふう。長かったような、短かったような。

 よく見ると、デカい。

 この岩山を住居に改造したら、かっこいい部屋ができること間違いなし。

 その前に、食料の確保を優先した。

「まずは、整地やな」

 ウチは、木の枝からツルハシとクワを作り出す。
 柵作りは、魔法でパパッと終わらせた。カカシ代わりの、警報用トーテムも置いておく。
 
 木の実から採取した種を、地面に植えていく。魔女の家でもやっていた、薬草も育てる。野菜も育つかどうか、確認しよう。
 
「おっ。ウサちゃん」

 大型犬くらい大きなウサギと、牛くらいデカいイノシシが、こちらに向かってきた。

 ウチの顔面めがけて、ウサギさんが回し蹴りを繰り出す。

「ふん!」

 パンプスを鳴らし、ウチはジャンプした。
 
 ウサギのキックが、岩にめり込んだ。おお、あんなのをまともに食らったら、骨折どころじゃない。

 イノシシに至っては、空を飛ぶ勢いで跳躍しやがった。

「ええやんええやん。ウチを食物連鎖に加えたろうってか。あいにくウチは、連鎖の頂点なんで!」

 ウチは、イノシシの眉間を雷撃で撃ち抜く。装甲を持たないイノシシなら、効くと思ったのだ。

 しかし、イノシシはその場で方向転換した。空の上なのに。

「空気圧を蹴って、移動できるんかいな!?」

 大気をキックして、イノシシは飛び跳ねながらウチにタックルしようとする。

「ええやん。せやけど、遅いんや」

 ギリギリのところで、ウチはイノシシの突進を回避した。敵の横っ腹めがけて、雷撃を撃ち出す。正面がダメなら、側面だ。

「おし、ドンピシャ」

 イヤな方向へ「く」の字になり、イノシシが息絶える。

 後は、ウサギちゃんや。あっちもこっちにぶっ飛んできた。

「よう飛ぶなあ、ここの魔物は!」
  
 ウサギが、キックを放つ。

「ええで。これでも喰らいや!」

 ウチは爆弾を放り投げて、地面へ急降下した。

 上空で、大爆発が起きる。

 これだけの爆発だ。ウサギも無事では……無事でした!

「爆風を踏みつけて、推進力にしおった!」
 
 これは、よけられないか?

「カウンターが戦士職の専売特許やと、思ってへんか?」

 ウチは、地味な土魔法を唱えた。

 勢いに負けて、ウサギは突撃を余儀なくされる。あわれウサちゃんは、全身の骨が砕けてしまう。

「ふう。アンタらのお命、ありがたくいただくで」

 これで、昼飯をゲット。
 

 ウチの身体に、妙なことが起きる。

『レベル上がりました』

 お? レベルアップとな。
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