新大陸を開拓するため、幼女型モンスターに魂を転送した魔女は、後に邪神と崇められる(自力で幼女になりたかっただけやのに!

椎名 富比路

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第一章 魔女は二度死に、二度転生する。二度目の転生は、魔物幼女(幼女←ここ重要やで!)

第3話 魔物幼女、第一魔物発見

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 警察が怖くて、ポリコレが怖くて幼女になんて転生できるか!
 ウチがいるのは、なんでもありの無法地帯! ここで欲望を満たさずして、なんとするか!

 この【葡萄酒の魔女ソーマタージ・オブ・ヴィティス】アトキン・ネドログに、不可能はない!
 
「だから、異世界で叶えさせてもらう! 自分で処理して、自家発電……ちゃうわ自己完結するので堪忍やで!」
 
 淡いパープルのスク水に、身を包む。

「おお、バッチリやんけ!」

 自分の皮膚にも、若干のウロコが付いている。いいアクセントじゃないか。これなら、体のラインが出る服装が合うだろう。

 ウチは基本的に、フリフリ系の服は苦手だ。身体のラインが、隠れてしまうから。似合ってるなら、幼女じゃなくてもええやんとなる。

 かといって、ジャージもなあ。争いが絶えない環境なら、ジャージが最強なんだろうけど。せっかく、幼女に生まれ変わったのだ。機能性よりかわいさ、セクシーさが欲しい。
 
 幼女といえば、ポッコリお腹。小さいおしり。まだ成長しきれていない、骨格。ほんで、膨らみかけのオパイ! おっぱいやなくてオパイ!
 
 これやで。

 幼かったカニエにも、スク水をどれだけ着せたことか。一一歳くらいで急に胸が膨らみだして、すぐに着られなくなったけど。あれはよく似合っていたなぁ。最高だった。
 
「あかんあかん、ウチの癖を語ってるだけで、一日が終わってまう。自己完結してしまうやんけ」

 鏡を見て、あらためてボディチェックをする。よし。OK。ちゃんとスク水もフィットしている。特に見てよ。このポッコリお腹を。

 なんか、腹が減ってきた。

 非常食用の、パンや乾燥肉を出す。

「うん、うまい。味覚OK! 腹も、どうってことない」

 食欲は、普通の人間と変わらない、と。

「他は、武器か」
 
 ウチはあらかじめ、武器になりそうな道具を作っていた。どうせなら、怪物の姿で使っても、違和感がないような。

「これこれ」

 ウチが取り出したのは、巻き貝型の盾だ。この巻き貝が、相手の魔法攻撃を吸収する。また、魔力貯蔵庫にもなっていて、この中に内蔵された魔力を、先っぽの角みたいな突起から撃ち出す。
 
「おっしゃ、試し撃ちや。外に出るで!」

 武器を持って、外出した。

 瘴気まみれの土地に、いざ降り立つ。

 最初にしたのは、呼吸だった。

 まずは、本当に瘴気を克服できているかどうか、確認する。

 深呼吸して、肺に空気を溜め込む。

「おお。ちゃんと息ができる。【テネブライ】で、ウチは生きられるで!」

 生身の人間のときは、どうにもならなかった。今なら、十分動ける。

「武器の調節を、と」

 その辺にある大木に、雷撃を撃った。

 スパン! とキレイに、太い幹が切断される。

「おお。威力はバッチリか?」

 続いて、岩場に向かって雷撃を撃ち込む。

 硬そうな岩山が、角砂糖のように粉々に。

「いける。申し分ないな。ん?」

 さっき切り落とした大木から、樹の実が落ちてきた。

 見た目はそれなり。形状は、プラムに近い。瘴気にさらされて、どす黒くなっているわけでもなかった。香りはまあまあ。食べられるか?

 シャクッと、かじってみた。
 うん。悪くない。これは、オヤツになりそう。甘味がほしくなったら、これで凌ぐか。

「ん? 魔力が回復したっぽいぞ」

 さっき撃ち出した魔力分だけ、回復したようだ。

「ここの食材には、こういう効果があるみたいやな」

 食料の残りは、三ヶ月分。それまでに、ここに作物が育つか確かめんと。

 自分の力を、試さねば。
 この土地で、人間が食せる作物が育つのか。
 そもそも、この身体が他に何を摂取できるのか、試す必要もある。

 虫とか魔物とかも、この身体なら食べられるかもしれない。だが、それは最後の手段だ。味覚が人間のままな以上、舌が魔物を受け付けない可能性だってある。

 もっと奥へ、行くとするか。この付近の安全を確保せねば。

 想像以上に、木々の葉っぱが黒い。大木自体も、このままで動き出しそうな躍動感だ。なんか脈打ってるし。

【テネブライ】……ラテン語で【闇】という意味を持つ森だ。
 なんでラテン語なんて使っているのかは、わからない。女神が地球の言語に翻訳して、ウチにわかりやすく伝達させているのだろう。この森のもっともらしい名前が、【テネブライ】だったのかも。 

 かつて、最強の軍事国家が、三万もの兵隊を引き連れてこの地に訪れた。

 結果は、三分で敵前逃亡。どの魔物にも出会えず、瘴気を吸っただけで兵隊が死んでいった。これはムリと思って、半数の兵力を残して逃げ帰ったのである。

 瘴気さえ克服できれば、こっちのものだ。
 
「黒い森の中へ、いざゆかん!」

 足を踏み入れた途端、第一魔物を発見する。大木より大きいムカデの化け物だ。
 
「~♪おどれ、どこ中じゃ!?where did you come from はよ帰ったほうがええんとちゃうか?Isn't it better to go home early~♫」


 大昔にやっていたロボットアニメの歌詞を、自分なりにアレンジして歌ってみる。ウチが作った武器も、そのロボットが手に装着している武器をイメージしたものだ。

 お返事はなし。よっしゃ。キル確定。

 事前に一応、女神に確認を取っている。この世界の魔物は、どんだけやっつけてもいいという。地形も、ドンドンぶっ壊していい。環境破壊が許容される、異常な世界。それが、テネブライなのだ。

「さっそく、ウチの武器の的になってもらうで!」

 ウチは、青紫色の雷撃を放つ。

 ムカデの装甲は貫けなかったが、動きを止めることはできた。とはいえ、致命傷ではない。

「弱点を知るためにも、ちょっと動いてもらうか」

 こちらの身体能力を知るためにも、リスクを取ることにした。

 オオムカデが、鎌のような鋭いアゴを鳴らす。やる気だ。それでいい。こっちを殺しに来ている。それくらいでないと、意味がない。

 コイツがどれくらいの強さなのか、コイツがこの大陸の基準なのか。
 ウチが融合した魔物のほうが、強い可能性だってある。
 
「やったろうやんけ!」

 ムカデが、こちらにヘディングしてきた。猛烈なスピードで、アゴを閉じる。

 ウチはそのアゴを、触手を巻き付けて阻む。

 眉間に、雷撃を撃ち込んでみた。たいてい、この手の魔物は顔面が弱点だ。口の中とか。

 しかし、びくともしない。さすが、不死身に近いとされるムカデの大型バージョンだ。

「力比べや!」

 コチラを切断する勢いで、アゴのパワーが増した。

 だが、ウチも触手に魔力を溜め込んで、ムカデのアゴを突き放す。

 ムカデのアゴに、ヒビが入った。

「今や!」

 ウチは銃の腹で、ムカデのアゴを叩き折る。
   
 鎌状のアゴが片方だけになっても、ムカデは攻撃をやめない。土をえぐる勢いで、身体を反転させてはアゴでこちらに斬りかかる。

 木を盾にしつつ、ウチは回避を試みた。

 ムカデは大木さえ切り落とし、ウチを的確に狙う。

「ええぞ! それでこそ、殺しがいがある!」

 ウチは、これをやりにきた。

 チートスキルを駆使して、苦戦せずに戦うのもいいだろう。
 戦わずして勝つとか、そういった手段も悪くない。

 だが、ウチがやりたいのは、全力でのタイマン。

 戦いってのは、そうそう一筋縄ではいかない。
 相手だって、こちらを全力で潰しにかかってくる。人生をかけて。

 敵の人生すら感じ取らせてくれるような、ヒリついた死闘こそ、ウチの求めている戦いだ。

 ムカデが、トドメを刺しにかかる。ひときわ猛烈な速度で、コチラを突きにかかった。

「撃ってあかんのやったら、斬るか」

 武器に、魔力を集中させた。刃状に魔力を固定させて、ムカデの顔面を貫く。

「おおお! 落ち着け! もう勝負はついとる! おとなしく絶命せんかい!」

 ウチの言葉でようやく自分の立場を理解したのか、急に魔物が身体をのけぞらせた。そのまま、ドシンと身体を横たえる。

「ふううううう!」

 討伐、完了。第一魔物との戦いは、ウチの勝利で終わった。
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