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第六章 さらば壁役令嬢! 真のエンディングへ!

第52話 大逆転

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 魔王ゴーマの正体は、ゲミュートのインテリジェンス・アイテムだった。

「マージョリー、貴様には死んでもらう!」

 ゲミュートと、マージョリーたんとが、剣を打ち合う。

「盾にやどりし地球人、貴様だけは許さん。なんの許可もなく、勝手にゲーム内に侵入するなど!」

『こっちには理由があるんだよ、クソ脚本家! 【魔導剣マギ・ブレード】!』

 光の剣を放ち、私はゲミュートに叩き込む。

 相手も魔王そのものを刃にして、私と斬りあった。

『よくもこんなクソシナリオを!』

「貴様も、バッドエンドを嫌うか!」

『私は、バッドエンドが嫌いなんじゃない。あんたのシナリオがゴミなんだ!』

 別に私は、胸糞悪い結末も、メリーバッドエンドも嫌いではない。シナリオ上しっかりしていれば、ほろ苦い結末も受け入れる。

 しかし、この男の描くシナリオ、テメエはダメだ。

 明らかに恣意的で、誰も幸せにならない。読者も視聴者も置いていき、自分の欲求だけを満たす。

 それをクソと呼ばずして、なにがクソか。

「死にゆく定めのモノを殺して、何が悪い!? マージョリー・ジンデルさえいなければ、イーデンは孤立して居場所がなくなるというのに!」

『どうしてそこまで、イーデンちゃんに固執するの!? あなたは中の人にフラれただけでしょ!? イーデンちゃんの人格は関係ない!』

「ダテさんのいうとおりですわ。我が妹に手をかけようとする輩は、死すべきです!」

 マージョリーたんの剣戟が、ゲミュートの攻撃をすり抜けてダメージを与える。

「ぬううう! あの女は、死ななければならない! 我を愛さない女は、等しく死ね!」

『人一倍愛情に飢えているくせに、一方的な支配しかできない』

「支配こそ、愛だ! 愛することは、すべてを意のままに操ること! 割れに支配されることは、光栄なのだ!」

 この脚本家は、想像以上にヤバいやつだった。

……こんなヤツだから、みんなこの脚本家から離れたのだろう。

 スタッフも、イーデンちゃんの中の人も。おそらく、マージョリーたんの中の人だって。

 おまけに、自身が持っていた良心にさえ見放された。

 今の彼は、歪んだ自意識の塊だ。
 私たちの声だって、きっと届かないのだろう。

「支配されるのを拒否するなら、この世界ごと破壊してくれる! 【増殖】!」

 ゲミュートが、魔王を天に掲げる。

 魔王の身体が膨れ上がり、天井を突き破った。魔王と思しき黒い粘液が、外へと漏れ出す。

「ハハハ! 我の分身が、お前の仲間たちに襲いかかるぞ! お前は、手出しできない!」

「……それは、どうですかしら?」

 勝ち誇るゲミュートに対して、マージョリーたんは不敵に笑う。

「フン、負け惜しみを……なに!?」

 ゲミュートが浮遊して、外の様子を伺った。
 マージョリーたんも、浮遊して外へ。
 その瞬間、半数以上の魔王がイーデンちゃんの【アルカナ・フラッシュ】によって消滅していく。

「ば、ばかな。いくら【神格化】しているからといって、あそこまで連発など!?」

「存じ上げないのかしら? 神格化の本当の恐ろしさを」

 私がメキラに対して言ったセリフを、マージョリーたんが復唱した。
 イーデンちゃんを、カリスが攻撃する。

 マキビシを食らって、イーデンちゃんは瀕死の重傷に。だがそれも、神格化にて瞬時に回復した。

 神格化で回復したイーデンちゃんが、二発目の【アルカナ・フラッシュ】を放つ。また、魔王たちが蒸発した。

「おのれええ!」

 またも、ゲミュートが魔王を増殖する。
 今度は、アマネ姫がイーデンちゃんに突撃した。

 大ダメージを負って、イーデンちゃんは全身ボロボロになっている。しかし、またしても神格化の光によって再生する。三度アルカナ・フラッシュで魔王の群れを壊滅させた。

 イーデンちゃんは、義理の姉であるケフェスを魔王に殺されている。魔王に対して、怒りを覚えていた。アルカナ・フラッシュの攻撃力も、最終戦闘前につけた【不倶戴天】によって、クリティカル率とダメージが増加している。

「忌々しい! 我のシナリオがこうもメチャクチャに!」

『お前の書く滅びの脚本なんて、誰も望んでない!』

 私は、マージョリーたんの足に各パーツをかぶせていく。その姿は、鳥のくちばしに似ていた。

『マージョリーたん!』

「ええ、ダテさん。くらいなさい、【フェニックス】!」

 ゲミュートに対して、マージョリーたんが足刀蹴りの体勢で飛びかかる。
 私は炎の翼をマージョリーたんに背負わせて、さらに加速度を増した。
 クソシナリオを焼き尽くし、すべてを書き換える!

「ぬごおおおおおおおお!」

 マージョリーたんが、ゲミュートの心臓に私を叩き込む。 

「なぜだ! なぜ我が負ける!?」

『キャラクターの性質を、理解していなかったからだよ! キャラクターだって、生きているんだ。お前の操り人形じゃない!』

 一緒に冒険をして、わかった。
 キャラクターは、単なる駒ではない。
 血が通っている。考えもあった。笑い、怒り、悲しみ、泣く。
 自分の人生を、生きているんだ。

「この世界に、あなたの存在は不要です! 物語を狂わせる存在は、滅しなさい!」

「おのれええええ!」

 マージョリーたんが蹴りに力を込めて、ゲミュートを完全に消滅させた。

 
 
 そして、私にも、ヒビが入る。
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