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第四章 クーデター勃発! リシュパン城防衛戦

第28話 出発の前に、王子と逢瀬

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 案の定、ヴィル王女が抗議してきた。

「あたし【ガンナー】よ!? 中衛の要なのよ!?」

『王女が中衛なのが、本来おかしいんですよ』

 ヴィル王女は、後衛で強化魔法を私たちに唱える役に回ってもらいたい。
 狙撃が効果を持つ場面は、撤退するボスが居るときくらいだ。
 とはいえ、イーデンちゃんがあそこまで強くなったら、指示出しが主な役割となる。

『王女、本来ならあなたは悪堕ちして、魔王軍の手に落ちている状態でした』

 ここまで生き残ることは、ゲームの開発者も想定していなかったのだろう。レベルが上がるにつれて、習得するスキルが支援メインになっていく。

『実際、技能に関しても、バフを撒く役割になっていますよね?』

 ヴィル王女に、スキル表を見せてもらう。
 やはり【鼓舞:クリティカル率上昇】や【応援:バッドステータス回復】など、支援系が大半をしめていた。

「ダテにそこまで言われたら、仕方ないわね。後ろでおとなしくしているわ」

『ありがとうございます。その代わり、【統率】を常設しておきますね』

 技能所有者が存在しているだけで、攻撃力と命中率がアップする技能だ。

『王女には、後方支援しつつ、状況に応じてアタックを仕掛けてもらいます』

「はーい」

 カリスは、いつもどおりの運用だ。レベルの低い相手を敵を行動不能にする、【威圧】を覚えた。これでさらにザコキラーおよび、切り込み隊長として活躍するだろう。

「ありがとうございます、ダテ殿……」

『ん? どうしたの、カリス?』

 妙に、カリスの元気がない。

「ああ、いえ。過ぎたことを考えておりましてな」

 カリスが、苦笑いを浮かべる。

「話してごらんなさい。我々に隠しごとなど」

「いえ。大事な時期ですので」 

 マージョリーたんの言葉にも、カリスは引き下がった。

「ただ、おいとまをいただけると」

「どうぞ。今は休暇中ですから。お話がしたくなったら、いつでもいいなさい」

「もったいなきお言葉です」

 ひとまず、カリスの件は保留に。

 イーデンちゃんにも、マージョリーたんと同じ【倹約家】の技能を習得してもらう。魔法を六〇%の魔力で撃てる技能だ。当分イーデンちゃんは、防御も攻撃も受け持つから忙しくなる。

「わたしは、魔法剣士のような役割なんですね?」

『あなたはゆくゆくは、【聖女】になる存在だもんね』

【勇者】の女性版を、この世界では【聖女】という。

「聖女! わたしがですか!?」

『まあ、その兆しが出てくるのは、後々だけど』 

 聖女と言っても、ゲーム内のイーデンちゃんは『伝説のRPGの二作目に出てくる、足を引っ張る王子』ポジションなんだよね。大器晩成型なのも似ているし。

 ちなみに【勇者】は、いうまでもない。ゴットフリートだ。

 だから私は、彼に壁役をつけなくてもいいと提案している。シナリオ展開上、死なないってわかっているからだ。

 ゴットフリート王子には、ゴドウィン、ビリー、シノさんをつけている。護衛役ではなく、ゴットフリートにつられてやってきた敵を倒してもらう。王子は自分で自分を守れるので、防御は問題ないはずだ。

 マージョリーたんには、【魔力回復:小】を習得してもらう。魔力が少しずつ回復していく技能だ。ボスキラーとして、さらに長く戦闘ができるようにした。

 イーデンちゃんは【回復の杖】で、自分を回復できる。チャクラ技能はいらない。ゴットフリートにも、同じ道具と技能を持たせた。いきなり回復でレベルアップする姿を見たら、ゴドウィンたちもびっくりするだろうな。 

「あ、あの、ダテさん」

 顔を赤らめて、マージョリーたんが私に聞いてくる。

『ゴットフリート王子とデートでしょ? 行ってきなよ。私の許可なんて必要ないから』

「ですが、感覚を共有なさっているのでしょう?」

「あ……」

 だよねえ。私はドキドキしたりしないけど。キスされたりしたら、好きでもない相手の舌が入ってきちゃうわけだよね。うーん。

『今日だけ、私を外す?』

 私は今、整備中だし。ここは王都だから、問題ないと思うが。

「いいえ。そうではなく、ついてきてくださらないか、ご相談に伺ったのです」

 不安なんだな。しばらく会っていなかったし、仕方ないかも。

『わかったよ。マージョリーたん、一緒に行こう』

「ありがとうございます」

 やや町娘風の服を着て、待ち合わせしていた噴水広場に。
 王子も清潔感のある格好で、マージョリーたんをエスコートした。
 城下町を、ゴットフリートと回る。

「マージョリー殿下、あなたが危機だと聞いて、一刻も早くお会いしたかった」

 王子が、つないでいる手に力を入れる。

「お元気そうでよかった……なんて違うな。他人事のようですね。申し訳ない。適切な言葉が出てこず」

「いいえ。お気遣い感謝いたしますわ、王子」

 二人は、カフェで一休みをした。
 恋をすると、マージョリーたんってこうなるんだなぁ。
 視覚や味覚を共有していても、私とマージョリーたんは恋愛感情までは一致しない。

 平和だったら、こういう感じのデートが当たり前になるんだよね。
 だが私は効率を考えて、二人を別々に行動させている。
 
……これでいいのか?
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