カスハラ客を追い出してクビになったオレを、クラスのお嬢様が雇ってくれた。雇用条件は、彼女のオタ活を充実させること

椎名 富比路

文字の大きさ
上 下
31 / 46
第五章 幼なじみの絵師が、同僚に!?

第31話 お嬢様と、Vデビュー!?

しおりを挟む
 どういうわけか、黄塚コウヅカ 萌々果モモカさんとVTuberとしてデビューすることになった。といっても、ただのサンプルキャラクターとしてだが。

「ノブローくん、ボイスチェンジャーをお持ちしました。これを使えば、誰にもバレません」

 萌々果さんが、手持ちのボイスチェンジャーを用意した。

「よく持っていたな?」

「こうなることは、事前にわかっていましたので。それでも、予算は大したことはありません。かなり安価で手に入れました」
 
 オレのキャラクターはネコのマスコットなので、オレの地声よりかは声を変えたほうがいいだろうとなった。

「えらい小さいんだな。三千円だと、こんな感じか」

 ボイチェのサイズは、スマホくらいしかない。
 こんなんで本当に、声が変わるのか?

「本格的なやつだと、二、三万はするよ。とりあえず低予算でもできるかどうか、ためしてみよう」

 莉子リコいわく、無料アプリでも試せるが、ひとまずこの価格帯でできるか、チェックすることに。

「やってみましょう」

 ボイチェとマイクを繋げて、萌々果さんがオレにマイクを向けた。

「ノブローくん。なにか、声を発してください」

「あー、あー」

「ちょっと抽象的すぎて、よくわかりません」

「つっても、なにを話せば……」

「ほわああああ!」

 オレが言葉を発した途端、女性陣がうなる。

 たしかに、オレの声はちょっと宇宙人ぽくなっている。
 
「面白いな」

 倉田クラタも、興味ありげだ。

 その後も、色々としゃべってみて、声の具合を調節する。

「これが一番、このキャラクターぽいですね。では、これで固定設定しておきます」

「よろしく頼む」

 ボイチェの設定を終えた。調節した設定を、萌々果さんがメモる。

「倉田もやってみるか? ヤマダセーラっぽく、しゃべってみてくれよ」

 オレは倉田に、ボイチェを差し出す。

「わかった。あー、あー。どうもごきげんよう。ヤマダセーラⅡ世でございますわよ。本日も、エレガントに参りましょう」

 ネコと同じ声の設定で、倉田も話してみる。
 
「ほわあああああ!」

 宇宙人ヤマダセーラが、地球に攻めてきた。そんな感じにさせてくれる。

「いいですね。思っていた以上に面白いです!」

「莉子もやってみせてくれ。莉子は、イケメン韓流スターをやってみろよ」

 今度は莉子に、ボイチェが回った。
 
「えーいいのー?」といいつつ、莉子はちょっとノリノリ気味である。

「仕方ないなあ。あーあー。ドウモ。ニホンノミナサン。マイリマシター」

 莉子は、設定をいじくった。韓流スターっぽく、やや棒読みでしゃべってみる。

「ほわああああああ!」

 これまた、萌々果さんには大ウケだ。手を叩いて、喜んでいる。

 思っていた以上に、このマシンは使えそうだ。耐久性も申し分ない。
 
「じゃあ、本番だ。萌々果さんが話してみてくれ」

「そうなんですが、このコの名前、どうしましょう?」

 新設のレンタルVTuber事務所、【ねころんJAM】のイメージキャラとなる。じきに別のキャラクターが、公式で作られるんだろう。が、今のところはタキシードネコと令和風アイドルが看板キャラクターだ。

「そもそも、こいつは何者なんだよ? アイドル活動中なのか、アイドルになりきっている一般人か人外なのか」

「元・生身の地下アイドルです。地下活動中にネットの世界に閉じ込められたんですが、居心地がよかったのでそのまま住み着いている設定です。ややヘラっていますね」

 案外、設定が濃いな。

「でんぱでんのーちゃん・カッコカリと、一応名前はあるんですけどね」

「長いな。略そう」

「では、【でのちゃん】で」

 うわっ。ギリギリ攻めてくるな、萌々果さん。
 
「こっちのネコの方は、どうすっか?」

「ネコさんは、案内役です。彼が、電脳世界にでのちゃんを連れてきたって、設定ですね」

「どうして、連れてきたんだ?」

「でのちゃんは、売れないアイドルだったんですが、ネットでの人気はカリスマ的でした。それで、いっそのことネットの世界で生活してもらおうと考えたのです」

 かなり尖った設定だったんだな。

「アイドルの方は【でのちゃん】で、ネコの方は……莉子が決めてくれ」

「えー。あたし? うーんとね。じゃあネコちゃんが、ねころんJAMにでのちゃんを招待したってことにしよう」

 莉子の提案に、「それいいですね!」と、萌々果さんも手を叩く。

「名前だけど、なにがいいかなー。ジャム男とか」

「児童向けアニメの、あんぱん作るおじさんとかぶるな」

「だよねえ。じゃあ、ジャムろん?」

「それでいいか。じゃあ、【ジャムろん】って名乗るから」

 オレが意見を聞くと、萌々果さんからも、OKサインが出た。

「では、台本を作っておきますので、お楽しみください」

 こうして、後日収録という形に。

 それまでには、莉子が注文を受けたアバターも完成するだろう。

「ところでさ、ノブローと萌々果ちゃんって、付き合ってんの?」

「付き合ってないっ。それ、倉田にも言われた」

「でもさ、カップルにしか見えないよ」

「どうだろうな。オレなんて、視界にも入っていないんじゃないかって思うぜ」

「いやいや。自然すぎて、ノブローが気にしてないだけだって。あれは絶対、気があるよ」

 うーん。そう言われても。

 とにかく、あまり萌々果さんの感情には、期待しないようにしよう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貞操逆転世界なのに思ってたのとちがう?

イコ
恋愛
貞操逆転世界に憧れる主人公が転生を果たしたが、自分の理想と現実の違いに思っていたのと違うと感じる話。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

処理中です...